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[アジアン・メタルマーケット]

上海編 

<1>謝企華・上海宝鋼集団社長に聞く

日刊産業新聞 2002/7/3

 上海宝鋼集団公司は、宝山鋼鉄、上海製鉄所、上海梅山冶金が98年11月に合併・発足した中国最大の鉄鋼グループ。01年は鉄鋼生産1900万トン超、売上高710億元、税引前利益42億元だった。宝鋼集団は、世界最新鋭の設備を有する宝山鋼鉄を核に、普通鋼鋼板およびステンレス鋼板の能力増強・品質向上を目的とした400億元(6000億円)規模の設備投資計画を進める。宝鋼集団の謝企華社長に話を聞いた。

 ――本年の業績見通しから。

 「米国の保護貿易の影響で輸出が減少している。ただし国内の鉄鋼需要はおう盛で、宝鋼集団の本年の粗鋼生産は前年の約1900万トンほぼ横ばいとなる見通し。前年下半期に下落、20年来の最低価格に落ち込んだ国内価格が、ここに来て国際価格と同様、上昇に転じたものの、前年上半期の水準には届いていない。このため上半期の売上高、利益ともに前年同期比で大幅にダウンする。とくに利益水準は60%減のペースにある。このような状況が続くと、02年の通期業績は前年実績を大幅に下回る」

 ――中国政府は10次5カ年計画における鉄鋼業の発展戦略を打ち出している。宝鋼集団の方針を。

 「10・5計画の理念に沿って、宝山鋼鉄の生産および品質の対応能力を引き上げる一方で、上海製鉄所、上海梅山などグループ内の古い設備・技術を近代化し、製品品質の向上を具体化していく。とくに自動車用鋼板、ラインパイプ、電磁鋼板、造船用厚板、ステンレスの品質向上を重要テーマに掲げている。また新しい材料およびプロセスの開発にも注力している」

 ――中核ミルである宝山鋼鉄の設備投資計画について。

 「国内需要の拡大に対応するため、5メートル幅の厚板ミル、1880ミリ幅の第4冷延ミル、溶融亜鉛めっき鋼板(CGL)2ラインを建設。また建築ブームに対応してカラー鋼板ラインを2ライン増設する。また宝山鋼鉄は製鋼・熱延能力に余裕を残しており、溶銑不足を補うため第4高炉を建設する。最終決定していないが03年内に着工、36カ月の工期を見込んでいる。炉容積は4000立方メートルになるだろう」

▼宝山鋼鉄1400万トン体制へ

 ――投資計画の進捗状況は。

 「酸洗・冷延ミルは三菱グループが落札。厚板ミルは近日中に発注する(SMSデマーグが受注)。CGL2本は近く入札に入る。カラーについては第2ラインがすでに立ち上げ、第3ラインの最終計画を策定中。これら一連の総投資額は約200億元。新設備はすべて06年までに立ち上がる。これで宝山鋼鉄として粗鋼年産1400万トン態勢を確立する。一方、上海製鉄所、上海梅山冶金の古い設備を廃棄する。宝鋼集団としては10・5計画の最終年度の生産規模を2000万トンと想定している」

 ――ステンレスについては。

 「(上海製鉄所)第1鋼廠のプロジェクトとして進めている。普通鋼を生産する中型高炉の余力を活用。転炉、連続鋳造、熱間圧延機を新設し、04年上半期の立ち上げを計画している。これで年間70万トンのステンレス熱延鋼板の生産能力を確保する。冷延鋼板については、寧波宝新不銹鋼と上海クルップで先行して年間17万―18万トンを生産している。両社は2―3期工事で能力を段階的に引き上げていく。また上海第5鋼廠でステンレス棒鋼設備を建設中。年産20万トン規模で、04年の立ち上げを見込んでいる。一連のステンレス関連の投資額を200億元と予定している」

 ――WTO加盟後、輸入関税引き下げ、IL制度撤廃を経て、鋼材輸入が増加している。

 「米国に端を発した鉄鋼保護貿易政策が他国にも波及。この結果、世界の鋼材市場が混乱、中国向け鋼材輸出が増加し、大きな影響を受けている。中国は年間1000万トンの鋼材を輸入しており、早急に秩序を回復して、健全な競争環境を再構築する必要がある。そこで中国政府は、日本や韓国と同様に対米措置(WTO提訴)を実行に移し、また国内鉄鋼業界を一時的に保護するための対策(暫定セーフガード)も実施した」

 ――最後に日本の鉄鋼業界との関係について。

 「本年は中日国交回復30周年。宝山鋼鉄は、この20数年間で、日本の数多くの企業、新日鉄や三井物産、三菱商事などと友好な関係を構築してきた。今後も、これまでの良好な関係を保っていきたいと願っている」