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構造改革に挑む/<13> 各論編(3)

新日鉄・住金・神鋼連携の行方(3)

日刊産業新聞 2002/4/17

▼重い投資負担

 住友金属、神戸製鋼両社とも、単独売上高は95年度をピークにジリ貧傾向。ここ4年間は連続して前年比減り続けている。利益も厳しく、経常利益は97年度を境に、芳しくない状況が続いている。両社ともこの間、設備投資費用がかさんだ。

 住金は、和歌山のシームレス鋼管リプレース(約900億円)に続く、製鋼工場のリフレッシュ(約400億円)を実施、減収のなかでの負担は台所を窮屈なものにしている。先週10日に火入れした小倉の新No2高炉は予算140億円のところ、約90億円に圧縮。さらに、本年5月には鹿島No1高炉の改修工事を予算500億円弱をかけて開始する予定。費用を切り詰めるものの、一方では合理化経費が1600億円ほどかかっている。

 神戸製鋼は、いずれも米国企業との鉄鋼、アルミ、半導体プロジェクトなどに1件当たり数百億円の投資をしたほか、95年の阪神大震災による被害(約1000億円)からの立ち直り費用が厳しかった。21世紀をにらんだIPPプロジェクトもかなりの費用だ(2期合計約2000億円)。

 ▼重複投資回避に期待

 新日鉄との連携は、こうした投資負担、とりわけ世界規模で余剰設備を整理しようという時代にあって、少なくとも鉄本業では、重複投資を避けることができるのではないか―という期待が内外にある。

 日新製鋼と新日鉄との連携が、もう一つの焦点となっている。一部週刊誌に薄板系列企業の提携に関連した異様な記事が掲載されたが、まず明確なことは、新日鉄の日新に対する出資比率は9・5%にすぎないこと。いわゆる持分法の適用にも当たらず、日新は新日鉄の「子会社」ではなく独立企業だ。また、連携等に関する「覚書」なども、交わされていない。

 日新製鋼は、9年ほど前「高炉を持つ最強の薄板ステンレスメーカー」(NES計画)として旗幟を鮮明にした。最近では、黒字基調のステンレスを中心とする総合薄板メーカーとして展開を強めている。

 故金子信男氏、故阿部譲氏ら、新日鉄副社長経験者が移籍し、トップとしてらつ腕をふるった、その印象が強いため、“子会社イメージ”が定着している。とくに、70年代末期、新日鉄社長候補だった阿部氏は、日新に移ってから、「高炉5社体制」に風穴を開ける猛烈経営を展開。当時と現在では、向かう方角が異なっているものの、01年度同社の巨額赤字の大半は薄板部門の損失である。はるか20年前の「がんばり」が、よい結果をもたらした時期もあったが、いま後遺症として、同社苦境の遠因となつている。小型高炉の高コスト構造も苦しい。

 現在、ステンレスの再編はもちろん、カラー鋼板の連携や統合を検討するうえで、日新を置いて語ることはできない。いまや、同社がキャスティング・ボートを握っているといっても過言ではない。

 系列企業間の連携あるいは再編統合も課題のひとつだ。すでに、溶接棒(溶材)で日鉄溶接工業と住金溶接工業が提携。このほか、物流分野、設備機械の補修、資材の購入などは合理化すべき業務であり、また最もその可能性が高い。さらには、普通鋼電炉、特殊鋼メーカー、鋼管、容器、建材、表面処理鋼板メーカーなど、それぞれ洗い直し、連携すべきところ統合可能なところは、そうすべきであろう。いずれにせよ、国内の他社との競合、つまり業界内競争を意識するのではなく、対需要家、あるいは海外との競争をこそ念頭に置いた、取り組みを展開してもらいたいものである。

住金・神鋼の最近10年間業績
 
住金
神鋼
年度
売上高
経常利益
粗鋼生産
売上高
経常利益
粗鋼生産
1991
11,571
405
1,066
13,012
477
630
1992
11,085
53
1,003
11,773
145
582
1993
10,426
▲ 330
999
10,682
▲ 34
575
1994
10,115
▲ 270
1,051
10,656
▲ 189
583
1995
10,570
202
1,000
11,464
360
591
1996
10,163
224
1,002
11,420
267
591
1997
10,270
346
1,025
11,153
253
594
1998
9,457
▲ 269
899
9,385
▲ 98
549
1999
9,096
▲ 177
965
8,377
82
581
2000
8,622
130
1,165
8,169
146
653
2001
7,700
10
 
8,100
▲40
 
単位:億円/万トン、01年度は予想(単独ベース)