トップ > 記事特集

構造改革に挑む/<12> 各論編(2)

新日鉄・住金・神鋼連携の行方(2)

日刊産業新聞 2002/4/16

 ▼「3社連合」は最強か

 新日鉄、住友金属、神戸製鋼3社の製鉄所別粗鋼生産能力(稼働溶鉱炉)は合計17基、総生産能力は約5360万トン。このほど世界最大企業にのし上がったアルセロール(粗鋼年産能力4700万トン)をしのぐ、実質世界最大グループという位置付けとなる。

 その能力は大手5社能力合計8547万トンに対し、約62・7%と圧倒的シェアを占める。実力ベースでは、01暦年実績4210万5000トン、5社合計ウエートは62・3%だった。シェア的にはほとんど変わらないが、問題は能力と実績とのギャップである。
 その差は1150万トン(21・5%)にのぼるが、これは実に、ここ数年の住金1社の実績をいずれも上回っているのである。3社のギャップに、他大手2社のそれが加わると、2000万トン近くになる。このことが国内、輸出向け市況水準を押し下げ続けてきたのは、論議するまでもないだろう。

 ▼余剰設備解消を本論に

 連携をうたうのであれば、まずこの需給ギャップを各社個別に自主的に検討し、全体に対し、整合性を保つことができるよう整理整頓するのが基本問題である。

 余剰設備があることで市場からの値下げ圧力に耐えることができず、慢性的な赤字体質に追い込まれているのであれば、そこを切開手術して根本的に健常者体質とすべきである――というのが、金融機関サイドの考え方だ。この間、金融庁の大手都市銀行など金融機関に対する指導は厳しさを募らせており、甘い融資態度は絶対的に許さないという雰囲気。したがって、銀行側からみれば、赤字体質の企業には、やりたくても新規融資はできない仕組みができ上がっている。

 薄板や、H形鋼、ステンレスなど部分提携は結構だが、本質論として、粗鋼余剰設備の解消が本論に座らなければ本物とは言い切れないだろう。

 現場に大きな影響を与えるため、各論を突き詰めるのは困難を極めるが、相対的に小型で溶銑コストが高い設備から、休止していくのが最も妥当な考え方である。

 欧米との比較でいえば、内陸に散在する欧米の小型高炉に対して、日本の場合は1960年代以降に建設された製鉄所は、すべて臨海・大型製鉄所だ。海外の良質な鉄鉱石・原料炭を大型船で製鉄所に直接、受け入れることができる大型岸壁や荷役設備、5000立方メートル級の溶鉱炉、大型連鋳、直結タイプの大型・高速圧延ライン等々。日本の高度成長期を支えたまさに原動力となった製鉄所の設備をフル稼働させることが大切である。

 伝統ある現場を守るため日夜奮闘している製鉄マンの努力は完全に理解できるが、小さい職場を守ることよりも、鉄鋼産業を守り発展させる大乗的見地に立って、論議を開始してもらいたい。3社連合がその方向に動き出せば、情勢は必ず大きく変動する。

 3000立方メートル以上の溶鉱炉を中心に組み立てを考えれば、3社連合では現状配置のままでも合計12基、合計生産能力は4457万トンとなり、01年実績4210万トンをまだ上回る。今後の、需要情勢によっては、休止小型高炉の代わりに1基程度、大型高炉をリプレースするゆとりも生み出すことができよう。

 銑鉄や溶鋼、半製品の相互融通は随時可能であり、それも2社間より3社間の方が一層やりやすいことは明らかだ。

新日鉄・住金・神鋼3社の製鉄所別能力 (単位千トン)
会社
製鉄所
粗鋼能力
溶鉱炉の炉容(立方メートル)
 新日鉄 室蘭No2
1,676 
 2296
君津計
10,147 
No2=3273/No3=4822/No4=5151
名古屋計
6,483 
No1=4650/No3=4300
戸畑No4
3,413 
 4250
大分計
8,312 
No1=4884/No2=5245
 新日鉄計
30,031 
 9基
 住金 鹿島計
8,620 
No2=4800/No3=5050
和歌山計
4,340 
No4=2700/No5=2700
小倉No2
1,460 
 1849
 住金計
14,420 
 5基
 神鋼 神戸 No3
1,549 
 1845
加古川計
7,598 
No1=4550/No2=4500
 神鋼計
9,147 
 3基
       3社計
53,598 
 17基