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「住金との連携合意によって、一応、国内のアライアンス関係は整った。」今後は、鉄鋼業の基本的再生に向けて基盤整備が大事になる。新日本製鉄首脳は本年2月末、両社の発表会見を受けて、そう感想を述べた。年末の神戸製鋼との連携合意では、相互の役割が比較的明確だったが、住友金属との合意では、必ずしも「はっきりしていない」というのが、世間一般の評価であった。しかし、2月末の会見では、住金―新日鉄連携の中身が発表され、ようやく投資関係筋も納得したとみえ、株価は回復してきている。
どちらかといえば、これまで新日鉄は海外投資を含め、単独のアライアンスには積極的でないという印象が濃かった。例外は80年代の対米技術援助・投資ぐらいのものだった(I/Nテック=冷延、I/Nコート=表面処理鋼板)。
しかし、海外については90年代後半以降、方針を転換した。
世界鉄鋼業の国境を越えた提携・統合が進み、一方では自動車産業が世界的に再編され、日本の自動車メーカーは新たに態勢を整え、海外立地を強化。世界のどこにいても、良質な日本製鋼材が手に入るよう、鉄鋼メーカーにその態勢整備を求めてきた。
また、各国の製鉄会社は、ユーザーの要求が高度化していることを背景に、日本の自動車鋼板製造技術の導入に意欲を示すようになってきた。
韓国POSCOや上海宝鋼、台湾CSCなど東アジア各国の新日鉄への接近は、そうした高級鋼板製造技術の移転が頭にあることは明らかだ。ただ、余り近距離圏の製鉄所にそうした技術を提供するのは余り得策とはいえない。
99年11月、タイのSUS(冷延工場)建設は、新日鉄の姿勢転換の象徴といえる。その後、ブラジル・ウジミナスと合弁会社ウニガルを設立(新日鉄40%出資)、表面処理鋼板設備を建設中だ。また、仏ユジノールと自動車用鋼板で技術提携を結び、先週にはその継承企業、アルセロールと1年間の成果を踏まえて協定をレビューした。世界最大鉄鋼企業アルセロールは、米国でのプレゼンスを強化しようとしており、とくに表面処理鋼板が狙い目のようだ。
ただ、米国は労組問題、いわゆるレガシーコスト(退職者年金等支払い)など、いくつか大きな問題がある。また、通商法201条による救済措置が2005年3月まで続くため、直接輸出は事実上ストップする。したがって、なんらか米国内メーカーとの連携あるいは、提携関係を模索する必要が出てくる可能性がある。
一方、国内では、昨年後半になって劇的な展開を見せた。
まず、中山製鋼所(神崎昌久社長)が自主的に溶鉱炉を2基とも02年中に休止。不足鉄源を新日鉄から求めたいとの申し入れを行い、01年11月、合意した(その後、中山は高炉を02年7月末で休止。スラブは大分製鉄所、ビレットは君津・名古屋両製鉄所から供給を受けることになった)。
そのほぼ1カ月後、神鋼―新日鉄の連携が合意された。その目玉の一つとして、「中山への半製品共同供給」が世間の目を引いた。新日鉄を通じて中山・神鋼の新たなアライアンスができたことになる。
これに続く、住友金属と新日鉄との提携では、住金の構造改革を新日鉄が薄板製造でサポートするとともに、両社のステンレス事業の統合を視野に入れた協議も開始された。
これらの統合によって、OECD鉄鋼委員会の大方針に応え、余剰設備の廃棄をより具体的に実行できる素地が整備されてきたといえる。長い目でみれば、再生産可能な価格回帰への展望が開けてきたといえよう。
構造改革に挑む/<11> 各論編(1)
新日鉄・住金・神鋼連携の行方(1)
日刊産業新聞 2002/4/15「住金との連携合意によって、一応、国内のアライアンス関係は整った。」今後は、鉄鋼業の基本的再生に向けて基盤整備が大事になる。新日本製鉄首脳は本年2月末、両社の発表会見を受けて、そう感想を述べた。年末の神戸製鋼との連携合意では、相互の役割が比較的明確だったが、住友金属との合意では、必ずしも「はっきりしていない」というのが、世間一般の評価であった。しかし、2月末の会見では、住金―新日鉄連携の中身が発表され、ようやく投資関係筋も納得したとみえ、株価は回復してきている。
どちらかといえば、これまで新日鉄は海外投資を含め、単独のアライアンスには積極的でないという印象が濃かった。例外は80年代の対米技術援助・投資ぐらいのものだった(I/Nテック=冷延、I/Nコート=表面処理鋼板)。
しかし、海外については90年代後半以降、方針を転換した。
世界鉄鋼業の国境を越えた提携・統合が進み、一方では自動車産業が世界的に再編され、日本の自動車メーカーは新たに態勢を整え、海外立地を強化。世界のどこにいても、良質な日本製鋼材が手に入るよう、鉄鋼メーカーにその態勢整備を求めてきた。
また、各国の製鉄会社は、ユーザーの要求が高度化していることを背景に、日本の自動車鋼板製造技術の導入に意欲を示すようになってきた。
韓国POSCOや上海宝鋼、台湾CSCなど東アジア各国の新日鉄への接近は、そうした高級鋼板製造技術の移転が頭にあることは明らかだ。ただ、余り近距離圏の製鉄所にそうした技術を提供するのは余り得策とはいえない。
99年11月、タイのSUS(冷延工場)建設は、新日鉄の姿勢転換の象徴といえる。その後、ブラジル・ウジミナスと合弁会社ウニガルを設立(新日鉄40%出資)、表面処理鋼板設備を建設中だ。また、仏ユジノールと自動車用鋼板で技術提携を結び、先週にはその継承企業、アルセロールと1年間の成果を踏まえて協定をレビューした。世界最大鉄鋼企業アルセロールは、米国でのプレゼンスを強化しようとしており、とくに表面処理鋼板が狙い目のようだ。
ただ、米国は労組問題、いわゆるレガシーコスト(退職者年金等支払い)など、いくつか大きな問題がある。また、通商法201条による救済措置が2005年3月まで続くため、直接輸出は事実上ストップする。したがって、なんらか米国内メーカーとの連携あるいは、提携関係を模索する必要が出てくる可能性がある。
一方、国内では、昨年後半になって劇的な展開を見せた。
まず、中山製鋼所(神崎昌久社長)が自主的に溶鉱炉を2基とも02年中に休止。不足鉄源を新日鉄から求めたいとの申し入れを行い、01年11月、合意した(その後、中山は高炉を02年7月末で休止。スラブは大分製鉄所、ビレットは君津・名古屋両製鉄所から供給を受けることになった)。
そのほぼ1カ月後、神鋼―新日鉄の連携が合意された。その目玉の一つとして、「中山への半製品共同供給」が世間の目を引いた。新日鉄を通じて中山・神鋼の新たなアライアンスができたことになる。
これに続く、住友金属と新日鉄との提携では、住金の構造改革を新日鉄が薄板製造でサポートするとともに、両社のステンレス事業の統合を視野に入れた協議も開始された。
これらの統合によって、OECD鉄鋼委員会の大方針に応え、余剰設備の廃棄をより具体的に実行できる素地が整備されてきたといえる。長い目でみれば、再生産可能な価格回帰への展望が開けてきたといえよう。
新日鉄10年間の業績
|
||||
年度 |
売上高
|
経常損益
|
粗鋼生産
|
比率%
|
1991 |
26,294
|
1,002
|
2769
|
26.2
|
1992 |
23,689
|
289
|
2532
|
25.6
|
1993 |
21,588
|
▲ 183
|
2512
|
25.9
|
1994 |
20,906
|
112
|
2657
|
26.2
|
1995 |
20,998
|
647
|
2617
|
26.2
|
1996 |
21,848
|
847
|
2571
|
25.5
|
1997 |
22,050
|
1,040
|
2662
|
25.9
|
1998 |
19,185
|
502
|
2320
|
25.5
|
1999 |
18,108
|
426
|
2562
|
26.1
|
2000 |
18,487
|
788
|
2784
|
26.0
|
2001 |
16,800
|
0
|
|
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(1)単位:億円/万トン (2)単独決算、01年度は予想 |