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構造改革に挑む/<3> 総論 世界の鉄鋼再編(2)

再編で変わる欧州鉄鋼地図

日刊産業新聞 2002/4/ 3

 欧州では、1952年、欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)が発足し、本格的に復興の道のりを歩み始めた。58年1月にはECSCを基礎として「欧州経済共同体」(EEC)がスタート。67年、EECおよびECSCにユーラトム(欧州原子力共同体)が大合同、ECが成立。域内関税の撤廃をはじめ、産業政策の共通化など25年に及ぶ努力が積み重ねられた。

 この間、鉄鋼産業ではEC委員会の下、クオーターごとの生産割り当て、工場別出荷調整、設備調整など、事実上の合理化カルテルに当たるガイドラインに守られ、発展してきた。

 92年、欧州連合(EU)が誕生。政治統合も成り、99年1月共通通貨「ユーロ」による決済が始まり、本年2月末、加盟各国通貨は消え、ユーロ貨幣に1本化された。同時に、本年7月にはECSCの50年協定も消滅する。

 こうしたECからEUへの完全統合による市場規模の拡大をにらんで、各国鉄鋼業は、国営企業の民営化、コスト競争力の強化に向けて、企業統合・合併を競って推進した。90年代半ばまでには、いわゆる「1国1ミル」体制を確立。さらに、世紀末から最近にかけては、国境を越えた大統合に踏み込んできている。

 ドイツは94年時点、大手企業としてはティッセン、クルップ/ヘッシュ、など4社グループが存在していた。このうち、1、2位企業が97年4月合併、新たにティッセン・クルップ・シュタールとして発足。残されたクレックナーは94年後半、ベルギーのシドマールに株式72%を売却。また、EKOは同じくベルギーのコックリルに株式60%を譲渡。ドイツ単独資本はTKS1社になった。

 フランスは、国営系企業ユジノール/サシロールが95年7月民営化。97年ユジノールに改称、(1)鋼板(2)ステンレス(3)合金鋼・特殊鋼の3部門に整理統合、スリム化した。その後、ベルギーのコックリルを合併。さらに、アルベドグループと本年2月統合、世界最大企業「アルセロール」として、新発足した。

 ベルギーは94年時点、コックリル、シドマール、フォルジ、ウジーヌの大手4社体制だった。このうち、フォルジは96年12月倒産。ウジーヌは97年2月、オランダ・ホーゴベンスに株式50%を売却、同年3月には高炉部門を閉鎖し、電炉(50万トン)のみとなった。コックリルは独EKO社を買収、98年にはユジノールと統合、さらにアルセロールに合流した。

 ルクセンブルクのアルベドは独・仏・スペイン・ベルギーにまたがる大鉄鋼メーカーとして統合の中心に座り、ついに世界最大企業の名をものにした。 英国・オランダは99年秋に合併(コーラス)、当時欧州第1位となったが、アルセロールに抜かれた。

 このほか、英国に本拠を置く「LNM」はイスパット・グループとして知られる。99年世界ランキング9位だったが、2000年4位に躍進。米・加・独・露・アイルランド・メキシコ・インドネシア等に生産拠点をもつ異色企業だ。

 欧州ミルのめまぐるしい統合合併の動きは、長期的視点・戦略に基づく強いダイナミズムを感じさせるものといえよう。