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構造改革に挑む/<1>

総論編 大再編の行方を追う

日刊産業新聞 2002/4/ 1

主な内容(課題含む)
(1)総論
 ◆世界鉄鋼再編
 (1)OECD鉄鋼委員会の
決断
 (2)再編で変わる欧州鉄鋼地図
 (3)どうなる米国鉄鋼業
 (4)アジア大手鉄鋼ミル各社の戦略(中国/韓国/台湾/その他) 
 ◆国内メーカー総論
 (1)高炉編
 (2)普通鋼電炉
 (3)特殊鋼・ステンレス
 (4)需要家産業
 (5)海外原料調達
(2)各論 
 (1)新日鉄・住金・神鋼3社提携の行方
 (2)JFEグループの実力(設備・生産性/技術力/営業戦略/海外事業/資金力/総合エンジニアリング)
 (3)他メーカーの戦略
 (4)高炉系普通鋼電炉の今後
 (5)高炉系特殊鋼・ステンレスメーカーの今後
 (6)関連企業戦略
 物流/建材/鋼管/化学/副原料・資材/容器/新素材・電子材料/システム事業/メーカー商社等
 (7)商社・流通業界
 総合商社の戦略/1次製品流通/2・3次製品流通/特殊鋼・ステン流通
 まとめ

 ― はじめに ―

 産業再編の波は、バブル経済崩壊後の後処理を求められている銀行・損保・生保・証券など金融をはじめ、商社・自動車・造船・建設・電機などすべての産業界に波及してきた。鉄鋼産業がその例外でいられるはずがなく、世界規模でその周辺産業を巻き込み、大再編成が始まっている。

 80年代末に旧ソ連邦が崩壊、当時世界最大の鉄鋼王国であったロシア・ウクライナを中心とする旧ソ連の鉄鋼産業は、突如マーケットを失い、根底から存在基盤が揺さぶられることになった。行き場を失った旧ソ連製鋼材が、米国やアジアに安値流出し、各地の市場を直撃、鋼材市況をがたがたに崩した。今にして思えば、そのときから「世界鉄鋼産業再編成」は、時代の要請として準備されてきた、回避不能の宿命的課題であったといえる。

 鉄鉱石、原料炭など資源産業は、過去10年間、需要家産業の消長を分析し、大同団結を図る方針に転換した。それまで資源産業は、各国別にいわゆる資源ナショナリズムと折り合いをつけながら、OPECのような国際協調・競争路線での生き方を模索してきた。しかし、21世紀に生き残るには、そういう緩やかなアライアンスでは利益が得られないとにらみ、大統合・合併に踏み切っていった。

 今では、例えば鉄鉱石は英・豪・伯を拠点とする3グループないし4大企業グループに統合されている。つまり、鉄鋼業にとって川上に当たる原料分野は、すでに扉が閉じられた格好である。

 一方、川下である需要家産業では、最大需要家である自動車が国境を越えて提携・統合・資本関係を結び、勘定の仕方で変わるが、5大グループとも、6大グループともいわれる大きな再編成は終了した。

 川上・川下それぞれ、トップ4や、トップ6の世界シェアは6割以上。マーケットをコントロールするのに十分な占有率といえる。

 それに対して、鉄鋼業はどうか…。「トップ5」の占有率は、1995年時点で13%弱、「トップ10」でもわずか20%に過ぎなかった。2000年時点では、「トップ5」15%弱、「トップ10」でも23%という厳しい状況である。

 2002年春の現在、米国鉄鋼業は崩壊、USSを軸に大再編成に向かおうとしている。欧州では、90年代初めの「1国1ミル」体制から、国境を越えた提携・統合に走り、粗鋼年産4600万トン級の世界最大企業アルセロールが発足した。

 かつての最大鉄鋼国ロシアやウクライナの企業も復活しつつある。アジアでは、今や鉄鋼生産国として世界最大となった中国、実力ナンバー1の韓国POSCO、台湾CSCなど群雄割拠している。

 日本鉄鋼業はそうした中でどういうビヘイビアをとろうとしているのか、あるいはとらなくてはいけないのか。

 今秋、JFEグループが正式発足。かたや新日本製鉄・住友金属工業・神戸製鋼所の幅広い提携は、ようやく輪郭が見えてきたところ。

 世界的な鉄鋼再編の動きと日本における高炉メーカーを中心とする業界再編を、同時進行的にとらえていきたい。