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2001年非鉄金属業界の10大ニュース

日刊産業新聞 

 01年の非鉄金属、軽金属業界は米国景気の後退、急速なIT不況の落ち込みにより、製錬業界は銅、亜鉛など主要メタルの大幅な価格下落とともに電子材料事業が急悪化。電線、伸銅業界も需要の冷え込みに見舞われた。この中で、チタンは販売量が過去最高を更新する勢いで唯一、堅調に推移した。軽金属では不況が続く中で、サッシ業界を中心に事業提携や経営統合など再編が進展した。
本紙が選んだ01年の非鉄金属の10大ニュースは以下の通り。

 (1)地金続落・減産方針
 (2)Jエナジーと日鉱金属 経営を統合
 (3)神岡鉱山、亜鉛・鉛鉱石の採掘中止
 (4)電線・古河電工が米ルーセント社光ファイバー事業部門を買収
 (5)電線・アライアンス具体化
 (6)伸銅品生産15年ぶりに100万トン割れ
 (7)新規用途拡大で過去最高の生産量
 (8)SUMCO月産5万枚体制で本格稼働
 (9)非鉄流通経営破たん相次ぐ
 (10)銅スクラップ輸出さらに拡大

(1)地金続落・減産方針

 世界的なIT不況の深刻化などを背景に銅、亜鉛の国際相場が続落し、LME銅相場は1300ドル台まで、同亜鉛相場は87年時の実質過去最低レベルの730ドルまで下落。国内建値も銅が戦後最安値の20万円に並ぶとともに、亜鉛も13万2000円と95年水準の安値まで下げた。銅では銅鉱石会社の減産表明に続いて、日本の大手製錬3社が来年から電気銅の減産に入る方針を発表。亜鉛でも鉱山の閉山発表が相次いだ。

(2)Jエナジーと日鉱金属 経営を統合

 ジャパンエナジー(Jエナジー)と日鉱金属は02年10月をメドに共同持ち株会社を設立し経営を統合することを決めた。新会社「新日鉱ホールディングス」の下に石油、金属、電子材料の3事業会社の自主運営体制を敷き、競争力・収益力を強化する。新会社の社長に野見山昭彦・Jエナジー会長兼社長が、会長に坂本卓・日鉱金属会長が就任する。

(3)神岡鉱山、亜鉛・鉛鉱石の採掘中止

 三井金属の100%子会社である神岡鉱業の神岡鉱山が6月末で鉛・亜鉛の採掘を中止した。これで、国内の亜鉛鉱山は日鉱金属の豊羽鉱山(北海道)だけとなる。同鉱山は1874年の三井組の鉱山経営以来、総採掘量は7500万トン。今後、亜鉛製錬は100%輸入鉱石による操業を可能な限り行い、神岡鉱山は「スーパーカミオカンデ」など地下空間利用事業により自立化を目指す。

(4)電線・古河電工が米ルーセント社光ファイバー事業部門を買収

 古河電工は7月、米ルーセント社の光ファイバー・ケーブル事業部門の買収合意を発表。北米市場の事業環境変化などから、手続き完了は11月までずれ込んだが、買収規模(最終合意段階では約3000億円)、日本の電線メーカーが一気に世界第2位に浮上することで内外の注目を集めた。技術戦略の重要性が高まる中、古河電工は買収先が持つ900件近い技術特許を取得。最大手・米コーニング社とのクロスライセンスも引き継ぎ、「主戦場」における事業展開の体制を整えた。

(5)電線・アライアンス具体化

 10月、大手メーカー同士の事業統合新会社が相次ぎ営業を開始した。住友電工と日立電線による高圧電力ケーブル部門のジェイ・パワー・システムズ、古河電工とフジクラによる地中送電線部門のビスキャス。来年には、三菱電線工業と昭和電線電纜の電力電線事業製販統合会社も稼働を開始する。立ち上がり段階では、間接部門に限定されるケースもあり、本格的な「成果確保」はこれから。今後は建設・電販部門でも具体化する見込み。

(6)伸銅品生産15年ぶりに100万トン割れ

 半導体などIT関連需要の急速な冷え込みで伸銅品の01年度の生産が94万―96万トンと、15年ぶりに100万トンの大台を割り込む見込み。電子材料向け比率が高い銅板条が前年度比25%減、リン青銅が40%弱の大幅減少のほか、銅管もエアコンのアウトインの急増を背景に10%弱、黄銅棒も18%程度のいずれも減少の見込み。02年度も需要の早期回復難で、2年連続の100万トン割れとなる見通し。

(7)新規用途拡大で過去最高の生産量

 スポンジチタンの販売量は2万5000トン、展伸材は1万4000トンを上回り、ともに過去最高を更新する見通し。化学プラントをはじめ、船舶や建築、民生品など航空機分野以外の新規用途での需要が拡大している。
 9月の同時多発テロで航空機需要の減退が懸念されたが、日本の展伸材メーカーは航空機への依存度が5%前後と低いため、影響は限定的だった。ただ、来年は一時的な影響が出るとの見方が強い。 

(8)SUMCO月産5万枚体制で本格稼働

 三菱マテリアルグループと住友金属工業の折半出資による300ミリシリコンウエハーの開発・製造会社SUMCO(シリコンユナイテッド マニュファクチュアリング)の量産工場が11月に本格稼働した。
 結晶工程は米沢工場で、加工工程は伊万里工場で行い、当面は月産5万枚でスタートし、来夏をメドに10万枚体制に引き上げる方針。
 半導体不況の中でも、300ミリウエハーの需要は比較的堅調に推移している。

(9)非鉄流通経営破たん相次ぐ

 4月の坂根商事(京都)、7月の乾金商(大阪)、8月のタツタ興業(大阪)、10月の東京地銅、11月のヤマノ金属(大阪)―と伸銅品問屋をはじめとする非鉄流通企業の経営破たんが相次いだ。原料業界では、笠原金属産業も倒産。
 老舗も多く、需要不振の中、過去の投資が重荷になって経営を支え切れなくなるパターンが見られた。
 与信問題は、取引消極ムードなど、最後までマイナス影響を与えた。

(10)銅スクラップ輸出さらに拡大

 非鉄スクラップの輸出が、内需不振や市況低迷を背景にさらに拡大。銅スクラップは秋口までに10万トン台を突破、新記録を更新した。
 受け入れ国は中国。銅やアルミの自給率が低く、経済成長を続ける中で、割安な原料確保が至上命題となっている。
 ただ、環境保護の観点から中国は、自国内のリサイクル拠点集約化に動き出した。
 送り手である日本などの関係者も、現地直接投資を検討。メーカーに続いて川下業界の中国進出も現実になりつつある。