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機能性材料の成長戦略

住友金属鉱山取締役 中里佳明氏 /サファイアの事業化急ぐ

日刊産業新聞 2010年08月24日

 二次電池や発光ダイオード(LED)など、環境エネルギー分野に使う電子材料の市場が急成長している。ただその一方でメーカー間の開発競争は激化。世界景気も減速懸念を強める中で、住友金属鉱山の機能性材料事業は、どのような成長戦略を描いているのか。中里佳明取締役に需要動向とあわせて聞いた。  

――足元の需要動向から。

special_192  「リーマン・ショック前のピーク時と比べると、売上高は平均して8割程度まで戻っている。ただし製品価格が値下がりしていることを考えると、操業率はそれより高いだろう。実際、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムなどの結晶系材料は、休日返上でフル操業している。米国の二番底懸念や中国景気の先行き不透明感などもあるが、4―6月の好調な状態が上期は続くとみている」  

――下期の需要動向をどうみる。

 「今以上に急激に良くなる状況は考えにくい。景気の踊り場とか在庫調整などを想定しておく必要があるだろう。常に下方修正の圧力を受ける中で、当社自身の製品群の特色を生かしながら、現状の売上高を維持して目標を達成したいと考えている」  

――中国市場に減速感がある。

 「世界経済は中国やインドなど、新興国がけん引するようになり、当社の顧客である日本の電子部品メーカーも、中国市場の開拓を本格化させている。こうした顧客の海外戦略に影響を受けているため、今のところは中国の成長速度が鈍化しても、マイナス成長にならない限り、数量は伸びていくと考えている」  

――主力製品の電池材料の販売見通し。

 「ハイブリッド自動車のニッケル水素電池に使う水酸化ニッケルは、ここまで対予算を下回っている。ただ下期にかけて販売は増える見通しで、通期では2割程度増えるとみている」

 「リチウムイオン電池の正極材料であるニッケル酸リチウム(LNO)は、昨年より1、2割程度伸びそうだ。すべての正極材の中で当社のLNOのシェアは低い。しかし当社が狙うのはハイエンドの市場で、顧客の用途開発次第で販売量は大きく変わる。表面に出てこない新規の需要が立ち上がる要素もあり、それを楽しみにしている」  

――電池材料事業を今後どう伸ばす。

 「水酸化ニッケルやLNOを、着実に顧客の信頼に応える製品に仕上げていくのに加え、将来は負極材やセパレーター、電解液などの材料も供給できるように、研究開発を強化している」  「リチウムイオン電池の正極材も、コバルト系や三元系、リン酸鉄系などいろいろある。顧客次第で使う正極材が決まるため、そういう材料も視野に入れて研究開発を行っていく。顧客の要求に幅広く応えるためには、電池のリサイクル技術も必要になるだろう」  

――白色LEDに使うサファイア基板の事業化はいつか。

 「青梅事業所でフル操業しているが、規模は小さく本格参入はしていない。クリアすべき課題が多い。白色LEDの用途は液晶テレビのバックライトが中心になっているが、数量的な意味で市場が本格化するのは照明用途だ。照明を狙うには基板の大型化によるコスト削減が欠かせない。現在は市場で主流になっている3インチ基板を供給しているが、人員を拡充して6インチ基板で本格的な事業化をめざしたい」  

――スパッタリングターゲット材の成長戦略はどうか。

 「液晶用のITO(インジウム・錫酸化物)ターゲットは、上位3社が独占しているため、タッチパネルとかカラーフィルムなどニッチな市場で事業展開している。しかし太陽電池向けのターゲット材などが注目を浴びているため、次の中期経営計画期間中に、飛躍的に数字を伸ばせるような戦略を検討しているところだ。柱の事業として世間にアピールできる体制を構築したい」


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