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世界アルミ市場の今後

国際アルミニウム協会(IAI)事務総長 ロン・ナップ氏

中国・中東と連携深化

日刊産業新聞 2010年08月18日

 中国と中東が世界供給をけん引するアルミニウム市場は、将来における地金不足が懸念されるなど、業界を取り巻く状況は確実に変化している。このほど来日した国際アルミニウム協会(IAI)のロン・ナップ事務総長に今後の見通しを聞いた。  

――日本アルミニウム協会は先日、2020年の世界アルミ需給が、中国やインドなど新興国の需要拡大に伴い、800万トンの不足に陥るとの見通しを発表したが。

 「今回の発表は信頼性の高いデータに基づいた合理的かつ意義深い内容だったととらえている。一方、世界市場は需給環境の変化に柔軟かつ迅速に対応してきたという事実も考慮すべきだろう。例えば、この数年間に需要が右肩上がりで推移してきた中国では、製錬能力が飛躍的に拡大した。中東地域に目を向ければ、アラブ首長国連邦(UAE)のエミレーツアルミニウムとカタールのカタラムがそれぞれ環境対応に優れた最新鋭の製錬設備を導入し、昨年末ごろから相次いで操業を開始した」

 「もう一つ重要な要因として、リサイクル技術の向上に伴いアルミスクラップの使用可能量が増加していることが挙げられる。いずれにせよ、近い将来、新興国の需要が大幅に伸長した際、供給サイドは十分な適応能力で乗り切ることができると考えている」  

――今春、ノルスク・ハイドロのスベイン・リチャード・ブランデッツCEOがIAI会長に就任したが、今後のIAIの活動方針は。

special_192 「当協会にとって、最も重要な活動はアルミ業界を世界市場および地域社会で普及するとともに支援することだ。自動車の軽量化やアルミスクラップのリサイクルなどを通じて、アルミの優れた特性を先頭に立って言い触らしていく。リサイクルに関連して、日本のアルミ缶リサイクル率がこのほど93%超を記録したことは大変素晴らしい。地球資源をこのような形で活用することは電力消費の大幅な削減にもつながるため、われわれはアルミのリサイクル性をアピールし続けていく必要がある」

 「アルミ地金の大きな用途として、建材、輸送機器、容器の3つの分野があるが、昨年、建材向けアルミ地金に関するウェブサイトを作成したのに続き、今年6月には輸送機器関連のアルミ地金に関するサイトを立ち上げた。これら2つのサイトは現在、英語のみの閲覧が可能だが、今後はフランス語と中国語版を相次いで作成する。その後はポルトガル語やスペイン語版をつくることを検討する」

 「他に取り組むべき案件として、温室効果ガスの削減を含めた一連の環境問題、ボーキサイト鉱の復旧やボーキサイト残渣の海洋投棄の禁止、技術開発のサポートなどが挙げられる」  

――クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)のアルミタスクフォースの進ちょく状況を教えてほしい。

 「引き続きAPPの枠組みの中で、測定アプローチやベンチマークの作業などを行っている。近日中に過フッ素化合物類(PFCs)発生量などを含めた最新調査結果を発表する予定だが、PFCsの排出量は引き続き減少しており、他にも製錬時の電力消費量の減少やリサイクル率の向上、温室効果ガスの削減などが盛り込まれる予定だ」  

――9月下旬にメタルブリテン主催のアルミ会議がバーレーンで開催される。

 「同じ時期に湾岸アルミ協会(GAC)に招待されたため、バーレーンを訪問する。中東地域は新規製錬所の立ち上げで今や5つの大きな製錬所が稼働し、世界の最も重要な生産拠点の一つとなったため、GACが今年正式に発足した。今後のIAIとGACとの連携や協力体制について話し合う」  

――世界最大の需要・生産国、中国との関係は。

 「良好だ。中国有色金属工業協会(CNIA)が10月25―27日に河南省鄭州市で開催する中国アルミフォーラムを当協会がサポートする。CNIAとはボーキサイト残渣の適正処理など複数の案件に関して連携を深化し取り組んでいる」

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