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2009年に鋼材消費量で世界3位に躍り出たインド。現地鉄鋼メーカーが次々と拡張計画を打ち出し、鉄鋼省は国内粗鋼能力が2年後に1億2000万トンを超える予測を立てている。自動車や家電など日本企業の進出が活発で、日本鉄鋼大手も現地企業との提携を進め、伸びる市場をとらえようとしている。現地事情と将来の見通しを、インド三井物産の小野瀬宗孝会長兼社長に聞いた。
「例えば携帯電話の契約台数は、08年の8000万台から今は6億台と需要の伸び率が非常に大きい。人口は2050年に16億8000万人に増えると予測され、20年、30年先をみると、世界一の需要が期待できる。なにより中国が浸食していない。すでに日本の海外投資は、インドの伸び率が国別で最も高いが、狙うべきはインド市場だ」
インド事情と将来見通し 鉄鋼生産・消費が安定成長
小野瀬宗孝氏(インド三井物産会長兼社長)に聞く
日刊産業新聞 2010年07月06日2009年に鋼材消費量で世界3位に躍り出たインド。現地鉄鋼メーカーが次々と拡張計画を打ち出し、鉄鋼省は国内粗鋼能力が2年後に1億2000万トンを超える予測を立てている。自動車や家電など日本企業の進出が活発で、日本鉄鋼大手も現地企業との提携を進め、伸びる市場をとらえようとしている。現地事情と将来の見通しを、インド三井物産の小野瀬宗孝会長兼社長に聞いた。
――鉄鋼需要は安定して増えているが、先行きの見通しは。
「09年4月からの年度の鋼材消費は5632万トンと前年比7・2%増えた。未整備のインフラの拡充や住宅不足問題の解消、中間所得層が増えることによる購買力増加で、11年度は6000万トンを超えるとの見方もある。需要は緩やかだが、確実に増加するだろう。足元はメーカーが4―6月に急激な値上げを行った反動で値下げムードが漂い、バイヤーが買い控えているが、在庫が消化されれば需要は増えてくるはずだ」――各鉄鋼ミルが能力を増強しているが、鉄鋼生産はどの程度増えるのか。
「国内鉄鋼メーカーの09年度の生産量は、過去最高の5957万トンと、供給能力は着実に拡大している。鉄鋼省は11年度1億2400万トン、19年度2億9500万トンを予測するが、土地問題などで幾つかのプロジェクトは遅れ気味。能力拡大が急速に進むかは不透明で、11年度は7500万―8000万トン程度にとどまるとの見方が大半だ。主要鉄鋼メーカーは、国営2社を除きすべて民営で、国営主体の中国の状況と異なるため、鉄鋼省主導でメーカーの再編・集約が進むとは考えにくい。品質面では、日本はじめ海外ミルとの技術提携などを通じて、徐々に品質レベルが向上し、従来輸入に頼っていた品種に関しても、ある程度は国内で供給できるようになるだろう」――日本ミルとインド現地ミルの提携が相次いでいる。インド側の狙いは何か。
「インド側の期待は、日本からの投資による技術の供与と雇用の増加だ。第3次産業のGDPに占める比率が60%と高く、1次と2次が20%ずつ。2次の比率を高めて国民の所得を上げるとともに、日本企業にも利益を得てもらい、税収を増やしたいと考えている。進出には現地企業と組むことが重要だ。韓国POSCOは自前で製鉄所を建設しようとしたが、土地問題で進んでいない。インフラ整備のスピードが遅いことなど、難しい側面もあるが、全般的にインド人は日本に好意的で、しっかりとした法制度も根付いている。難しい側面を挙げると切りがないが、大事なのは現地企業との関係を強化し、現地市場に深く入り込むことだ」――日本の需要産業の進出状況は。
「自動車メーカーの進出が一巡し、今はパナソニックなど家電メーカーが、本格的に進出し始めている。加えて、今後はITや医薬など技術の高度な産業にもチャンスがある。当社もサービスセンター事業などを通じて、日系需要家のニーズに対応する。日本の鉄鋼業としても高付加価値鋼材の供給に加え、現地の品質・価格ニーズに応じた、いわゆるボリュームゾーンへの対応が、これまで以上に求められるだろう」「例えば携帯電話の契約台数は、08年の8000万台から今は6億台と需要の伸び率が非常に大きい。人口は2050年に16億8000万人に増えると予測され、20年、30年先をみると、世界一の需要が期待できる。なにより中国が浸食していない。すでに日本の海外投資は、インドの伸び率が国別で最も高いが、狙うべきはインド市場だ」