政府は来月、新経済成長戦略をまとめるが、この中に資源エネルギー政策の見直し案も盛り込まれる。経済産業省が総合資源エネルギー調査会で討議したもので、レアメタル自給率50%超、ベースメタル自給率80%など具体的数値目標も含まれる。資源確保・安定供給強化への戦略を資源エネルギー庁の安永裕幸鉱物資源課長に聞いた。
――資源エネルギー政策見直しの概要からお聞きしたい。
「エネルギー基本法は3年に一度見直すことになっており、今回の見直しのポイントは原子力発電の推進、資源の安定供給、とくに中国との関係、それに次世代自動車など需要サイドとの関係にまで踏み込んだことにある。鉱物資源に関しては戦略レアメタルの設定、自給率向上、資源外交、海洋資源開発、人材育成などが中心になる」
――ベースメタルの自給率2030年に80%がめざすべき姿として明記されている。
「今後の社会は、環境を考慮した低炭素社会を構築していかなければならない。次世代の自動車にリチウムやレアアースが必要なことは自明のことだが、例えば電気自動車はモーターで走る、そのモーターのコイルには銅が使われる。自動車1台当たりの銅の使用量は25キロから60キロに増えるという試算もあり、レアメタルだけでなくベースメタルの重要性も増してくる。今の自主開発比率は32%程度だが、これにリサイクルを含めれば自給率は40%をすでに越えている。自主開発比率プラスリサイクルで自給率80%の目標は実現可能だと考える」
――レアメタルの自給率目標は50%。
「とくにレアアース、リチウム、タングステンを戦略レアメタルと位置付け、代替材料、リサイクルも含め30年に自給率50%以上にしたいということだ。需要の拡大や特定国への依存などを踏まえ、海外での資源開発、リサイクル推進など政策資源を集中投入して行う必要がある」
――リチウムは最近特に注目されている。
「リチウムはチリからの輸入が80%を占めて、特定国依存の典型だが、複数の企業が手掛けているので供給が困難になるリスクは少ない。その点から備蓄の必要はないと判断できる。ただ、チリ以外の埋蔵国であるアルゼンチン、ボリビアなどとの関係は非常に重要だ」
――レアアースは。
「リソースのつぎ込み方はいろいろあった方が良い。レアアースもベトナムやカザフスタンで開発に着手しており、供給源の多様化を進めている」
――準戦略レアメタルに位置付けているニオブ、タンタル、白金族については。
「ニオブ、タンタルは現在1社からの供給なので多様化する必要があると考えている。白金族は宝飾品などに使用されているのでこれも備蓄する必要のない資源だ」
――資源国との2国間関係強化がうたわれている。
「かつての資源ナショナリズムとは質的な変化がある。要は現在の資源国は自国の資源を掘りつくした後も国を豊かにするにはどうしたら良いかを考えているということだ。相手国のニーズを踏まえ、単なる資源開発にとどまらない産業振興、人材育成、地域インフラなど、ODAをはじめ、官民が連携をとって取り組むことが必要になる」
――海洋資源も重要視されているが。
「海底熱水鉱床からは金・銀が期待される。今後10年程度での商業化が目標になる。また、複数のレアメタルを含むコバルトリッチクラストの探査・開発を強調したい」
――人材育成の具体策は。
「教授クラスより準教授クラスが少ないのが現状。若い研究者に長期的に資源分野に興味を持ってもらうことが大事になる。今後、JOGMECが提案公募型で実施しようとしている。研究費の支援の一定期間継続が必要だ。産学官連携による取り組みを強化する」
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