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2009年の10大ニュース/非鉄金属
日刊産業新聞 2009年12月21日(1)レアメタル備蓄の強化・拡充
(1)レアメタル備蓄の強化・拡充 レアメタルの国家備蓄が強化された。従来の7鉱種のうち安定供給に不安があるコバルト、タングステン、バナジウム、モリブデンの備蓄を積み増した。さらにインジウムとガリウムを備蓄対象鉱種に加えた。ニッケル、クロム、マンガンを加えた従来の鉱種は鉄鋼産業の供給不安に対応する性質が強かったが、インジウムとガリウムは電気・電子産業への安定供給が目的。太陽電池向けの素材として将来の需要急増にも対応できる。(2)三菱マテが電線を完全子会社化
三菱マテリアルは三菱電線工業を完全子会社化する。三菱伸銅、三宝伸銅工業の完全子会社化に次ぐ措置で、三菱マテは国内銅事業の川下工程をすべて取り込む格好になる。三菱電線は同時に、自動車用ワイヤハーネスの大口顧客向け納入などからの撤退を発表、事業ポートフォリオを大きく変じる。抜本的な事業構造改革の実施に際し、足元の財務状況では自社単独での対応が困難と判断、三菱マテの支援受け入れを決めた。(3)三井金属と住友鉱山伸銅が伸銅品事業を統合
三井金属と住友金属鉱山は5月29日、両社の伸銅事業を統合することで基本合意した。両社が折半で設立する新会社は来年4月1日に発足し、月3900トンの黄銅条を生産する伸銅メーカーが誕生する。統合によって三井金属はこれまで手薄だった高付加価値品の分野に進出でき、住友金属鉱山は伸銅品生産量の拡大を図ることができる。生産や原料調達などの効率化で年間10億円程度のコスト削減効果も見込む。(4)銅スクラップ輸出、4月5万トンと過去最高
4月の銅スクラップ輸出量が単月過去最高の5万967トンを記録した。最大の輸出相手の中国は景気刺激策や非鉄備蓄政策で年初から銅需要が急増。上海銅相場の独歩高で日本産スクラップが割安だったこともあり高値攻勢を仕掛けた。 その後は税関審査強化などで低迷し、10月までの単月統計で前年実績を上回ったのは4月のみ。1―6月実績は4年ぶりに20万トンを割り込み、通年も2年連続で40万トン割れとなる見通しだ。(5)非鉄相場が急回復
非鉄金属の国際相場は年初比2倍以上の水準に急回復した。とくに銅のLME現物(セツルメント)は1年前の安値トン2770ドルから12月3日に7071ドルと2・6倍。これを受け国内建値も足元トン65万円と1年前の31万円から倍に値上がりした。前半の中国買いと後半の金高騰、米国の景気回復期待などを背景に投機買いが膨らんだ。鉛、亜鉛、ニッケルからレアメタルを含めあらゆる金属価格が水準訂正に動いた。(6)金が過去最高値
金の国際価格が過去最高値を記録した。COMEXの金先物(期近セツルメント)は11月下旬から連日の高値更新となり、12月3日にトロイオンス1217・40ドルをつけた。現在は1100ドル付近で高止まりしている。インドの中央銀行が金準備を増やしたことが急騰の契機になったが、背景にあるのは基軸通貨ドルの信用不安。この影響で為替市場では急速な円高が進行。一時は14年ぶりに1ドル=84円台に上昇した。(7)中国の銅輸入急増
中国の銅地金輸入量が急増した。中国は国内の地金生産不足を補うために毎年100万トン以上輸入している。09年は1―6月の半年間だけで178万トンと、昨年1年間の145万トンを23%上回った。通年では倍増する見通し。4兆元の景気対策による需要期待が高る一方で、1―3月の景気減速でスクラップ発生が減少。それを地金輸入で補った。SRBの備蓄や上海市場の銅価がLMEより割高だったため利ザヤ稼ぎの動きもあった。(8)大手電線、公取立ち入り検査続く
2009年は大手電線メーカーへの公正取引委員会の立ち入り検査が続いた。1月末の電力会社向け高圧電力ケーブル、6月初めのNTTほか電気通信事業者向け光ファイバーケーブル、先週17日の建設用電線の計3回で、いずれも価格カルテルの疑い。排除措置命令、課徴金納付命令などの具体的な行政処分はまだ下っていない。 とくに建設用電線は需要低迷と市況混迷が慢性化・深刻化する中での検査となり、業界の戸惑いは大きい。(9)古河電工、黄銅線を沖電線に譲渡
古河電気工業は12月10日、ワイヤカット放電加工機に使う黄銅の電極線「フルエース」の商標権を沖電線に譲渡することで合意したと発表した。古河電工が進めてきた選択と集中の一環で、同社は今後、電極線のもとになる素線のみを製造。沖電線が最終製品に加工し販売する。古河電工は素線に特化することで上工程の設備の稼働率を高め、収益改善を図る。沖電線も設備稼働率の向上と販売の増加を見込む。沖電線の国内シェアは従来の約1・5倍になり、首位の日立電線に迫る。(10)新日石と新日鉱が統合で最終合意
新日本石油と新日鉱ホールディングスは来年4月に統合持ち株会社JXホールディングスを設立することで最終合意に達した。日鉱金属は7月にJX日鉱日石金属として再出発する。現在の岡田昌徳社長が引き続き社長を務める。 JXグループは経常利益5000億円を安定的に確保する収益体質をめざすが、このうち資源・製錬、環境リサイクル、電材加工、太陽光発電用の多結晶シリコンなど非石油事業で2000億円を上げる考え。 ・ 記事は、記事データベース検索サービス(有料)でも閲覧できます → 記事検索