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日本の約27倍という広大な国土を持つカナダは、世界のニッケル鉱山生産量の17%(2位)、銅の4%(6位)、亜鉛の6%(3位)を占める資源大国。貴金属、モリブデン、タングステン、レアアースといったレアメタルの埋蔵資源にも恵まれる。中でも最大都市トロントを有するオンタリオ州は同国鉱業の中心であり、世界の鉱業金融の中心地でもある。同州政府の招きで現地を訪れカナダ鉱業の現状を取材した。
2008年9月。リーマン・ショックをきっかけとする金融危機により、原油、ベースメタル、レアメタルなどあらゆる資源価格が歴史的な暴落を演じた。年末にかけて銅が3分の1、ニッケルが半値にまで売られたが、金だけはオンス800ドル以上の高値を維持することができた。 「銅やニッケルを生産しているサドベリーは影響を受けたが、ティミンズの経済は潤っている」とローレン市長は胸を張る。
国際ニッケル研究会(INSG)によると、08年のカナダのニッケル鉱山生産量は26万トン。オンタリオ州政府の説明では、このうち3分の2を同州で生産しているという。さらに金の生産も3分の2、銅は3分の1、白金族の90%がここに集中している。オンタリオ州がカナダ鉱業の中心地といわれるゆえんである。
世界的にもオンタリオ州だけで白金4位、ニッケルと副産物のコバルト5位、金11位、銅13位、銀15位、亜鉛17位に位置しており、カナダ国内にとどまらず、国際的な鉱床地帯となっている。
ティミンズの約300キロ南に広がるサドベリー盆地。この地域ではヴァーレ・インコやエクストラータなどの世界的な資源メジャーがニッケルや銅などを生産している。
ティミンズが金生産の中心なら、ここにはベースメタルの生産が集中している。
ただ、「エクストラータのニッケル鉱山は市況悪化で60%操業を続けている」(サドベリー市開発公社のポール・レイド氏)ように、この町はまだ資源急落による不況から立ち直っていない。
サドベリー市内に本社工場を構えるトラック・アンド・ウィールズ社。主にコマツ製の重機を鉱山向けなどにカスタマイズして販売している同社のコーンラッド・フール社長兼CEOも、「経済不況の影響でかなり在庫を抱えている」と話す。
それでも金属価格が金融危機直前の水準まで回復したことで、鉱業関連企業の勢いも徐々に戻ってきた。
カナダにはウォールブリッジのような「ジュニア」と呼ばれる中小規模の探鉱会社が数多く本拠を構え、世界中に探鉱拠点を広げている。そして、ここオンタリオ州の中では未開発の先住民族が暮らす北部地域にも、こうした探鉱会社が進出してきている。
トロントから約600キロ北に向かったウェベクエという先住民族の村にも、資源開発の波が押し寄せている。湿地帯が凍る冬以外は空路でしかたどり着けないのだが、「リング・オブ・ファイア」と呼ばれる鉱床地帯で、ジュニア企業がキャンプを設置して資源探査に力を入れている。
資源大国カナダを支えているのは豊富な埋蔵資源ばかりではない。トロントの金融街にあるトロント証券取引所(TSX)には、「グラスルーツ(草の根)」と呼ばれる初期の探鉱を含めた小さな資源会社から国際的な資源会社まで1100社以上が上場している。とくに資金に乏しいジュニア企業にとっては重要な資金調達の場となっている。
さらにシステムを含めた鉱山設備などのサービスを提供する企業も充実。効率的な資源開発や探査を行う研究や人材育成を行う非営利企業なども深くかかわっている。資源会社、サービス提供会社、研究機関など、こうした三位一体の取り組みの上に資源大国カナダの鉱業界は成り立っている。
減産中のエクストラータのニッケル鉱山(サドベリー)
資源大国 カナダ編 (1)
鉱業の中心、オンタリオ州
日刊産業新聞 2009年10月29日日本の約27倍という広大な国土を持つカナダは、世界のニッケル鉱山生産量の17%(2位)、銅の4%(6位)、亜鉛の6%(3位)を占める資源大国。貴金属、モリブデン、タングステン、レアアースといったレアメタルの埋蔵資源にも恵まれる。中でも最大都市トロントを有するオンタリオ州は同国鉱業の中心であり、世界の鉱業金融の中心地でもある。同州政府の招きで現地を訪れカナダ鉱業の現状を取材した。
高値の金、経済潤す ニッケルは減産続
「ティミンズはラッキーだった」。オンタリオ州北東部の中心にあるティミンズ市のトム・ローレン市長がこう語るのは、金属資源に恵まれたオンタリオ州の中でも、金の生産がここに集中しているからだ。2008年9月。リーマン・ショックをきっかけとする金融危機により、原油、ベースメタル、レアメタルなどあらゆる資源価格が歴史的な暴落を演じた。年末にかけて銅が3分の1、ニッケルが半値にまで売られたが、金だけはオンス800ドル以上の高値を維持することができた。 「銅やニッケルを生産しているサドベリーは影響を受けたが、ティミンズの経済は潤っている」とローレン市長は胸を張る。
国際ニッケル研究会(INSG)によると、08年のカナダのニッケル鉱山生産量は26万トン。オンタリオ州政府の説明では、このうち3分の2を同州で生産しているという。さらに金の生産も3分の2、銅は3分の1、白金族の90%がここに集中している。オンタリオ州がカナダ鉱業の中心地といわれるゆえんである。
世界的にもオンタリオ州だけで白金4位、ニッケルと副産物のコバルト5位、金11位、銅13位、銀15位、亜鉛17位に位置しており、カナダ国内にとどまらず、国際的な鉱床地帯となっている。
ティミンズの約300キロ南に広がるサドベリー盆地。この地域ではヴァーレ・インコやエクストラータなどの世界的な資源メジャーがニッケルや銅などを生産している。
ティミンズが金生産の中心なら、ここにはベースメタルの生産が集中している。
ただ、「エクストラータのニッケル鉱山は市況悪化で60%操業を続けている」(サドベリー市開発公社のポール・レイド氏)ように、この町はまだ資源急落による不況から立ち直っていない。
サドベリー市内に本社工場を構えるトラック・アンド・ウィールズ社。主にコマツ製の重機を鉱山向けなどにカスタマイズして販売している同社のコーンラッド・フール社長兼CEOも、「経済不況の影響でかなり在庫を抱えている」と話す。
それでも金属価格が金融危機直前の水準まで回復したことで、鉱業関連企業の勢いも徐々に戻ってきた。
トロント証取/探鉱ジュニア資金調達の場
ウォールブリッジ・マイニング・カンパニーはサドベリーで探鉱活動を行っている。トロント証券取引所(TSX)に上場している同社の株式は金融危機の影響で年初には0・05ドルの安値を記録したが、金属価格の上昇などにより一時0・25ドル超まで急回復した。 同社はオンタリオ州にとどまらず、ブリティッシュ・コロンビア州などカナダ国内で幅広く探鉱活動を行っている。カナダにはウォールブリッジのような「ジュニア」と呼ばれる中小規模の探鉱会社が数多く本拠を構え、世界中に探鉱拠点を広げている。そして、ここオンタリオ州の中では未開発の先住民族が暮らす北部地域にも、こうした探鉱会社が進出してきている。
トロントから約600キロ北に向かったウェベクエという先住民族の村にも、資源開発の波が押し寄せている。湿地帯が凍る冬以外は空路でしかたどり着けないのだが、「リング・オブ・ファイア」と呼ばれる鉱床地帯で、ジュニア企業がキャンプを設置して資源探査に力を入れている。
資源大国カナダを支えているのは豊富な埋蔵資源ばかりではない。トロントの金融街にあるトロント証券取引所(TSX)には、「グラスルーツ(草の根)」と呼ばれる初期の探鉱を含めた小さな資源会社から国際的な資源会社まで1100社以上が上場している。とくに資金に乏しいジュニア企業にとっては重要な資金調達の場となっている。
さらにシステムを含めた鉱山設備などのサービスを提供する企業も充実。効率的な資源開発や探査を行う研究や人材育成を行う非営利企業なども深くかかわっている。資源会社、サービス提供会社、研究機関など、こうした三位一体の取り組みの上に資源大国カナダの鉱業界は成り立っている。
減産中のエクストラータのニッケル鉱山(サドベリー)
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