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経済の後退で廃車発生量が激減。金属スクラップ価格も昨年のピーク時の半値以下に低下し、自動車リサイクル業の経営は厳しい。大手リサイクル業者のシマ商会(福島県南相馬市)の島一社長に自動車再資源の現状と電気自動車など廃車市場の将来の変化を聞いた。
――米自動車大手の破たんなど自動車業界の動きが激しい。中古部品への影響は。
「米自動車破たんの直接的影響はないが、世界的には中古部品の供給不足が起きている。金属スクラップの価格下落で廃車が集まらないため。新車が売れないので乗り換えによる廃車の発生が極端に減っている。国内の発生台数は実感として前年より40%減っている。中古部品は国内供給は過剰だが、海外向けは不足し、輸出は前年に比べ約30%減っている。中古車のオークション会場は全国に相当数あるが出品車両は50%減り、解体車両も入れて経費をカバーしている状況。解体屋は経営が苦しく、シュレッダー業者も操業が低下している」
――シマ商会の集荷はどうか。
「当社は順調でヤードは常に満杯だ。工場の立地がよく、関東圏から常磐道を使って集めることができ、福島の浜通りから中通り、北は仙台にも近く、集荷範囲が広くアクセスがよい。とくに関東圏に近いのが強みだ。昨年に設置した関東支店は人員の増強を検討している。運送会社など上場企業との取引も増えている。上場会社は、信頼性が高く環境対応に優れた廃車引取業者を選択している」
――海外向け6割の中古部品の販売は。
「国内も海外も勝ち負けがはっきりしている。決め手は品質だ。当社は世界160カ国に販売チャンネルを持ち、15年から30年のつきあいのある顧客が多い。当社へのオーダーは増える一方だ。品質や価格、安定供給・安定販売の信頼関係で成り立っている。そもそも中古部品の顧客は発展途上国の所得の少ない層。米自動車の破たんも、そういう層には影響はない。南米やアフリカでは中古車の乗用台数が増えており、日本からの供給が足りない状況が続く」
――足元の処理台数は。
「月間の処理台数は乗用車、重機まで含めて約3000台とほぼフルの操業だ。乗用車だけの解体業者は大変だろうだが、当社は重機までやっている。それでも国内は公共事業の減少で重機の需要は減る傾向。発生は減るだろう。売上高はスクラップの価格下落を受けて7%減少しているが、部品販売だけをみると数%増えている。部品の販売価格はスクラップ価格に連動して1度下がったが、足元は上がっている」
――ここ数年の設備投資負担に苦しむリサイクル業者が多い。
「当社は大型自動車リサイクル工場の建設投資に25億円をかけたが、07年4月に稼働し、昨年までの資源高騰と販売増でほぼ返済し終えた。建設費もまだ低いころだったので、よいタイミングで建設できた。工場作業者の熟練度は上がっており、100%リサイクルの目標に限りなく向かっていく。金属以外のリサイクルも開発を続ける考えだ」
――後進国の自動車市場の拡大で中古部品の需要も増える。
「後進国で中古車需要が増えているが、中古車市場が拡大している国は米国車が多い。左ハンドルの国にすっと入る。しかし、そういう国でも大型車は売れなくなる。一方で廃車の発生は米国でも少なくなるはず。中古車も日本車が増えるだろう。中国が中古車も部品も買うとなればさらに中古部品は不足する。中国からのコンテナ費用は帰り便に積むのでゼロ。今は鉄・非鉄や雑品のスクラップを積んでいるが、これからは廃車や中古部品を積む可能性がある。スクラップ業者や解体業者に入る前に中国に輸出されるかもしれない。今は発生がなくて苦しんでいるが、今後はスクラップの元になる廃車そのものが輸出される懸念がある」
――電気自動車が普及した際の中古部品市場への影響は。
「ガソリン車の部品点数は約3万点だが、電気自動車はその3分の1といわれている。電気自動車の海外の需要がいつ生じ、どう拡大するかはまだつかめないが、海外でも広がれば、自動車解体の業界は大きな打撃を受ける。部品が減り、小型化するとなれば日本の部品メーカーや鉄鋼メーカーも影響を受ける。5年、10年先を考えると市場は縮小するかもしれない」
自動車リサイクル 現状と展望を聞く
島一・シマ商会社長/電気自動車拡大に備え
日刊産業新聞 2009年07月29日経済の後退で廃車発生量が激減。金属スクラップ価格も昨年のピーク時の半値以下に低下し、自動車リサイクル業の経営は厳しい。大手リサイクル業者のシマ商会(福島県南相馬市)の島一社長に自動車再資源の現状と電気自動車など廃車市場の将来の変化を聞いた。
――米自動車大手の破たんなど自動車業界の動きが激しい。中古部品への影響は。
「米自動車破たんの直接的影響はないが、世界的には中古部品の供給不足が起きている。金属スクラップの価格下落で廃車が集まらないため。新車が売れないので乗り換えによる廃車の発生が極端に減っている。国内の発生台数は実感として前年より40%減っている。中古部品は国内供給は過剰だが、海外向けは不足し、輸出は前年に比べ約30%減っている。中古車のオークション会場は全国に相当数あるが出品車両は50%減り、解体車両も入れて経費をカバーしている状況。解体屋は経営が苦しく、シュレッダー業者も操業が低下している」
――シマ商会の集荷はどうか。
「当社は順調でヤードは常に満杯だ。工場の立地がよく、関東圏から常磐道を使って集めることができ、福島の浜通りから中通り、北は仙台にも近く、集荷範囲が広くアクセスがよい。とくに関東圏に近いのが強みだ。昨年に設置した関東支店は人員の増強を検討している。運送会社など上場企業との取引も増えている。上場会社は、信頼性が高く環境対応に優れた廃車引取業者を選択している」
――海外向け6割の中古部品の販売は。
「国内も海外も勝ち負けがはっきりしている。決め手は品質だ。当社は世界160カ国に販売チャンネルを持ち、15年から30年のつきあいのある顧客が多い。当社へのオーダーは増える一方だ。品質や価格、安定供給・安定販売の信頼関係で成り立っている。そもそも中古部品の顧客は発展途上国の所得の少ない層。米自動車の破たんも、そういう層には影響はない。南米やアフリカでは中古車の乗用台数が増えており、日本からの供給が足りない状況が続く」
――足元の処理台数は。
「月間の処理台数は乗用車、重機まで含めて約3000台とほぼフルの操業だ。乗用車だけの解体業者は大変だろうだが、当社は重機までやっている。それでも国内は公共事業の減少で重機の需要は減る傾向。発生は減るだろう。売上高はスクラップの価格下落を受けて7%減少しているが、部品販売だけをみると数%増えている。部品の販売価格はスクラップ価格に連動して1度下がったが、足元は上がっている」
――ここ数年の設備投資負担に苦しむリサイクル業者が多い。
「当社は大型自動車リサイクル工場の建設投資に25億円をかけたが、07年4月に稼働し、昨年までの資源高騰と販売増でほぼ返済し終えた。建設費もまだ低いころだったので、よいタイミングで建設できた。工場作業者の熟練度は上がっており、100%リサイクルの目標に限りなく向かっていく。金属以外のリサイクルも開発を続ける考えだ」
――後進国の自動車市場の拡大で中古部品の需要も増える。
「後進国で中古車需要が増えているが、中古車市場が拡大している国は米国車が多い。左ハンドルの国にすっと入る。しかし、そういう国でも大型車は売れなくなる。一方で廃車の発生は米国でも少なくなるはず。中古車も日本車が増えるだろう。中国が中古車も部品も買うとなればさらに中古部品は不足する。中国からのコンテナ費用は帰り便に積むのでゼロ。今は鉄・非鉄や雑品のスクラップを積んでいるが、これからは廃車や中古部品を積む可能性がある。スクラップ業者や解体業者に入る前に中国に輸出されるかもしれない。今は発生がなくて苦しんでいるが、今後はスクラップの元になる廃車そのものが輸出される懸念がある」
――電気自動車が普及した際の中古部品市場への影響は。
「ガソリン車の部品点数は約3万点だが、電気自動車はその3分の1といわれている。電気自動車の海外の需要がいつ生じ、どう拡大するかはまだつかめないが、海外でも広がれば、自動車解体の業界は大きな打撃を受ける。部品が減り、小型化するとなれば日本の部品メーカーや鉄鋼メーカーも影響を受ける。5年、10年先を考えると市場は縮小するかもしれない」
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