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最近、アルミ二次合金業界において、昨秋からの需要急減を「業界体質を改善する千載一遇のチャンス」ととらえる見方が広がり始めている。関係者は「この40年間、業界体質はあらゆる面で旧態依然としてきた」と指摘する。国内市場の縮減に伴い、生産量、販売方針などさまざまな面で従来の「個別最適」という観点では産業そのものの存立すら危うくなっているとみられる。こうした現状を踏まえると、あらためて「全体最適」へ転換することが急務となっているようだ。
川上耕二・日本アルミニウム合金協会会長(日軽エムシーアルミ社長)は5月、総会後の記者会見で「二次合金需要が07年最盛期まで回復するとは考えにくい。今年後半に需要が10―20%戻った後は頭打ちとなるのではないか」との見解を示した。足元の国内生産状況が20%回復すれば、07年比70%程度の水準になる。
日本アルミニウム合金協会によると、07年度の国内アルミ二次合金需要実績は、181万6412トンと過去最高を記録した。このうち30万―35万トンが中国などからの輸入塊、国内メーカーの生産量は150万トン前後だったと推定される。自動車メーカーは現地調達比率を高める方針ですでに動いていることから、多くの関係者が「国内二次合金需要は決して07年の水準には戻らず10年以降も100万トン程度で推移するのではないか」と予測する。
過去40年間の日本のアルミスクラップ事情を概観すると、1970年代に日本の合金メーカーはアルミ原料の8―9割を海外からの輸入に依存していた。80年代になると国内発生も年を追うごとに増加。これにより、輸入原料の比率は漸減し国産と輸入の使用比率が肩を並べた。90年代に入ると、国内発生原料の割合が輸入原料を徐々に上回り、この10年ほどは国産アルミスクラップが原料に占める比率は80%前後とみられる。
では、今後の国内アルミスクラップ発生量はどうなるのか。建築解体物件から発生するビス付きサッシは、ビルなどの建材に使用されてからスクラップとして発生するまで約30年を要するとされる。従って、今後も一定レベルの発生増が見込まれる。一方で機械鋳物や自動車部品工場などから発生する合金削り粉などの発生量は、国内自動車販売台数の減少などの影響で引き続き緩やかに減少する可能性が高い。こうした状況を踏まえると、当面の国内アルミ原料発生量に大きな変動はなく、年約100万トン前後にとどまる公算が大きいとみられる。
このような国内外のアルミスクラップ事情を踏まえると、日本の二次合金メーカーの進むべき方向は、国産アルミスクラップの使用比率を一段と高め、割高な輸入原料の調達を必要最低限に絞ることで、原料コストの削減を図ることになりそうだ。国産原料の使用量を増やしながら「ここ数年の年産140万―150万トン体制から100万トン体制に移行を図ることで、生産面における体質改善が進む」(合金メーカー)とみられる。
体質改善図る アルミ二次合金業界/上
最適生産量へのシフト 国産スクラップ利用増加
日刊産業新聞 2009年06月03日最近、アルミ二次合金業界において、昨秋からの需要急減を「業界体質を改善する千載一遇のチャンス」ととらえる見方が広がり始めている。関係者は「この40年間、業界体質はあらゆる面で旧態依然としてきた」と指摘する。国内市場の縮減に伴い、生産量、販売方針などさまざまな面で従来の「個別最適」という観点では産業そのものの存立すら危うくなっているとみられる。こうした現状を踏まえると、あらためて「全体最適」へ転換することが急務となっているようだ。
▼国内生産100万トンを前提に
今後、国内メーカーの二次合金生産量は年間100万トンにとどまるとの予測が出ている。これは、今後の国内需要量が07年度ピーク時と比較し、70%程度のレベルに落ち着くとの予想に基づいて打ち出された数字だ。川上耕二・日本アルミニウム合金協会会長(日軽エムシーアルミ社長)は5月、総会後の記者会見で「二次合金需要が07年最盛期まで回復するとは考えにくい。今年後半に需要が10―20%戻った後は頭打ちとなるのではないか」との見解を示した。足元の国内生産状況が20%回復すれば、07年比70%程度の水準になる。
日本アルミニウム合金協会によると、07年度の国内アルミ二次合金需要実績は、181万6412トンと過去最高を記録した。このうち30万―35万トンが中国などからの輸入塊、国内メーカーの生産量は150万トン前後だったと推定される。自動車メーカーは現地調達比率を高める方針ですでに動いていることから、多くの関係者が「国内二次合金需要は決して07年の水準には戻らず10年以降も100万トン程度で推移するのではないか」と予測する。
▼国産アルミスクラップ比率80%前後
加えて、原料となるアルミスクラップの国内事情を踏まえても、二次合金メーカーにとって採算に見合う最適な生産量は年100万トンとの見方が有力だ。日本アルミニウム合金協会の統計資料や複数の関係者の話を総合すると、アルミスクラップの国内発生量は、この10年ほど年100万トン前後だったと推定される。過去40年間の日本のアルミスクラップ事情を概観すると、1970年代に日本の合金メーカーはアルミ原料の8―9割を海外からの輸入に依存していた。80年代になると国内発生も年を追うごとに増加。これにより、輸入原料の比率は漸減し国産と輸入の使用比率が肩を並べた。90年代に入ると、国内発生原料の割合が輸入原料を徐々に上回り、この10年ほどは国産アルミスクラップが原料に占める比率は80%前後とみられる。
では、今後の国内アルミスクラップ発生量はどうなるのか。建築解体物件から発生するビス付きサッシは、ビルなどの建材に使用されてからスクラップとして発生するまで約30年を要するとされる。従って、今後も一定レベルの発生増が見込まれる。一方で機械鋳物や自動車部品工場などから発生する合金削り粉などの発生量は、国内自動車販売台数の減少などの影響で引き続き緩やかに減少する可能性が高い。こうした状況を踏まえると、当面の国内アルミ原料発生量に大きな変動はなく、年約100万トン前後にとどまる公算が大きいとみられる。
▼海外アルミ原料事情と国内メーカーの今後
国内メーカーが不足分を輸入している欧米諸国のアルミ原料やロシア産アルミ再生塊(AK5M2)は、日本産スクラップと比較し今まで以上に割高な原材料となる可能性が高い。これは中国需要の拡大や、予想されるインドなど経済成長国の台頭で、需要が大幅に伸びるため、集荷競争の激化が避けられないからだ。このような国内外のアルミスクラップ事情を踏まえると、日本の二次合金メーカーの進むべき方向は、国産アルミスクラップの使用比率を一段と高め、割高な輸入原料の調達を必要最低限に絞ることで、原料コストの削減を図ることになりそうだ。国産原料の使用量を増やしながら「ここ数年の年産140万―150万トン体制から100万トン体制に移行を図ることで、生産面における体質改善が進む」(合金メーカー)とみられる。