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韓国の鉄鋼業はPOSCOが創業以来の減産に踏み切るなど、世界的な景気悪化を受けて、調整局面に入っている。国内総生産(GDP)が通貨危機の1998年以来のマイナス成長に転じる予測も出ている。ウォン安による資金調達難や産業の活動水準低下など向かい風のなか、新設備が次々に立ち上がる。韓国鉄鋼業の需給見通しや課題をPOSCO経営研究所(POSRI)の金峻漢所長に聞いた。
――韓国の鉄鋼産業の需給をどうみるか。
「韓国経済のGDP成長率は昨年4四半期はマイナス4%になったと推測している。今年のGDP成長率はマイナスに転じる可能性もあると思う。韓国を含めて世界が景気浮揚対策を進めている。その効果が発揮されれば、下半期からは景気が回復するのではないかと思う。韓国の昨年の自動車生産は約400万台くらいだ。今年は生産量が10%以上減少すると思う。韓国の造船企業は3、4年先くらいまでの受注量を持っているので、今とほぼ同じ建造量が3、4年間続くと思う。昨年の造船建造量は1400万グロストンだ。今年は造船建造量が10%くらい増加すると思う。1500万GTを若干上回る可能性がある。建設部門だが、韓国は他の国と同じように社会間接資本投資を増やす。建設部門の住宅部門の景気は悪くなると思う。民間土木部門を含めた土木部門全体では昨年より10%以上増える。建設専門機関の見通しによれば、今年の建設投資金額は120兆ウォンくらいだ。昨年より約2%増の予測だ。家電産業は今年も10%くらいのマイナス成長が予想されている」
「主な需要産業の家電、自動車、機械で景気後退が続くし、造船産業を除いて他の産業はおおむねすべて需要後退が予想される。鉄鋼需要も今年は減少傾向が続くと思う。鋼材の見掛け消費は昨年に比べてマイナス10%減少した5400万トンくらい。粗鋼生産も10%程度減少の5800万トンが予想されている。輸出は今年は10%以上減の1800万トン程度になると思う。昨年の輸入量は3000万トンくらいだったが、今年は2500万トンくらいに減少すると思う。輸出入の見通しは為替レートとか世界的な景気環境で変動する可能性がある」
――鉄スクラップはどうか。
「韓国の自給率は70%くらいだ。自給率が低いから、細かい見通しはやっていない」
――今年の鉄鋼産業の設備投資予想は。
「POSCOの国内向けの設備投資が約6兆ウォン。現代製鉄は高炉建設のために今年は1兆5000億ウォン投資する。東国製鋼は5000億ウォン、東部製鉄が3500億ウォンくらいを投資する計画だ。今年、韓国鉄鋼業全体の設備投資金額は10兆ウォン程度。史上最大の投資金額になる」
――昨年は。
「7兆ウォンくらいだ。すでに計画した投資だからそのまま投資すると思う。他の国の鉄鋼産業と違って韓国業界の設備投資が増えるのは、一貫製鉄を建設しているのが主な原因だ。POSCOが高炉巻き替え時期を生産調整に合わせて計画より前倒しするのが一つの理由だ」
――韓国鉄鋼業の今年の主要テーマをどうみているか。
「まずは国内需要と輸出量が減少するから、それに対応して生産をどう調節するかだ。POSCOは昨年12月から減産体制に入った。1四半期はPOSCOも減産トレンドが避けられないと思う。他の電炉企業も減産している。2つ目は鉄筋や鋼管など製品の需要減少で鉄鋼業界の構造改変が課題となる」
――企業の統合再編ということか。
「そういう可能性がある。世界全体の現象だと思う。3つ目は中長期的な経済指標によって鉄鋼産業がどう対応するかが課題だ。なかでも為替レートが主な影響要因になる。今、韓国のウォンのレートがあまり良くないから中国の鋼材輸入を防ぐ一つの要因になっている。でも下半期にはウォンの価値が上がって中国の鋼材輸入が増える可能性がある。中国鋼材の輸入量増加に対応して韓国鉄鋼業界がどう対応するかが課題となる。3つのポイントが今年の韓国鉄鋼産業の一番の関心事だ」
――中長期で現代製鉄の高炉一貫製鉄をはじめ、新設備が立ち上がる。韓国の鉄鋼需要は長期でそれほど伸びないとすると過剰設備の心配はないか。
「今、韓国の一人当たりの鉄鋼消費量はほぼ1トンで、これは世界の最高水準だ。今の段階でピークだと思う。昨年は鉄鋼需給のなかで輸入量が輸出量より1000万トンくらい多かった。鋼材的にはプラスマイナスがあると思うが、粗鋼的には国内生産量より国内需要量が多いので現代製鉄の設備が稼働しても国内需要でカバーできると思う。2、3年先を見れば、生産量の増加によって、韓国の鉄鋼業界全体で需給パターンをどう調節するかは一つの課題になると思う。輸出量が増えるか、輸入量を減らすか、生産量を調整するか、需給全体のパターンを調節するのが課題になる。韓国は人口のピークが2020年くらいになると思う。韓国の産業構造を見れば鉄鋼多消費産業の比率が高い。今のような一人当たりの鉄鋼消費量が続く可能性があると思う」
逆風に立ち向かう 韓国鉄鋼業の課題
「生産調整」「構改」急務/業界挙げて中国材対応
POSCO経営研究所 金峻漢所長
日刊産業新聞 2009年02月12日韓国の鉄鋼業はPOSCOが創業以来の減産に踏み切るなど、世界的な景気悪化を受けて、調整局面に入っている。国内総生産(GDP)が通貨危機の1998年以来のマイナス成長に転じる予測も出ている。ウォン安による資金調達難や産業の活動水準低下など向かい風のなか、新設備が次々に立ち上がる。韓国鉄鋼業の需給見通しや課題をPOSCO経営研究所(POSRI)の金峻漢所長に聞いた。
――韓国の鉄鋼産業の需給をどうみるか。
「韓国経済のGDP成長率は昨年4四半期はマイナス4%になったと推測している。今年のGDP成長率はマイナスに転じる可能性もあると思う。韓国を含めて世界が景気浮揚対策を進めている。その効果が発揮されれば、下半期からは景気が回復するのではないかと思う。韓国の昨年の自動車生産は約400万台くらいだ。今年は生産量が10%以上減少すると思う。韓国の造船企業は3、4年先くらいまでの受注量を持っているので、今とほぼ同じ建造量が3、4年間続くと思う。昨年の造船建造量は1400万グロストンだ。今年は造船建造量が10%くらい増加すると思う。1500万GTを若干上回る可能性がある。建設部門だが、韓国は他の国と同じように社会間接資本投資を増やす。建設部門の住宅部門の景気は悪くなると思う。民間土木部門を含めた土木部門全体では昨年より10%以上増える。建設専門機関の見通しによれば、今年の建設投資金額は120兆ウォンくらいだ。昨年より約2%増の予測だ。家電産業は今年も10%くらいのマイナス成長が予想されている」
「主な需要産業の家電、自動車、機械で景気後退が続くし、造船産業を除いて他の産業はおおむねすべて需要後退が予想される。鉄鋼需要も今年は減少傾向が続くと思う。鋼材の見掛け消費は昨年に比べてマイナス10%減少した5400万トンくらい。粗鋼生産も10%程度減少の5800万トンが予想されている。輸出は今年は10%以上減の1800万トン程度になると思う。昨年の輸入量は3000万トンくらいだったが、今年は2500万トンくらいに減少すると思う。輸出入の見通しは為替レートとか世界的な景気環境で変動する可能性がある」
――鉄スクラップはどうか。
「韓国の自給率は70%くらいだ。自給率が低いから、細かい見通しはやっていない」
――今年の鉄鋼産業の設備投資予想は。
「POSCOの国内向けの設備投資が約6兆ウォン。現代製鉄は高炉建設のために今年は1兆5000億ウォン投資する。東国製鋼は5000億ウォン、東部製鉄が3500億ウォンくらいを投資する計画だ。今年、韓国鉄鋼業全体の設備投資金額は10兆ウォン程度。史上最大の投資金額になる」
――昨年は。
「7兆ウォンくらいだ。すでに計画した投資だからそのまま投資すると思う。他の国の鉄鋼産業と違って韓国業界の設備投資が増えるのは、一貫製鉄を建設しているのが主な原因だ。POSCOが高炉巻き替え時期を生産調整に合わせて計画より前倒しするのが一つの理由だ」
――韓国鉄鋼業の今年の主要テーマをどうみているか。
「まずは国内需要と輸出量が減少するから、それに対応して生産をどう調節するかだ。POSCOは昨年12月から減産体制に入った。1四半期はPOSCOも減産トレンドが避けられないと思う。他の電炉企業も減産している。2つ目は鉄筋や鋼管など製品の需要減少で鉄鋼業界の構造改変が課題となる」
――企業の統合再編ということか。
「そういう可能性がある。世界全体の現象だと思う。3つ目は中長期的な経済指標によって鉄鋼産業がどう対応するかが課題だ。なかでも為替レートが主な影響要因になる。今、韓国のウォンのレートがあまり良くないから中国の鋼材輸入を防ぐ一つの要因になっている。でも下半期にはウォンの価値が上がって中国の鋼材輸入が増える可能性がある。中国鋼材の輸入量増加に対応して韓国鉄鋼業界がどう対応するかが課題となる。3つのポイントが今年の韓国鉄鋼産業の一番の関心事だ」
――中長期で現代製鉄の高炉一貫製鉄をはじめ、新設備が立ち上がる。韓国の鉄鋼需要は長期でそれほど伸びないとすると過剰設備の心配はないか。
「今、韓国の一人当たりの鉄鋼消費量はほぼ1トンで、これは世界の最高水準だ。今の段階でピークだと思う。昨年は鉄鋼需給のなかで輸入量が輸出量より1000万トンくらい多かった。鋼材的にはプラスマイナスがあると思うが、粗鋼的には国内生産量より国内需要量が多いので現代製鉄の設備が稼働しても国内需要でカバーできると思う。2、3年先を見れば、生産量の増加によって、韓国の鉄鋼業界全体で需給パターンをどう調節するかは一つの課題になると思う。輸出量が増えるか、輸入量を減らすか、生産量を調整するか、需給全体のパターンを調節するのが課題になる。韓国は人口のピークが2020年くらいになると思う。韓国の産業構造を見れば鉄鋼多消費産業の比率が高い。今のような一人当たりの鉄鋼消費量が続く可能性があると思う」
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