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世界的な景気減速に伴う自動車、IT関連産業などの急速な景況不振から、国内の非鉄金属需要は昨秋から激減した。電線、伸銅メーカーはこの1月からリサイクル原料である銅スクラップの購入量を大幅に削減。中国の急速な経済成長を背景に年々増加してきた銅スクラップ輸出も足元は急ブレーキがかかり、銅リサイクル業界全体に閉そく感が立ち込める。銅スクラップ取り扱い各社には、従来の拡大路線から「土台固め」にスタイルを転換してこの不況を乗り切ろうとする動きが広がっている。
売り抜ける間もない急速な下げで、銅スクラップを取り扱う原料問屋は手持ち在庫の膨大な評価損を被った。年商数億円規模の原料問屋は「10、11月は単月で5000万円程度の赤字」と話し、年前半の黒字を食いつぶしたところが少なくなかった。年商100億円規模の大手スクラップ輸出業者では5億―10億円程度の損失を計上したとの話も複数寄せられた。
相場高に沸いた過去数年の上げ潮ムードが終えんを迎えた。それでも相場の変動による一時的な評価損であれば、「この数年間に蓄えた内部留保で何とかまかなえる」(都内の直納筋)。多くの原料問屋が05年から08年までに過去最高益を上げられたためだ。
建値は31万円まで落ち込むと1月は35万円まで反発した。下値余地に限りが見えたことで相場の下げによる評価損の心配は一服した。90年代は銅建値20万円台が続いたことを考えれば、足元の相場水準でも商いは続けられるのだろう。
銅スクラップを原料に使用する電線、伸銅メーカーはこの1―3月期、原料問屋と結ぶ銅スクラップの長期契約購入数量を10―12月期比で3―5割カットした。銅箔、リン青銅メーカーなどに至っては、8割強削減したところもある。
関東の大手伸銅が「10月以降、新規の製品受注が半分以下に激減した」と語るように、多くの銅製品需要が景気の減速に合わせて一気に冷え込んだためだ。船舶向けのアルミニウム青銅など一部の品種を除いてメーカーは銅製品の減産を余儀なくされ、これに伴い原料消費量が大幅に減少している。
一方、銅スクラップ輸出は国内流通に先駆けて昨秋から停滞した。
日本の銅スクラップ輸出はその9割前後が中国向け。中国は急速な経済発展により銅スクラップ需要が右肩上がりに増加し、日本からの輸出量は年々増加した。
財務省の輸出通関統計によると、日本の銅スクラップ輸出量は02年の23万7560トンから2年後の05年には42万4326トンへ8割近い増加を見せ、07年まで40万トン台の高水準を維持した。
しかし、世界的な景気減速の波は中国も直撃。中国のスクラップ取扱業者は昨秋、相場が急落すると即座に買いを止めた。大手輸出業者は、「7月まで月間1万トンの取り扱いがあったが、9、10月は8000トン、11月は6000トンまで落ちた。この1―2月は4000トン程度になる見込みだ」と語る。
輸出通関で10月は前年同月比32%減の2万8175トン、11月も30%減の2万1795トンとなり統計にもはっきりと表れた。08年1―6月の累計輸出量は21万4882トンで同期間として過去最高だったが、通年では04年以来4年ぶりに40万トンを割り込む可能性が高い。
閉そく感漂う 銅リサイクル/<上>
中国向け秋以降急減/国内流通、年明け底冷え
日刊産業新聞 2009年01月22日世界的な景気減速に伴う自動車、IT関連産業などの急速な景況不振から、国内の非鉄金属需要は昨秋から激減した。電線、伸銅メーカーはこの1月からリサイクル原料である銅スクラップの購入量を大幅に削減。中国の急速な経済成長を背景に年々増加してきた銅スクラップ輸出も足元は急ブレーキがかかり、銅リサイクル業界全体に閉そく感が立ち込める。銅スクラップ取り扱い各社には、従来の拡大路線から「土台固め」にスタイルを転換してこの不況を乗り切ろうとする動きが広がっている。
潮目が変わった2008年
08年夏から年末にかけての相場急落は、誰も予想し得ないものだった。 ロンドン金属取引所(LME)銅相場は7月にトン8985ドル(現物セツルメント)の史上最高値を記録。国内銅建値は前年10月以来となる100万円を回復した。 しかし、米国発のサブプライムローン問題を背景とした金融市場の混乱が商品市場にも波及したことでその後は下落の一途。LME銅は年末に3000ドルを割り込み、建値は31万円に、銅スクラップの代表品種である1号銅線相場は高値時のキロ900円から260円へそれぞれ3分の1以下になった。売り抜ける間もない急速な下げで、銅スクラップを取り扱う原料問屋は手持ち在庫の膨大な評価損を被った。年商数億円規模の原料問屋は「10、11月は単月で5000万円程度の赤字」と話し、年前半の黒字を食いつぶしたところが少なくなかった。年商100億円規模の大手スクラップ輸出業者では5億―10億円程度の損失を計上したとの話も複数寄せられた。
相場高に沸いた過去数年の上げ潮ムードが終えんを迎えた。それでも相場の変動による一時的な評価損であれば、「この数年間に蓄えた内部留保で何とかまかなえる」(都内の直納筋)。多くの原料問屋が05年から08年までに過去最高益を上げられたためだ。
建値は31万円まで落ち込むと1月は35万円まで反発した。下値余地に限りが見えたことで相場の下げによる評価損の心配は一服した。90年代は銅建値20万円台が続いたことを考えれば、足元の相場水準でも商いは続けられるのだろう。
重くのしかかる取扱量の減少
ただ足元の状況が過去の相場安時代と大きく異なるのは、需要減退により流通量が大幅に減少していることだ。銅スクラップを原料に使用する電線、伸銅メーカーはこの1―3月期、原料問屋と結ぶ銅スクラップの長期契約購入数量を10―12月期比で3―5割カットした。銅箔、リン青銅メーカーなどに至っては、8割強削減したところもある。
関東の大手伸銅が「10月以降、新規の製品受注が半分以下に激減した」と語るように、多くの銅製品需要が景気の減速に合わせて一気に冷え込んだためだ。船舶向けのアルミニウム青銅など一部の品種を除いてメーカーは銅製品の減産を余儀なくされ、これに伴い原料消費量が大幅に減少している。
一方、銅スクラップ輸出は国内流通に先駆けて昨秋から停滞した。
日本の銅スクラップ輸出はその9割前後が中国向け。中国は急速な経済発展により銅スクラップ需要が右肩上がりに増加し、日本からの輸出量は年々増加した。
財務省の輸出通関統計によると、日本の銅スクラップ輸出量は02年の23万7560トンから2年後の05年には42万4326トンへ8割近い増加を見せ、07年まで40万トン台の高水準を維持した。
しかし、世界的な景気減速の波は中国も直撃。中国のスクラップ取扱業者は昨秋、相場が急落すると即座に買いを止めた。大手輸出業者は、「7月まで月間1万トンの取り扱いがあったが、9、10月は8000トン、11月は6000トンまで落ちた。この1―2月は4000トン程度になる見込みだ」と語る。
輸出通関で10月は前年同月比32%減の2万8175トン、11月も30%減の2万1795トンとなり統計にもはっきりと表れた。08年1―6月の累計輸出量は21万4882トンで同期間として過去最高だったが、通年では04年以来4年ぶりに40万トンを割り込む可能性が高い。