トップ > 記事特集

2007年10大ニュース/非鉄金属

資源外交が本格化/銅建値105万円 国際市況は最高値圏

日刊産業新聞 2007/12/21

(1) 甘利経産相が南ア歴訪
(2) 製錬各社、鉱山権益を拡充
(3) 銅建値105万円 最高値を更新
(4) LME価格で亜鉛と鉛逆転
(5) 製錬8社が人材育成で協調
(6) 黄銅棒メーカーの再編進む
(7) 銅板条メーカー統合相次ぐ
(8) 電線、自動車関連を強化
(9) 通信向け電線 国内伸び悩む
(10) スクラップ盗難 社会問題に

 (1)甘利経産相が南ア歴訪

  11月中旬、甘利明経産相は南ア、ボツワナ両国を経済産業大臣として史上初めて訪問し、戦略的互恵関係を構築しながらレアメタルなど確保のため資源外交を展開した。
  南アとはレアアースの共同調査、バイオリーチングの共同研究など具体的な協力案件に合意し、ボツワナではJOGMECによる地質リモートセンシング・プロジェクトを実施することになった。南部アフリカ開発共同体ともレアメタルを軸とした経済関係を強化。

 (2)製錬各社、鉱山権益を拡充

  非鉄製錬メーカーは鉱山の権益拡充を進めている。銅買鉱条件の悪化を理由に9月中間期決算で減益企業が出るなど川上の資源に利益が集中、製錬事業の収益環境が厳しくなっているためだ。
  パンパシフィック・カッパーはチリでカセロネス鉱床の経済性調査と並行して、ペルーのケチュア鉱床の権益も取得した。このほか三菱マテリアルがフィジーで日鉄鉱業との共同探鉱を、住友金属鉱山もニッケル資源の開発を積極化させた。

 (3)銅建値105万円 最高値を更新

  銅建値は5月7日にトン105万円の史上最高値を更新。2月初旬の本年安値69万円からわずか3カ月で52%上昇した。LME相場は8225ドルと建値が初めて100万円を記録した前年5月の高値より563ドル低かったが、為替の円安ドル高に押し上げられた。有力な需要国である中国は1―4月で銅地金を前年の約80%にあたる65万トン輸入。旺盛な需要を背景にLME銅在庫は2月の21万トン台から30%減少した。需給ひっ迫感から投機資金も流入し、銅相場は急速に上昇した。

 (4)LME価格で亜鉛と鉛逆転

  LMEで亜鉛と鉛の価格が逆転した。鉛は中国で鉛バッテリーを使う電気自転車の需要が旺盛で、供給面では豪州からの一部の出荷が環境汚染などを背景に停止。さらに中国の輸出規制強化により、10月15日にトン3980ドルの過去最高値を記録するなど高騰した。
  亜鉛は価格高騰を背景に遅れていた鉱山開発が進展。08年の供給が余剰に転じる見通しとなったことから、8月24日に年初比27%安い3100ドルに下落。同日の鉛は3265ドルで価格は逆転した。

 (5)製錬8社が人材育成で協調

  非鉄製錬各社が海外で資源開発を進める中で課題になっているのが人材の確保。現在、国内で操業している非鉄金属鉱山は鹿児島県にある住友金属鉱山の菱刈鉱山だけ。各社は出資先の海外鉱山などに人材を派遣して現場教育を行っているが、不足感は否めない。
  製錬8社は合計5億円出資して国際資源大学校の機能拡充に乗り出した。9月に2週間の研修を実施。来年は2カ月程度の研修を行い、鉱山現場での即戦力を育成する。

 (6)黄銅棒メーカーの再編進む

  サンエツ金属は10月、住友軽金属工業の完全子会社で黄銅棒メーカーの新日東金属を統合した。サンエツの黄銅棒国内シェアは21%から33%に増加し、キッツグループを抜いて最大手となった。一方、同じく10月には日本伸銅株を12・2%まで買い増して筆頭株主になったが、日本伸銅はこれに強く反発。サンエツは買い増しの具体的な目的を明らかにしないまま11月に出資比率を15・39%まで高めた。その後さらに買い増しを行っているかは分かっていない。

 (7)銅板条メーカー統合相次ぐ

  規模拡大によって競争力や合金開発力を高めるのが主な狙い。三菱マテリアルは10月、三菱伸銅と三宝伸銅工業を株式交換によって完全子会社化すると発表した。来年4月には月産能力1万5000トン、業界全体の約2割を占める巨大な伸銅メーカーが誕生する。DOWAホールディングスの金属加工子会社、DOWAメタルテックも12月、ヤマハの伸銅製造子会社などの経営権を正式に取得。10年には生産量を現在より20%増やす計画だ。

 (8)電線、自動車関連を強化

  電線メーカーは自動車関連事業を強化する動きが目立った。住友電気工業は自動車用ワイヤハーネス製造の住友電装を完全子会社化、古河電気工業は自動車部品事業を古河ASに集約し、やはり完全子会社化した。フジクラ、三菱電線工業は海外生産拠点の拡充に注力、日立電線はブレーキホースなど独自製品の拡販を進めた。自動車軽量化のニーズを受けた新製品開発も盛んで、07年はアルミニウム電線の採用がとくに耳目を集めた。

 (9)通信向け電線 国内伸び悩む

  電線業界では情報通信関連製品の国内需要が伸び悩んだ。日本電線工業会の統計によると光製品の4―9月国内出荷数量は前年同期比8・8%増、うち内需は11・2%減だった。NTTは11月初め、2010年度の光回線加入者数目標を当初の3000万世帯から2000万世帯に引き下げた。大手電線メーカーでは光ネットワーク機器などの国内出荷数が減り、07年度上半期の収益にブレーキをかけた。一方、海外需要は好調に推移した。

 (10)スクラップ盗難 社会問題に

  銅、ニッケル、鉛が最高値を更新するなど非鉄金属価格の高騰を背景に非鉄金属スクラップの盗難が多発し、社会問題として取りざたされた。工事現場の銅電線や公園のステンレス製車止めのほか、線香皿や釣鐘といったものの盗難事件まで発生。盗難品を購入した原料問屋に警察の捜索が入る事例もあった。3月には経産省が8事業者団体に対して盗難品流通防止の周知徹底を要請。原料問屋のセキュリティー強化なども進み、盗難は年後半にかけて減少した。