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ニッケル マネーゲームに終止符

レンディング規制拡大から30%超下落

日刊産業新聞 2007/7/23

 ニッケルのマネーゲームに終止符が打たれた。ロンドン金属取引所(LME)の現物価格は5月16日の過去最高値トン5万4200ドルから40%下落。現物価格が先物価格を一時4000ドルも上回っていた異常な逆ザヤ状態も解消した。投機主導から実需を反映した適性水準に修正しつつあるニッケル。その背景と今後の展開を探った。

  ニッケル現物価格は6月6日から7日にかけて、3895ドル(8%)という過去最大の下げ幅を記録した。その後1カ月間の下落率も30%を超え、足元は8カ月ぶりの安値圏で推移している。

  きっかけはLMEが6月6日に発表した、レンディング規制の変更だ。レンディングとは一般的に、先物の期近を売って期先を買う取引のこと。

  ただ、相場が現物需給のひっ迫感を示す逆ザヤ状態のとき、期近の売り建玉は、期近の大口買い建玉保有者によるスクイーズ(買占め)の標的になる危険性が高い。

  例えばA社がヘッジのために現物を持たないまま期近にトン4万ドルの売り建玉を保有した。A社は2日後の受渡日までに現物を手当てできなければ、契約不履行になる。

  しかし、期近の大口買い建玉保有者が意図的な価格上昇を狙い売り惜しみをした結果、2日後の受渡日の価格は5万ドルにまで上昇することになる。

  A社は契約不履行を回避するため、ひとまず5万ドルで売り建玉を買い戻す。1万ドルの損失を確定させると同時にもう1日先の先物で、ヘッジ売りを建てる必要がある。大口買い建玉保有者はこの相対としてレンディングする。

  大口の買い建玉保有者のスクイーズにより、これが繰り返されると、A社の売りヘッジは際限なく減価していくことになる。

  LMEにはこうしたスクイーズを防ぐための規制が存在する。特定の1社が保有するワラント(倉荷証券)と買い建玉が、総在庫量の50%以上を占める場合、その保有比率に応じて、該当する1社の享受できる1日当たりの逆ザヤ幅は最大、現物価格の0・5%に制限される。

  スクイーズを仕掛けている買い建玉保有者は通常、無限大の逆ザヤ益を確保できる。しかし、規制対象になると1日当たり最大でも5万ドルの0・5%相当、250ドルしか利益が出ない。一方のA社は250ドルの損失で済む。

  LMEは今回の規制変更で、1社のスクイーズではなく、トレーダー、投資銀行、ヘッジファンドなどの複数社が共謀してスクイーズを行っていたと判断。事態の沈静化を図るため、規制対象を複数社が共謀してスクイーズを行う場合の規制に変更した。

▼実需買いは3万ドル近辺か

ニッケル現物価格は5月16日の最高値から、規制が変更される6月6日にかけて10%調整していた。すでに実需とはかけ離れた相場形成になっていたほか、最大用途のステンレス需要が一服。取引所在庫も増加傾向にあったためだ。

  「スクイーズを仕掛けていた連中は利益確定時期を探っていた」(大手商社)こともあり、LMEの規制変更は投機筋の格好の売り材料となった。

  今回の規制対象から外れていた投機筋も、規制変更による相場修正局面で利益を得るため、売り圧力を強めたもようだ。

  これによりニッケル相場は1カ月間で30%以上も急落。一時は4000ドルあった逆ザヤも現地16日には一時的だが1年ぶりに解消した。マネーゲームに終止符が打たれたニッケル相場は、実需を反映した適性水準へと修正しつつある。

  目下のところ業界関係者の関心はどの水準で下げ止まるのか。ある大手商社のLME担当者は「3万から3万5000ドル近辺まで実需の裏付けがあった」と指摘しており、実需の買い出動が期待できる3万ドル近辺が当面の底となりそうだ。

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