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2006年10大ニュース/軽金属

二次合金で再編進む/市況急騰で値上げ相次ぐ

日刊産業新聞 2006/12/22

(1) 二次合金業界で再編加速
(2) LMEアルミ相場が高騰
(3) 露で世界最大メーカー誕生
(4) アルミ缶リサイクル率90%超す
(5) 古河スカイ、ギリシアに合弁
(6) 神鋼、アルコアと合弁解消
(7) アルコニックスが株式上場
(8) アルミナなど海外でFS相次ぐ
(9) 三菱アルミが仕上圧延機新設
(10) トステム社長突然の交代

(1)二次合金業界で再編加速

  アルミ二次合金大手のサミットアルミと昭和軽合金が本年7月に事業統合し、それに続き日本軽金属とエム・シー・アルミも来年4月に合金事業統合で合意した。合金トップの大紀アルミニウム工業所を筆頭に、2位以下の大手軽圧・商社系メーカーの再編が加速した。サミット昭和アルミは売上高400億円、年間生産・販売量は、18万トンの規模に達する。一方、日軽エムシーアルミは年産能力31万トンで、海外も含めた生産拠点を活用する。

(2)LMEアルミ相場が高騰

  ロンドン金属取引所(LME)のアルミ相場が、5月に一時3200ドル台を付けるなど、市況は強含みで推移した。アルミ地金の高騰を受け、アルミ板・押出・箔を含む軽圧品をはじめ、二次合金やスクラップ、アルミ建材など、軒並み値上げが相次いだ。為替が円安基調で推移したこともあり、新塊を筆頭に相場を押し上げた。大手商社の見通しによると、中長期的には需給緩和で相場が下落すると見るが、しばらく底堅い状態を続けそうだ。

(3)露で世界最大メーカー誕生

  ロシアのアルミメーカーであるルサールとスアル、スイスの資源会社であるグレンコアの3社が統合することで合意した。新会社はアルミメーカーで世界最大。今後は、ロンドン証券取引所への上場をめざす。統合会社はボーキサイト採掘、アルミナ・アルミ製錬および箔製造と、川上から川下までをカバー。日本へのインパクトは当面、直接的にないと見られるが、大手の寡占化は中期的に影響を与えそうだ。

(4)アルミ缶リサイクル率90%超す

  2005年度の飲料用アルミ缶リサイクル率は、スチール缶を上回る91・7%と過去最高を記録し、初の90%台に到達した。アルミ市況の高騰で、回収活動が活発化したことに加え、相場上昇で輸出が控えられ、国内における流通段階のスクラップ在庫が圧縮したことから、リサイクル率を押し上げた。容器包装リサイクル法の見直しが行われるなか、改めてアルミ缶の「リサイクルの優等生」ぶりが際立つ結果となった。

(5)古河スカイ、ギリシアに合弁

  古河スカイはバルカン地域最大の鉄鋼・非鉄金属総合メーカーであるビオハルコ社グループのアルミ圧延会社「エルバル社」と共同で事業を進めることとし、ギリシアに合弁で自動車熱交換器用板材の販売会社を設立することで合意した。売上高は、2010年に約60億円を見込む。欧州地域においては今後、自動車需要の拡大が予想されることから、熱交用板材事業に積極的に対応。日系ユーザーへのグローバルな対応と、欧州地域での顧客開拓を進めていく。

(6)神鋼、アルコアと合弁解消

  神戸製鋼所は、米アルコア社と折半出資する輸送機材用アルミ板製造・販売会社「神鋼アルコア輸送機材」と「アルコアコウベトランスポーテーションプロダクツ」との合弁事業を、来年1月で解消する。神鋼とアルコアは、1990年の戦略提携合意後、翌91年に缶材の合弁「神鋼アルコアアルミ」設立を行うなど、約15年にわたって関係を深めてきた。しかし、当初見込んだ需要拡大や投資に対するリターンがないことから、それぞれの道を歩むことになった。

(7)アルコニックスが株式上場

  アルミをはじめとする非鉄金属商社「アルコニックス」は4月24日、ジャスダック証券市場に株式上場した。旧日商岩井(現双日)からMBOで2001年に独立後、上場をめざして取り組んできたが、5年を経て当初計画を達成した。中期目標としては、2008年度に純利益7億円超を掲げ、資本の充実も図っていく。また、事業基盤をなすアルミ・銅の取引維持・拡大に加え、成長著しいレアメタルを含む電子・機能材などを強化する。

(8)アルミナなど海外でFS相次ぐ

  昭和電工は丸紅など4社共同でインドネシアにおいて、アルミナ工場を建設する事業性評価(FS)開始で合意。また、日本軽金属は、双日ほか4社でベトナムでケミカル用水酸化アルミニウム工場建設でFSを行うことを決めた。国内メーカーは現在、ボーキサイト残渣(BR)を海洋投入で処分しているが、遅くとも2015年までに終了する考えを示している。このため、これに対応した新しい事業展開を打ち出した。

(9)三菱アルミが仕上圧延機新設

  三菱アルミニウムは、板製品の要求品質高度化対応と生産合理化を図るため、熱間仕上圧延機新設を中心とする設備投資を行う。工期は約3年。投資額は圧延機本体をはじめ付帯設備や建屋更新などを合わせ70億円を見込む。同社は来年度までの3カ年新中期経営計画を推進中で、アルミ板事業は生産能力拡大とリニューアルプランの検討を実施。今回の大型投資を最終的に決定し、リードタイム短縮や仕掛在庫減とコスト圧縮などをめざす。

(10)トステム社長突然の交代

  アルミサッシ最大手のトステムの社長に、小川泰彦専務が就任した。西村伸一郎前社長は、わずか1年で社長を退任した。この人事について、親会社で持ち株会社の水谷千加古・住生活グループ社長は「西村前社長と潮田健次郎前会長の価値観を埋め切れなかった」ことなどで、社長交代に至ったことを明らかにした。今後は、潮田洋一郎会長をはじめ飛田英一・住生活グループ副会長らが新社長をサポートし、今後の動静が注目される。