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アジアン・メタルマーケット 台湾編/<上>  鉄鋼需給

05年見掛け消費は減少

日刊産業新聞 2006/6/8

 台湾の鉄鋼業界にとって、2005年は環境変化の年だったといえる。鉄鋼製品市況は下半期から、大幅に下落し、多くの企業がその間の収益力が低下した。その余波は今年上半期まで影響を与えるのは確実な状況だ。また、国内産業の空洞化は歯止めがかかっておらず、鉄鋼の内需も頭打ちとなっており、中長期的には厳しい状況となるとの見方も出ている。そこで、転換の時期に入ったともいえる、台湾の鉄鋼市場、メーカーの動きなどをまとめた。

【止まらない空洞化】

  対中国投資は05年が前年比十数%減少に転じたが、00―04年にかけて増加の一途をたどった。投資金額(認可額)は02年が40億米ドル弱、03年が45億米ドル前後、04年には70億米ドル弱。これは台湾政府が01年以降、対中投資の産業項目を大幅に緩和した結果、台湾の各企業が中国の市場規模の大きさ、人件費の安さなどに魅力を感じ、積極的に大陸に工場進出をしたため。

  05年の対中投資の減少についてもエネルギーや材料の手当て、その価格不安、カントリーリスクを考慮したためで、逆に、ベトナムなど他国への投資が進んだ。結果、産業の空洞化は全体的には止まっていないのが実情だ。

  産業の空洞化に伴い、人材の流出も続いている。現在、台湾の人口は約2300万人強。一方、中国に長期滞在する台湾人は増加している。02年段階の中国での台湾人の長期滞在者は50万人前後だったが、昨年は120万人に達したといわれている。この人数は台湾の人口の5%強に相当する。

  鉄鋼関係者も「優秀な人材が中国だけでなく、米国などに出ていっている。この人、物、金の海外流出は台湾にとって、深刻な問題」としている。

【GDPと鋼材見掛け消費量】

  実質GDPは02年が4・25%、03年が3・4%、04年が6・07%となったが、昨年は下半期からの景気低迷で、4・1%と前年比2%下がった。とくに、主力の半導体や家電が大きく落ち込んだことが影響した。今年は当初、実質GDP4・25%を見込んでいたが、最近は4%程度に下方修正した。

  鉄鋼の見掛け消費量は04年が好景気を反映し、約2630万トンと高水準となったが、05年は約2400万トンと前年比9%減となった。これは国内在庫が積み上がり、出荷が下期から減少したため。06年の見掛け消費については2479万トンと05年比3%増を見込んでいる。

  ただ、90年代後半から、見掛け消費量は2400万―2500万トン台を推移しており、この時期と比較しても、台湾の鉄鋼需要は頭打ちの状態となっている、といえる。1人当たりの鉄鋼消費量としても1トン強と、日本と同様に、需要面では成熟してきている。

  逆に、産業の空洞化が続けば、見掛け消費量は減少するとの見方も出ている。台湾の単圧メーカーでは「足元は液晶、プラズマTV関連の工場建設が台湾内でも活発だが、こうした大型工事もなくなると、先行き、建築需要は低迷が予想される。産業の空洞化と併せて考えると、中長期的には鉄鋼見掛け消費量は現状比5―10%程度減るのではないか」との厳しい見方をしている。

【05年粗鋼生産と鉄源不足】

  そうした状況下にありながら、台湾の05年の粗鋼生産は年間1956万トンと前年比9%程度減少した。これはまず、中国鋼鉄(略称=CSC)が昨年10月から、高雄製鉄所の第2高炉を改修したことの影響。さらに、下期は輸出不振、台湾内の在庫調整から、電炉なども含めてメーカーが減産したためとみられる。

  見掛け消費量の水準と比較すると、台湾は慢性的に鉄源不足の状態が続いている。結果、半製品を中心に、輸入に頼らざるを得ない構造となっている。台湾の05年の鉄鋼輸入は年間1094万トンと高水準となったが、このうちのビレット、スラブなどの鉄源が800万トン弱(このうち輸入スラブ=485万トン)。こうした状況は当面、続く見通しだ。


CSC高雄製鉄所の高炉群