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2004年非鉄金属業界10大ニュース

日刊産業新聞 2004/12/28

(1) 非鉄内外市況高騰、大半が10―15年ぶりの水準へ
(2) 非鉄業界業績改善が加速
(3) 伸銅品の価格是正進む
(4) コベルコマテリアル銅管、キッツメタルワークス始動
(5) 電線業界再編仕上げ段階へ
(6) 電線業界では銅価上昇の製品転嫁に苦しむ
(7) 市況高騰の波レアメタルにも広がる
(8) チタン需要回復で市況さらに上昇へ
(9) 非鉄業界でも環境対応の動き拡大
(10) 貴金属市況も急騰、金は16年ぶり高値

(1)非鉄内外市況高騰、大半が10―15年ぶりの水準へ

  2004年の非鉄地金市況は、需給タイトを背景に内外で急騰。銅は海外相場(LMEセツルメント=以下同)が11月末にトン当たり2337ドルとドル建て表示以来最高値となり、建値は10月に90年以来の40万円へ上伸。鉛は海外が7月に1039ドルと最高値を更新、建値は8月に90年以来の16万円を付けた。亜鉛は海外が12月後半に00年以来の高値1222ドル、建値は10月に同年以来の17万2000円を付けた。錫は海外が5月末に1万100ドル、ニッケルは年明け直後に1万7770ドルと、ともに89年以来の高値を付けた。

(2)非鉄業界業績改善が加速

  2003年3月期決算で、非鉄企業の多くが業績改善が顕著となり、市況高騰・需要堅調をテコに9月中間期決算でそれが加速、製錬・アルミ軽圧などで過去最高益を確保するケースが相次いだ。情報通信不調に苦しんできた電線でも改善が進み、自動車向け需要に支えられて大幅増益となる大手も出てきた。こうした傾向は、総合メーカーに加え伸銅やチタンなどの専業メーカーでも多く見られた。

(3)伸銅品の価格是正進む

  伸銅品生産は、3年ぶりの100万トン回復を確実にしたが、銅価急騰による原材料費上昇問題が浮上し、銅管、黄銅棒、各種銅加工品で値戻しの動きが03年度末また04年度明けにかけて進んだ。製品によって値戻し幅はマチマチながら、従来比10―20%高と大幅だったのが大きな特徴。長年、ロールマージン確保に苦慮し、適正水準から「陥没」状態に置かれてきた黄銅棒業界では、不採算品種の見直し、人員削減などこれまで合理化を進めてきたが原料高騰が急で吸収できなくなったことから危機感を強め、実現に結び付いた。

(4)コベルコマテリアル銅管、キッツメタルワークス始動

  4月、神戸製鋼所と三菱マテリアルの銅管事業アライアンス会社コベルコマテリアル銅管が発足した。売上規模は340億円でシェアは国内が35%、東南アジアで30%とアジアトップクラス。最大手における再編始動は、原料から製品流通まで関連業界全体に与える影響も大きく注目された。またバルブ・黄銅棒大手のキッツも、バルブ以外を分社化し、伸銅品事業の独立採算性追求を目的にキッツメタルワークスを4月に立ち上げた。

(5)電線業界再編仕上げ段階へ

  大手電線各社の電線・ケーブル事業再編が、いよいよ仕上げの段階を迎えた。超高圧ケーブル分野では、既存の合弁会社に販売事業まで集約する動きが続いた。住友電工と日立電線は10月1日付で国内電力会社向けの販売事業を統合。古河電工とフジクラも、両社の電力事業を来年1月1日付で合弁会社ビスキャスに統合すると発表した。中低圧ケーブル分野では、大手メーカーが自社グループ内で子会社の統廃合などを進め、経営のスリム化を図った。年末になってフジクラと三菱電線との建設・電販の販売統合も発表された。

(6)電線業界では銅価上昇の製品転嫁に苦しむ

  電線業界では、銅価や原油価格の高騰分を販売価格に転嫁し切れず、04年度の出荷量は銅量80万トン強見込みで前年並みながら利益面の圧迫が続いた。特にCV、IV、CVVといった産業用電線に厳しい影響が出た。各社とも、自社グループ内で生産態勢の見直し・再編などを進めながら、値上げ交渉に努めたが、佐藤教郎・電線工業会会長は「業界全体で原料価格上昇分の5割ほどしか上乗せできていない」との見方を示している。

(7)市況高騰の波レアメタルにも広がる

  レアメタル価格の高騰が続いている。電子材料向けではインジウムが引き続き上昇基調。供給懸念と液晶の透明導電膜に使うITOターゲットの需要急増をきっかけに投機買いが活発化、年初比約3倍のキロ当たり900ドル近辺に値上がりした。中国でのおう盛な鉄鋼需要を受け、鉄鋼原料のレアメタルも軒並み高騰。酸化モリブデンは年初比4―5倍のポンド当たり30ドル台に上昇したほか、バナジウムなども値上がりしている。

(8)チタン需要回復で市況さらに上昇へ

  2005年1月からスポンジチタンの輸出価格が30%値上がりする。住友チタニウムと東邦チタニウムが海外のチタンメーカーと進めていた価格交渉は、足元の需給ひっ迫感を反映して大幅な値上げ決着となった。中国を中心にプラント関連向けのチタン需要が急増、航空機向けも回復基調を強めており、原料のスポンジの供給が追いつかない状況。また、本年の日本の展伸材出荷量は1万6000―1万7000トンと過去最高を大幅に更新する見通し。

(9)非鉄業界でも環境対応の動き拡大

  欧州RoHS指令の施行を2006年7月に控えて、非鉄業界全体で環境対応の動きが加速した。ハンダメーカーでは、電子機器向け鉛フリーハンダ製品の出荷比率が上昇、本年度末には多くのメーカーで5割を超える見通し。伸銅品分野では、カドミレス黄銅棒などの本格出荷が始まった。足元では、まだ価格面などのネックもあるが、05年には一層の需要増が見込まれる。また、グリーン調達の取り組みも、この1年で大きな広がりを見せた。

(10)貴金属市況も急騰、金は16年ぶり高値

  金価格が16年ぶりにトン当たり450ドルを突破した。年初から10月までは370―430ドルのレンジ内で取引が続いていたが、11月以降は米国の「双子の赤字」を懸念してドルが主要通貨に対して急落。対ユーロで1ユーロ=1・34ドル台、対円では瞬間的に1ドル=101円台まで売られたことで、安全な資産として金市場に投機資金が大量に流れ込んだ。金に追随して銀も800セント台まで買われたほか、白金やパラジウムにも投機資金が向かった。