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[環境特集] 温暖化ガス対策と循環型社会構築に向けて

鉄鋼・環境経営 <1>

総論/効率的エネルギー利用追求

日刊産業新聞 2004/3/22

 1997年に採択された「京都議定書」は加盟国全体で第一約束期間(2008年から12年)までに地球温暖化ガス(二酸化炭素・メタンなど)の排出量を90年の水準から5%削減することを目標としている。大量排出国の中国やインドの削減目標がないうえ、最大の排出国である米国が京都議定書から離脱したままという厳しい状況の下で、日本は6%の削減目標を掲げ02年6月、京都議定書を批准した。

  01年度のわが国の温暖化ガス排出量は対90年度比5・2%増。目標の6%減を達成するには11%もの大幅な削減が必要となる。国内温暖化ガス排出量全体(二酸化炭素換算で年間13億3000万トン)の半分弱を占める産業界は、京都議定書以前から積極的に二酸化炭素排出削減を実行しており、地球温暖化対策推進大綱の中心施策である経団連の自主行動計画目標(二酸化炭素排出量、対90年度比横ばい)に対し、01年度で5%減(うち経団連3・2%減)と、成果をあげている。

  これに対し、温暖化ガス排出量の4分の1ずつを占める民生部門と運輸部門は、90年度に比べ20%以上も伸びている。企業のみが「加害者」ではなく、日常生活や車の運転でエネルギー消費の恩恵を被り、二酸化炭素を排出している国民一人ひとりが「加害者」であり、削減に向けた個々人の努力が求められる。

▼鉄鋼業の自主行動計画

 わが国鉄鋼業界は71年度から89年度までに3兆円もの環境対策・省エネルギー対策費を費やし、20%の省エネルギー化を実現した。そのうえで国内総エネルギー消費量の10%を占める業界として、その削減努力が地球温暖化防止に大きくかかわるとの認識の下、京都議定書に先がけ96年に日本鉄鋼連盟として自主行動計画を策定。エネルギー消費量をさらに2010年度に対90年度比10%削減し、加えて廃プラスチック活用で1・5%削減するというチャレンジングな目標を打ち立てた。

  鉄鋼各社はユーザーニーズの多様化・高度化にこたえるため製品の高付加価値化を進めており、また環境対策にも力を入れている。こうした取り組みは基本的に製造工程の増エネにつながるが、そうした中にあってトータルのエネルギー消費量は減っている。90年―01年度は1兆4000億円の環境対策・省エネルギー対策費を投じ、01年度には90年度比8・5%の省エネを達成した。製鉄所を中心とする継続的で地道な努力の結果といえる

▼省エネとリサイクルの両輪

 多くのエネルギーを必要とする製鉄プロセスでは、省エネは製造コストを左右する重要な経営課題で、鉄鋼各社はこれまで効率的なエネルギー利用を極限まで追求してきた。70年代は工程連続化による製造エネルギーの削減を図り、70年代後半から80年代は大型排熱回収設備の開発、導入を進めた。

  90年頃にはこれらの装備率がほぼ100%に達し、第一次石油危機時点に比べ20%を超える省エネを実現。さらに近年では廃プラスチック、廃タイヤのリサイクルなど、社会システムとリンクした新たな有効利用を進めてる。一方、業界の外に対しても製品・副産物による他産業や社会への貢献、国際技術協力による他国の省エネ化、製鉄所の緑化への取り組みなどで一定の成果をあげている。

  02年度は製造工程での省エネおよび廃プラなどの有効活用で、対90年度比1349万トンの二酸化炭素削減を達成したほか、製品・副産物による他産業や社会貢献で1170万トン、国際技術協力による他国の省エネ化で50万トン、緑化の取り組みで4万トンの二酸化炭素削減を実現している。

  鉄鋼業界の取り組みは、大きくは省エネとリサイクルの両輪できたといえるが、今後はどうか――。08年から12年の京都議定書の第一約束期間や、経団連や鉄連の自主行動計画への対応など短期的には、廃棄物リサイクルを含め既存の技術の延長線上で二酸化炭素削減を進める。そして長期的には、水素エネルギーによる新エネの促進など、技術革新的なものが大勢を占めることになるという。



 ※本シリーズは日刊産業新聞に連載(04/3/22〜04/4/9)