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2003年非鉄金属業界の10大ニュース

日刊産業新聞 2003/12/25

(1) 非鉄市況急騰
(2) 神鋼・三菱マテ、銅管事業を統合
(3) 非鉄各社業績改善
(4) 三宝伸銅工業・日本伸銅、黄銅棒・線事業で包括的業務提携
(5) 伸銅品値戻し交渉開始
(6) 電子材料の値上げ相次ぐ
(7) インジウムなどレアメタル価格が急騰
(8) 化合物半導体「青色」立ち上がり
(9) FPC需要急増
(10) 日鉱金属加工、発足


(1)非鉄市況急騰

 2003年の非鉄内外市況は、数年来、低迷を続けてきたが後半にかけて急騰した。海外相場が、大半のベースメタルで需給引き締まりを背景に投機買いも引き込む格好で騰勢を強めた。国内市況も円高にさらされながらも、建値は銅(トン28万円)、鉛(11万3000円)、亜鉛(14万9000円)の年内最高値で引け、それだけに海外相場の腰の強さが浮き彫りになった。スクラップ原料でも銅は構造的な品薄も加わり値ごろが上昇した。

(2)神鋼・三菱マテ、銅管事業を統合

 11月、国内銅管生産2位の神戸製鋼所と同5位の三菱マテリアルが銅管事業を統合することで合意し、来年4月1日に新会社を設立することを決定。新会社は住友軽金属工業を抜いて国内トップに躍り出るほか、東南アジアでも約30%のシェアを有するアジアトップクラスの銅管製造・販売会社となる。この結果、国内大手銅管メーカーは、神鋼・三菱マテ、住友軽金属、そして中国・上海で一貫生産工場を合弁出資している古河電工・日立電線の3極に収斂される格好となった。

(3)非鉄各社業績改善

 03年9月期中間決算で非鉄各社の業績が改善、本格回復に向け前進していることを示した。事業の選択と集中、人員削減などITバブル崩壊後の合理化効果を積み上げた結果だった。アライアンスも仕上げの段階に入った。最終損益は、まだ水面下にある企業も多いが、営業・経常ベースでは黒字転換のケースが相次いだ。各社株価も全般的な底上げもあって上昇、これまでの値ごろ感もあり、伸び率で上位に位置するところも散見された。

(4)三宝伸銅工業・日本伸銅、黄銅棒・線事業で包括的業務提携

 4月、関西地区大手伸銅メーカーの三宝伸銅工業と日本伸銅が黄銅棒・線事業で包括的業務提携を結んだ。両社合計の生産量は月間5000トン程度で、黄銅棒メーカーではサンエツ金属を抜いて国内トップに躍り出た。提携後は原料委員会など計5つの小委員会を設置。10月には、(1)11月から黄銅棒・線を月間500トンを目標にクロス生産する(2)共販プロジェクト委員会を設置し、棒製品の共販に取り組む――など5項目からなる第一次プログラムを策定し、04年3月末までに目標をクリアする方針を発表した。

(5)伸銅品値戻し交渉開始

 10月末、黄銅棒メーカー各社が業界の窮状を訴え、11月からロールマージン是正の要請を開始する意向を示した。12月中旬には黄銅棒メーカー6社で構成される、全国黄銅棒協同組合が来年1月から3年ぶりに黄銅棒の値戻し交渉を開始することを決定。一方、12月初めには住友軽金属工業が来年1月出荷分から被覆銅管の価格を従来比20%引き上げると発表。年初から続く国際銅地金価格の高騰を反映したもので、同社では3年ぶりの値戻しとなる。

(6)電子材料の値上げ相次ぐ

 電解銅箔やスパッタリングターゲット材などの電子材料で値上げが続いた。まず、電解銅箔はITバブル崩壊後に採算ラインの5ドルを割り込み一時は3ドル台まで値下がりしていた。しかし、三井金属や日鉱マテリアルズをはじめ各社が2回の値上げを行ったことで、4ドル台後半を回復。現在は5ドル台の回復をめざして3回目の値上げ交渉を進めている。ITOターゲット材は約20%の値上げを液晶パネルメーカーに要請、ほぼ浸透した。

(7)インジウムなどレアメタル価格が急騰

 ITOの値上げ要請は、主原料のインジウム価格の急騰が要因になっている。メタルヨーロッパの生産停止に加え、中国での鉱山事故により供給不安が強まった。一方で薄型テレビの普及を受け液晶パネル需要が好調に推移しているため、透明導電膜材料であるITOの需給がひっ迫。これがトレーダー筋の投機の対象になってしまった。足元は年初比で3倍以上に急騰して300ドルを超えている。貴金属やコバルト価格も急騰した。

(8)化合物半導体「青色」立ち上がり

 住友電工は4月、次世代光ディスク機器の青紫色レーザー向けに、世界で初めて窒化ガリウム基板の量産を開始した。日立電線も今春から同基板のサンプル出荷を開始したほか、古河機械金属は7月から窒化ガリウム結晶の成長に用いるサファイア基板を量産。「青色」化合物半導体の供給態勢が本格的に整い始めた。青紫色レーザー以外に、LED式信号機の「青色」材料としても話題を呼んだ。

(9)FPC需要急増

 携帯電話やデジタル家電の小型化・高機能化に伴い、狭い所に折り畳んで収納できるフレキシブルプリント回路基板(FPC)の需要が急増した。中でもフジクラのFPC部門は、本年度上期の売上高が前年同期比4割増になるなど、業界でも突出した成長を遂げた。 また、FPCの伸長に連動して、耐曲性に優れる配線材料として圧延銅箔の需要も好調に推移。国内の銅箔メーカーは相次いで圧延箔の生産を増強した。

(10)日鉱金属加工、発足

 10月1日、日鉱金属の金属加工部門が分離独立し、新日鉱グループ4番目の中核会社となる日鉱金属加工が発足した。12月10日には「日鉱宇進精密加工(蘇州)有限公司」(資本金約27億円、出資比率は日鉱金属加工90%、宇進精密工業10%)の起工式を行い、2005年4月に精密プレス、2006年1月には精密圧延を順次稼働させる予定。2009年には精密圧延で月産400トン、精密プレスで同4200万―4300万個の生産を見込んでおり、年間約50億円の売上高をめざす。