2025年1月30日
需要家トップに聞く/日立建機 先崎正文社長/南米マイニング事業拡大/電動化対応、世界のトップ走る
日立建機はバリューチェーンの強化、マイニング(鉱山機械)の強化、独自展開する米州事業の強化を掲げ、技術開発では電動化をはじめ、燃料電池、水素関連技術の開発を強化、重点策を加速する。米州事業では商社連携を通じ、南米などでマイニング事業の拡大を図る。先崎正文社長に25年度の建機市場の見通しと今後の舵取りを聞いた。
――23年度からスタートした現中期経営計画の進捗は。
「建機の新車需要が厳しさを増す中、部品、サービスのバリューチェーン事業の売上高が24年度は過去最高を更新できる見通しで、施策が実を結んできたと思う。バリューチェーン事業が確実に成長していることを示せている」
――25年、25年度の国内市場をどう見ていますか。
「需要は堅調と見ている。ただ急伸もない。この高い成長が見込めない国内市場で、当社は合理化を進め、ニーズを捕捉、スピード感を持って対応する。例えばデジタルツールを使い、一人の営業マンが職種を超えて複数の顧客を受け持つようにする。ニーズが変わる中でも仕事のやり方を変えていく」
――アジア地域は。
「インドネシアは石炭のほか、林業、パーム、都市土木があり、昨年選挙が終わったことから、コンストラクション(一般建機)はインフラ投資が見えてくれば回復してくると見ている。この中で当社は強みのサービスを強化していく。マイニングも高いレベルが継続し、プラスになってもおかしくない情勢だ」
――米国では建機の在庫が積み上がっています。米国市場の見通しは。
「米国市場の環境は金利、政策にセンシティブで、現地の大手レンタル会社は業績が好調でも新車購入をためらっている。当社はリテールではシェアを伸ばす中で、在庫が積み上がったが、在庫はコントロール下にあると見ている。本年は第2期トランプ政権が発足、経済対策に力を入れ、経済にはプラスになると見ている。工事も一定量はあり、機械は稼働、レンタルも業績的には良く、心配していない。政権運営が本格化、金利の動向も見えれば、躊躇していた需要も出てくる。25年度前半には新車で成長する姿が見られると思っている」
――トランプ政権発足の影響をどう見ていますか。
「米国へ供給する中型、ミニ建機はほぼすべて日本で造っている。マイニングは油圧ショベルを常陸那珂臨港工場(茨城県)で、ダンプトラックは臨港工場のほか、カナダでも生産を始める。ホイールローダーも龍ヶ崎工場(同)で手掛け、一部マイニングの足回り部品をインドネシアで造っているが、最終組み立ては日本で行い、輸出している。ただ、日本で製造していても、付加価値は米国でつけている。現地で代理店などが改造しており、現地参加比率は調整できる。保護主義には反対だが、そうした流れが実態でもある。米国政策に対して準備していく」
――米州事業は。
「代理店のカバー率は80%から87%にアップし、100%を目指すほか、リテール(小売)のシェアを伸ばす。米ソルトレークで新たな部品倉庫が稼働を開始した。南米でもマイニング事業体制を強化する。丸紅と連携し、ブラジルに販売、サービス会社を昨年11月に設立し、本年稼働を始める。業績伸展を示し、需要環境の動きに左右されない姿を見せたい」
――マイニングの見通しは。
「マイニングの需要分野は大きく鉄、銅などのハードロック、原料炭、燃料炭に分けられる。いずれもコモディティ(商品先物)価格などにリンクするが、ハードロックはより堅調に推移すると見ている。電線に関連して銅の需要は伸展、価格水準も高位だ。原料炭もロシアがウクライナ問題で制限され、供給元が限られるため全体的には堅調だ。燃料炭はCNで弱いが、グローバルサウスで需要が増える可能性もある。総じて鉱山の機械稼働は順調と見ており、多少の波はあるだろうが、来年度以降も底堅い需要が続くだろう」
――カーボンニュートラル(CN)の取り組みは。
「まず電動化対応では、世界のトップクラスを走っていると自負している。コンストラクションでは昨年9月から日本市場でバッテリー駆動式の油圧ショベル3種類と、可搬式充電設備の受注を開始した。すでに5トンクラスの電動ショベルと可搬式充電設備のメインユニットを1点ずつ受注、当社としては国内初の受注を確保した。欧州では23年に7トン以上のバッテリーショベルでトップシェアを獲得しており、今後も拡販していく。マイニングではフル電動ダンプトラックについてザンビアで試験を実施しており、フェーズⅡに移行した」
――電動化はインフラの問題もあります。
「電動化ニーズはあるが、どのタイミングで使用を始めるか見ている状態。先だって解体業者から電動機を使ってみたいと要請を受けた。建物の中や産廃などでの使用でニーズはある。ただ、充電できなければ利用できない。自動車もEV普及にインフラが課題となっている。建機も同様だ。解決策の一つとして可搬式充電設備ユニットが挙げられるが、インフラ、充電、バッテリー寿命が大きな課題で、各社模索している段階。この課題解決のため当社は昨年5月、千葉県市川市にゼロ・エミッションEVラボを開設した。先進的な取り組みを進める顧客に使用して頂いて、インフラがどうあるべきかを一緒に考え、併行して急速充電できるバッテリーを供給することに取り組む」。
――マイニングの電動化は。
「油圧ショベルにケーブルをつなぐタイプで世界トップシェアを持つ。ただ、掘る場所が移動するため、ケーブルは邪魔になる。ダンプも坂を上るため、バッテリーだけでは難しい。エンジンと同じ重量のバッテリーができれば解決でき、我々はトータルソリューションを提供する中で、その開発を進めていく。一方でインフラをどうつくるかを顧客と考えていくため、ザンビアで実証プロジェクトに取り組んでいる。既にフェーズⅡに入った」
「我々製造業としてエネルギーを安価に適切なコストで使用できることは必要条件。エネルギー、鉄などの素材、人件費の安い国・地域で製造するメリットは大きい。技術とコストを両立するグローバル供給体制づくりを進めている。中国、インド、インドネシアなどで製造、カナダでもダンプトラックの生産を再開する。エネルギー、素材、人件費とコストを見ながら、品質と最適な生産を追求する」
――丸紅など商社との連携について。
「70年にわたる建機製造をベースとするが、世界的に顧客ニーズは変わっている。建機中心にバリューチェーンを展開するには、建機業界、マイニング業界と幅広いニーズがあり、地域性も加わる。このためスピード感を持って成長するツールには色々な人と手を組み、オープンで整備していく必要がある。日本の商社はトレーディング以外でも事業を確立し、末端の顧客に深く浸透している。丸紅とは長いお付き合いがあり、マイニングのノウハウも持っている。いっしょにやっていくことで、我々だけではできないことを進め、成長につなげていく。北米のリテール、レンタルで伊藤忠商事はEコマースのノウハウなどを持ち、パートナーとして取り組み、ファイナンスなどの対応ができている。南米のマイニングでも連携することで可能性は膨らむ」
――連携を広げていくことに。
「南米以外でも世界で手を組んで展開していく。テクノロジーでもオープンイノベーションでベンチャーキャピタルなどに積極的に投資する。日立製作所とも手を組んでスピード感を持って取り組む」
――昨年、ニューコンセプト『LANDCROS(ランドクロス)』を制定しました。
「昨年7月、あらゆるステークホルダーに革新的なソリューションを提供したいという日立建機グループの想いを象徴するニューコンセプト『ランドクロス』を掲げ、我々の先進的な製品と顧客に革新的なソリューションを提供し課題を解決するという方向性を示した。社外のパートナーと連携してオープンに進めるスタイルを明示、ランドクロスのコンセプトを広く伝えていきたい」
――23年度からスタートした現中期経営計画の進捗は。
「建機の新車需要が厳しさを増す中、部品、サービスのバリューチェーン事業の売上高が24年度は過去最高を更新できる見通しで、施策が実を結んできたと思う。バリューチェーン事業が確実に成長していることを示せている」
――25年、25年度の国内市場をどう見ていますか。
「需要は堅調と見ている。ただ急伸もない。この高い成長が見込めない国内市場で、当社は合理化を進め、ニーズを捕捉、スピード感を持って対応する。例えばデジタルツールを使い、一人の営業マンが職種を超えて複数の顧客を受け持つようにする。ニーズが変わる中でも仕事のやり方を変えていく」
――アジア地域は。
「インドネシアは石炭のほか、林業、パーム、都市土木があり、昨年選挙が終わったことから、コンストラクション(一般建機)はインフラ投資が見えてくれば回復してくると見ている。この中で当社は強みのサービスを強化していく。マイニングも高いレベルが継続し、プラスになってもおかしくない情勢だ」
――米国では建機の在庫が積み上がっています。米国市場の見通しは。
「米国市場の環境は金利、政策にセンシティブで、現地の大手レンタル会社は業績が好調でも新車購入をためらっている。当社はリテールではシェアを伸ばす中で、在庫が積み上がったが、在庫はコントロール下にあると見ている。本年は第2期トランプ政権が発足、経済対策に力を入れ、経済にはプラスになると見ている。工事も一定量はあり、機械は稼働、レンタルも業績的には良く、心配していない。政権運営が本格化、金利の動向も見えれば、躊躇していた需要も出てくる。25年度前半には新車で成長する姿が見られると思っている」
――トランプ政権発足の影響をどう見ていますか。
「米国へ供給する中型、ミニ建機はほぼすべて日本で造っている。マイニングは油圧ショベルを常陸那珂臨港工場(茨城県)で、ダンプトラックは臨港工場のほか、カナダでも生産を始める。ホイールローダーも龍ヶ崎工場(同)で手掛け、一部マイニングの足回り部品をインドネシアで造っているが、最終組み立ては日本で行い、輸出している。ただ、日本で製造していても、付加価値は米国でつけている。現地で代理店などが改造しており、現地参加比率は調整できる。保護主義には反対だが、そうした流れが実態でもある。米国政策に対して準備していく」
――米州事業は。
「代理店のカバー率は80%から87%にアップし、100%を目指すほか、リテール(小売)のシェアを伸ばす。米ソルトレークで新たな部品倉庫が稼働を開始した。南米でもマイニング事業体制を強化する。丸紅と連携し、ブラジルに販売、サービス会社を昨年11月に設立し、本年稼働を始める。業績伸展を示し、需要環境の動きに左右されない姿を見せたい」
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「マイニングの需要分野は大きく鉄、銅などのハードロック、原料炭、燃料炭に分けられる。いずれもコモディティ(商品先物)価格などにリンクするが、ハードロックはより堅調に推移すると見ている。電線に関連して銅の需要は伸展、価格水準も高位だ。原料炭もロシアがウクライナ問題で制限され、供給元が限られるため全体的には堅調だ。燃料炭はCNで弱いが、グローバルサウスで需要が増える可能性もある。総じて鉱山の機械稼働は順調と見ており、多少の波はあるだろうが、来年度以降も底堅い需要が続くだろう」
――カーボンニュートラル(CN)の取り組みは。
「まず電動化対応では、世界のトップクラスを走っていると自負している。コンストラクションでは昨年9月から日本市場でバッテリー駆動式の油圧ショベル3種類と、可搬式充電設備の受注を開始した。すでに5トンクラスの電動ショベルと可搬式充電設備のメインユニットを1点ずつ受注、当社としては国内初の受注を確保した。欧州では23年に7トン以上のバッテリーショベルでトップシェアを獲得しており、今後も拡販していく。マイニングではフル電動ダンプトラックについてザンビアで試験を実施しており、フェーズⅡに移行した」
――電動化はインフラの問題もあります。
「電動化ニーズはあるが、どのタイミングで使用を始めるか見ている状態。先だって解体業者から電動機を使ってみたいと要請を受けた。建物の中や産廃などでの使用でニーズはある。ただ、充電できなければ利用できない。自動車もEV普及にインフラが課題となっている。建機も同様だ。解決策の一つとして可搬式充電設備ユニットが挙げられるが、インフラ、充電、バッテリー寿命が大きな課題で、各社模索している段階。この課題解決のため当社は昨年5月、千葉県市川市にゼロ・エミッションEVラボを開設した。先進的な取り組みを進める顧客に使用して頂いて、インフラがどうあるべきかを一緒に考え、併行して急速充電できるバッテリーを供給することに取り組む」。
――マイニングの電動化は。
「油圧ショベルにケーブルをつなぐタイプで世界トップシェアを持つ。ただ、掘る場所が移動するため、ケーブルは邪魔になる。ダンプも坂を上るため、バッテリーだけでは難しい。エンジンと同じ重量のバッテリーができれば解決でき、我々はトータルソリューションを提供する中で、その開発を進めていく。一方でインフラをどうつくるかを顧客と考えていくため、ザンビアで実証プロジェクトに取り組んでいる。既にフェーズⅡに入った」
「我々製造業としてエネルギーを安価に適切なコストで使用できることは必要条件。エネルギー、鉄などの素材、人件費の安い国・地域で製造するメリットは大きい。技術とコストを両立するグローバル供給体制づくりを進めている。中国、インド、インドネシアなどで製造、カナダでもダンプトラックの生産を再開する。エネルギー、素材、人件費とコストを見ながら、品質と最適な生産を追求する」
――丸紅など商社との連携について。
「70年にわたる建機製造をベースとするが、世界的に顧客ニーズは変わっている。建機中心にバリューチェーンを展開するには、建機業界、マイニング業界と幅広いニーズがあり、地域性も加わる。このためスピード感を持って成長するツールには色々な人と手を組み、オープンで整備していく必要がある。日本の商社はトレーディング以外でも事業を確立し、末端の顧客に深く浸透している。丸紅とは長いお付き合いがあり、マイニングのノウハウも持っている。いっしょにやっていくことで、我々だけではできないことを進め、成長につなげていく。北米のリテール、レンタルで伊藤忠商事はEコマースのノウハウなどを持ち、パートナーとして取り組み、ファイナンスなどの対応ができている。南米のマイニングでも連携することで可能性は膨らむ」
――連携を広げていくことに。
「南米以外でも世界で手を組んで展開していく。テクノロジーでもオープンイノベーションでベンチャーキャピタルなどに積極的に投資する。日立製作所とも手を組んでスピード感を持って取り組む」
――昨年、ニューコンセプト『LANDCROS(ランドクロス)』を制定しました。
「昨年7月、あらゆるステークホルダーに革新的なソリューションを提供したいという日立建機グループの想いを象徴するニューコンセプト『ランドクロス』を掲げ、我々の先進的な製品と顧客に革新的なソリューションを提供し課題を解決するという方向性を示した。社外のパートナーと連携してオープンに進めるスタイルを明示、ランドクロスのコンセプトを広く伝えていきたい」
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