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2025.1.27
2025年1月29日
需要家トップに聞く/コマツ 小川啓之社長/建機市場 下期回復を期待/遠隔操作・電動化で付加価値高める
コマツは2025年の建機市場について年後半からの回復を想定、この中で成長戦略に取り組む。イノベーションによる成長の加速、稼ぐ力の最大化、レジリエント(弾力性のある)な企業体質の構築を掲げ、建機電動化などカーボンニュートラル(CN)対応やDXへの対応も強める。小川啓之社長は25年度からの新中期経営計画で付加価値向上を掲げる。同社長に新中計も見据え、今後の取り組みを聞いた。
――24年度は現行中期経営計画の最終年度になります。
「24年度の建機市場は油圧ショベルやダンプ、ブルドーザーなど建機・車両の一般建機需要を23年度比5ー10%減と見ている。鉱山機械は同横ばいから5%減と見通している。これに対して24年度の業績見通しは売上高3兆9880億円(前年度比3・2%増)、セグメント利益5950億円(同1・8%減)とし、為替が円安に振れ、昨年4月段階の見通しより上方修正した。現中計では既存分野では収益獲得機会の最大化で収益性の向上、効率的で変化に強い基盤構築を進め、販価改善、為替、成長戦略と構造改革により売上高、営業利益は過去最高の更新を続けている。本年度も売上高は更新できるだろう。次期中計でも一般建機の営業利益を上げることが課題となる」
――第2期トランプ政権発足など建機市場への影響と25年見通しについて。
「北米はレンタル需要が25%を占めるが、余剰感があり、レンタルは良くない。住宅着工、リグカウントが落ちている。しかし、利下げの方向で、インフレも収まりつつあり、世界的に25年下期からの回復を期待している。トランプ政権ではエネルギー政策が変わり、シェールガス・シェールオイルなどエネルギー分野は回復するのではないか。レンタルも在庫がはければ戻ってくる。一般建機は25年下期回復と見ている」
「ただ、関税問題は危惧している。コマツは北米販売の半分を北米で生産、残りを輸入している。北米生産では部品をメキシコ、中国から調達しているが、総額でみると部品調達は大きな額ではなく、全経営へのインパクトは小さい。しかし、報復関税として米国で生産した製品の輸出に際し、相手国が報復関税を賦課するなどの対抗措置をとった場合は厳しい。当社は超大型鉱山機械を米国で生産し、超大型鉱山機械市場のカナダに輸出している。米国からの輸出は輸入より1500億円ほど上回り、米国では輸出企業となる。米国の従業員は約8000人、代理店で約9000人を雇用しており、投資も毎年約450億円レベル実施している。直近ではミルウォーキーの新工場に投資し、貢献していると思う。部品調達はグローバルソースでインド、インドネシア、タイなどからも可能だが、製品への関税賦課は代替ソースがなく、影響は避けられない。動向を注視し、きちっと対応しなければならない」
――成長戦略について。
「イノベーションによる成長の加速、稼ぐ力の最大化、レジリエント(弾力性のある)な企業体質の構築を三本柱に推進している。イノベーションによる成長の加速ては鉱山機械の自動化を推進。無人ダンプ運行航システム(AHS)は豪州、カナダ、チリなどで稼働、稼働台数は昨年10月で790台に達し、中計目標を前倒し達成した。豪州では約1000キロ㍍離れたところから遠隔操作、顧客は安全性、生産性、環境性でメリットを得られる。大手鉱山では無人化オペレーションが主流となっており、今後も増加が見込まれる。遠隔操作ブルドーザを伯・アングロ社のミナス・リオ鉱山で商用稼働、自動散水車も顧客現場でトライアルしている。トヨタとはライトビークル(ALV)の自動化開発で協業、AHSの管制システムの指令で自動走行するALVを鉱山内での作業員輸送や保守点検に活用する」
「ICT活用のスマートコンストラクションでは、単年度で23年度の1万現場から本年度で1万3000現場を達成する見込みで、全世界で累計は4万現場を超える。23年度からは海外展開にも着手、米国、欧州、豪州、東南アジアと展開。マレーシア、フィリピンで商用化が始まり、インドネシアでトライアル中だ」
「次世代油圧ショベルとしてフラッグシップ機『PC200iー12』を上市した。従来よりエンジンをダウンサイジングし、油圧を電子制御とした。3Dマシンガイダンスを標準装備、3Dマシンコントロールの切り替えもソフトウェアで対応できる。3Dマシンコントロールのサブスクリプションも導入した。国土交通省はiコンストラクション2・0で情報化施工を伸ばそうとしており、この流れにマッチする」
――CN対応は。
「CO2排出の90%は製品から排出されており、製品のゼロエミッションはキーとなる。ただ、技術的ハードルは高く、電動化建機の市場はできていない。欧州の一部でミニ建機の市場ができつつあるが、インフラ、コストの面で時間がかかるだろう。将来は環境にやさしい建機を求める顧客も増え、カーボンプライシングや国境炭素税など規制、規格も出てくる。それらをにらみゼロエミ開発は重要となる。当社は機種によって大小の出力があり、稼働時間も様々で稼働環境も様々あり、異なったアプローチが必要だ。このためバッテリー、燃料電池、水素エンジンと全方位で開発を進める。当社はハイブリッド、ディーゼルエレクトリック、有線、トロリーとCNに寄与する技術を持つ。燃料電池など様々な機種に対し、最適なアプローチを図り、研究開発を進めている。開発済の技術ではハイブリッド、ディーゼルエレクトリック、有線電動、カーボンニュートラル燃料もCNへのステップとして強化する。前年度には米バッテリーメーカーのアメリカン・バッテリー・ソリューションズ(ABS)を買収、建機に最適なバッテリーモジュール開発やアフターマーケットを加味し、社内にバッテリー技術を取り込む。デュアルフューエル対応エンジンでは米エンジンメーカーのカミンズなどとディーゼルとエタノールの混合燃料の使用ができるエンジンの開発、導入に向けて協業を始めた。水素混焼発電も発電機のデンヨーと電動ミニショベルの給電用可搬式水素混焼発電機のコンセプト機を開発した」
「水素燃料電池では米ゼネラルモーターズと超大型ダンプ向け水素燃料電池モジュールの共同開発契約を結んだ。水素燃料電池は20トン機の試作機を製造、試験を開始、トヨタから水素燃料の供給を受ける」
――電動化の取り組みは。
「電動化は海外との開発も進め、イタリアと日本で2トン、2・5トンのミニ建機の電動化開発を推進しており、導入していく方向だ。機種展開としてはホイールローダー、ダンプを含め電動化に取り組む。出力が大きいとバッテリーでは稼働時間を保証できないため、燃料電池、水素エンジンも視野に拡大、ディーゼルエレクトリックなどブリッジテクノロジーも加味して機種展開を強化する」
――稼ぐ力の最大化は。
「CEモデル(軽負荷作業モデル)として20トンクラスを販売、アジアなど戦略市場向けの取り組みとしてニーズに応え、対応する『2ラインモデル戦略』を展開する。CEモデルは従来のハイエンドモデルに加え、都市土木作業に適した低付加のモデルで宅地、道路などの工事向けに燃料、コスト、耐久性を重視した。東南アジアでシェアを下げていたが、このモデルを投入し、インドネシアなどシェアを回復している。30トンハイブリッド(HV)モデルは東南アジア中心に導入、欧州では30トンクラスの40%がHVに切り替わっており、インドネシアでは本年度に100台を導入する計画だ。同国ではニッケルマイニングでの導入が拡大している。北米にも力を入れる。当社は08年にHVを投入したが、当時はHV市場は形成されなかった。今後は気候変動問題からHVへの見直しが広がると見ている」
――バリューチェーンの取り組みは。
「新車購入から中古車売却までライフサイクル全体でサポートを継続する必要があり、アフターマーケットに力を入れる。アフターマーケットは廃車台数で決まり、新車販売のように大きく変動しない。断定した売り上げ、利益が見込め、当社としても延長保証を中心に拡大、安定した、需要変動に左右されない経営基盤を構築する。23年度で売り上げでアフターマーケットは50%に達し、利益も60%以上を占めている。利益率アップ、LCC(ライフ・サイクル・コスト)低減の観点から。欧州では中計では重点活動と位置づけている。今後も強化していく」
――坑内掘りハードロックにも力を入れています。
「脱炭素から銅、鉄、ニッケルなどハードロックは坑内掘りにシフトしている。鉱脈は縦にあり、より深くなっていくことから生産性が悪化しており、露天掘りから坑内掘りへ移行することが予想され、力を入れていく。ラインアップ充実、電動化、デジタル技術の獲得を図る。デジタル技術では豪マインサイトテクノロジーズ社を買収した」
「新工法開発では、直接掘る機械として岩盤掘削のメカニカルカッターや坑道掘削のマイニングTBMなど機会を活用、チャレンジしていく。ノーブラスティング(発破レス)、ノーディーゼル、ノーバッチ(連続掘削)を合言葉に開発を推進。ラインアップ充実では独鉱山機械メーカーのGHH社を買収、商品レンジでカバー率は買収前の25%から75%にアップした。ロードホールダンプやダンプなど坑内掘り鉱山機械の系列を広げ、スウェーデンの鉱山機械メーカー、サンドビック、エピロックが坑内掘りでは合わせて70%のシェアを持つが、ストロング・ナンバー3を目指し、強化する。電動化では、コマツ初のバッテリー式ロードホールダンプと坑内掘り鉱山機械用充電器を開発した」
――林業の取り組みは。
「循環事業とし、植林から造林と森林のサイクルをサポートする事業と考えている。林業の全工程を自動化、機械化することを念頭に置く。スマートコンストラクションのように森林を見える化する、林業モニタリングソリューションも提供、プロダクトとソリューションの両方でビジネスを拡大する。林業機械ビジネスは売上高を1000億円から24年度には1400億円とする計画で順調に伸びている。年間で2ー3%伸びており、成長事業として、建設・鉱山機械に次ぐ第3の柱として強化する」
――水中施工ロボットの開発も進めています。
「POC(概念実証)として河川の浚渫工事で実証実験中だ。これを基に問題をフィードバックし、量産化につなぐ。プルドーザベースのロボットで生産性が向上できる。電動化機械で作業は最新ICT機能を持つ。従来は水陸両用機はエンジンだが、電動化のICT建機とし水深7㍍で使用可能だ。最終的には水深50㍍まで潜れるようにして、ブルーカーボン関連や自然災害で増える浚渫工事などグローバル展開する。水中は見えないため、遠隔操作で水中の地形をモニタリングし、作業の地形を見える化するなどスマートコンストラクションを活かせる。三次元測定後もICTで見える化し施工する。浚渫工事のイノベーションに結びつけたい」
――レジリエントな企業体質の構築は。
「車体・部品のクロスソース、調達マルチソース、災害耐性強化、サイバーセキュリティ強化に取り組んでいる。ERM(エンタープライズ・リスク・マネジメント=統合型リスク管理)を導入した。全社の有事のリスクだけでなく、平時のリスクも洗い出して評価、リスク抑制を図る。このほか多様性に富む人材基盤を強化、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)として個性や能力を認め合い、生かし合う環境を実現、ここからイノベーションを生み出す。グローバル人材の育成、ジェンダーダイバーシティ、デジタル人材とオープンイノベーション人材の育成にも取り組む」
――次期中計の取り組みは。
「一般建機など付加価値を付けていくことだ。次世代機のほか、遠隔操作、電動化などを進め、付加価値を高める。ソリューションとプロダクトの両面で展開、無人化、自動化などにも取り組む。アフターマーケットも拡大する。アフターマーケットに関してはビジネスに貢献するのは、5年、10年先で付加価値を高め、量を稼ぐ必要がある。付加価値を高めれば、建機1台当たりの単価も上げられる。ハイブリッドも同様だ」
――24年度は現行中期経営計画の最終年度になります。
「24年度の建機市場は油圧ショベルやダンプ、ブルドーザーなど建機・車両の一般建機需要を23年度比5ー10%減と見ている。鉱山機械は同横ばいから5%減と見通している。これに対して24年度の業績見通しは売上高3兆9880億円(前年度比3・2%増)、セグメント利益5950億円(同1・8%減)とし、為替が円安に振れ、昨年4月段階の見通しより上方修正した。現中計では既存分野では収益獲得機会の最大化で収益性の向上、効率的で変化に強い基盤構築を進め、販価改善、為替、成長戦略と構造改革により売上高、営業利益は過去最高の更新を続けている。本年度も売上高は更新できるだろう。次期中計でも一般建機の営業利益を上げることが課題となる」
――第2期トランプ政権発足など建機市場への影響と25年見通しについて。
「北米はレンタル需要が25%を占めるが、余剰感があり、レンタルは良くない。住宅着工、リグカウントが落ちている。しかし、利下げの方向で、インフレも収まりつつあり、世界的に25年下期からの回復を期待している。トランプ政権ではエネルギー政策が変わり、シェールガス・シェールオイルなどエネルギー分野は回復するのではないか。レンタルも在庫がはければ戻ってくる。一般建機は25年下期回復と見ている」
「ただ、関税問題は危惧している。コマツは北米販売の半分を北米で生産、残りを輸入している。北米生産では部品をメキシコ、中国から調達しているが、総額でみると部品調達は大きな額ではなく、全経営へのインパクトは小さい。しかし、報復関税として米国で生産した製品の輸出に際し、相手国が報復関税を賦課するなどの対抗措置をとった場合は厳しい。当社は超大型鉱山機械を米国で生産し、超大型鉱山機械市場のカナダに輸出している。米国からの輸出は輸入より1500億円ほど上回り、米国では輸出企業となる。米国の従業員は約8000人、代理店で約9000人を雇用しており、投資も毎年約450億円レベル実施している。直近ではミルウォーキーの新工場に投資し、貢献していると思う。部品調達はグローバルソースでインド、インドネシア、タイなどからも可能だが、製品への関税賦課は代替ソースがなく、影響は避けられない。動向を注視し、きちっと対応しなければならない」
――成長戦略について。
「イノベーションによる成長の加速、稼ぐ力の最大化、レジリエント(弾力性のある)な企業体質の構築を三本柱に推進している。イノベーションによる成長の加速ては鉱山機械の自動化を推進。無人ダンプ運行航システム(AHS)は豪州、カナダ、チリなどで稼働、稼働台数は昨年10月で790台に達し、中計目標を前倒し達成した。豪州では約1000キロ㍍離れたところから遠隔操作、顧客は安全性、生産性、環境性でメリットを得られる。大手鉱山では無人化オペレーションが主流となっており、今後も増加が見込まれる。遠隔操作ブルドーザを伯・アングロ社のミナス・リオ鉱山で商用稼働、自動散水車も顧客現場でトライアルしている。トヨタとはライトビークル(ALV)の自動化開発で協業、AHSの管制システムの指令で自動走行するALVを鉱山内での作業員輸送や保守点検に活用する」
「ICT活用のスマートコンストラクションでは、単年度で23年度の1万現場から本年度で1万3000現場を達成する見込みで、全世界で累計は4万現場を超える。23年度からは海外展開にも着手、米国、欧州、豪州、東南アジアと展開。マレーシア、フィリピンで商用化が始まり、インドネシアでトライアル中だ」
「次世代油圧ショベルとしてフラッグシップ機『PC200iー12』を上市した。従来よりエンジンをダウンサイジングし、油圧を電子制御とした。3Dマシンガイダンスを標準装備、3Dマシンコントロールの切り替えもソフトウェアで対応できる。3Dマシンコントロールのサブスクリプションも導入した。国土交通省はiコンストラクション2・0で情報化施工を伸ばそうとしており、この流れにマッチする」
――CN対応は。
「CO2排出の90%は製品から排出されており、製品のゼロエミッションはキーとなる。ただ、技術的ハードルは高く、電動化建機の市場はできていない。欧州の一部でミニ建機の市場ができつつあるが、インフラ、コストの面で時間がかかるだろう。将来は環境にやさしい建機を求める顧客も増え、カーボンプライシングや国境炭素税など規制、規格も出てくる。それらをにらみゼロエミ開発は重要となる。当社は機種によって大小の出力があり、稼働時間も様々で稼働環境も様々あり、異なったアプローチが必要だ。このためバッテリー、燃料電池、水素エンジンと全方位で開発を進める。当社はハイブリッド、ディーゼルエレクトリック、有線、トロリーとCNに寄与する技術を持つ。燃料電池など様々な機種に対し、最適なアプローチを図り、研究開発を進めている。開発済の技術ではハイブリッド、ディーゼルエレクトリック、有線電動、カーボンニュートラル燃料もCNへのステップとして強化する。前年度には米バッテリーメーカーのアメリカン・バッテリー・ソリューションズ(ABS)を買収、建機に最適なバッテリーモジュール開発やアフターマーケットを加味し、社内にバッテリー技術を取り込む。デュアルフューエル対応エンジンでは米エンジンメーカーのカミンズなどとディーゼルとエタノールの混合燃料の使用ができるエンジンの開発、導入に向けて協業を始めた。水素混焼発電も発電機のデンヨーと電動ミニショベルの給電用可搬式水素混焼発電機のコンセプト機を開発した」
「水素燃料電池では米ゼネラルモーターズと超大型ダンプ向け水素燃料電池モジュールの共同開発契約を結んだ。水素燃料電池は20トン機の試作機を製造、試験を開始、トヨタから水素燃料の供給を受ける」
――電動化の取り組みは。
「電動化は海外との開発も進め、イタリアと日本で2トン、2・5トンのミニ建機の電動化開発を推進しており、導入していく方向だ。機種展開としてはホイールローダー、ダンプを含め電動化に取り組む。出力が大きいとバッテリーでは稼働時間を保証できないため、燃料電池、水素エンジンも視野に拡大、ディーゼルエレクトリックなどブリッジテクノロジーも加味して機種展開を強化する」
――稼ぐ力の最大化は。
「CEモデル(軽負荷作業モデル)として20トンクラスを販売、アジアなど戦略市場向けの取り組みとしてニーズに応え、対応する『2ラインモデル戦略』を展開する。CEモデルは従来のハイエンドモデルに加え、都市土木作業に適した低付加のモデルで宅地、道路などの工事向けに燃料、コスト、耐久性を重視した。東南アジアでシェアを下げていたが、このモデルを投入し、インドネシアなどシェアを回復している。30トンハイブリッド(HV)モデルは東南アジア中心に導入、欧州では30トンクラスの40%がHVに切り替わっており、インドネシアでは本年度に100台を導入する計画だ。同国ではニッケルマイニングでの導入が拡大している。北米にも力を入れる。当社は08年にHVを投入したが、当時はHV市場は形成されなかった。今後は気候変動問題からHVへの見直しが広がると見ている」
――バリューチェーンの取り組みは。
「新車購入から中古車売却までライフサイクル全体でサポートを継続する必要があり、アフターマーケットに力を入れる。アフターマーケットは廃車台数で決まり、新車販売のように大きく変動しない。断定した売り上げ、利益が見込め、当社としても延長保証を中心に拡大、安定した、需要変動に左右されない経営基盤を構築する。23年度で売り上げでアフターマーケットは50%に達し、利益も60%以上を占めている。利益率アップ、LCC(ライフ・サイクル・コスト)低減の観点から。欧州では中計では重点活動と位置づけている。今後も強化していく」
――坑内掘りハードロックにも力を入れています。
「脱炭素から銅、鉄、ニッケルなどハードロックは坑内掘りにシフトしている。鉱脈は縦にあり、より深くなっていくことから生産性が悪化しており、露天掘りから坑内掘りへ移行することが予想され、力を入れていく。ラインアップ充実、電動化、デジタル技術の獲得を図る。デジタル技術では豪マインサイトテクノロジーズ社を買収した」
「新工法開発では、直接掘る機械として岩盤掘削のメカニカルカッターや坑道掘削のマイニングTBMなど機会を活用、チャレンジしていく。ノーブラスティング(発破レス)、ノーディーゼル、ノーバッチ(連続掘削)を合言葉に開発を推進。ラインアップ充実では独鉱山機械メーカーのGHH社を買収、商品レンジでカバー率は買収前の25%から75%にアップした。ロードホールダンプやダンプなど坑内掘り鉱山機械の系列を広げ、スウェーデンの鉱山機械メーカー、サンドビック、エピロックが坑内掘りでは合わせて70%のシェアを持つが、ストロング・ナンバー3を目指し、強化する。電動化では、コマツ初のバッテリー式ロードホールダンプと坑内掘り鉱山機械用充電器を開発した」
――林業の取り組みは。
「循環事業とし、植林から造林と森林のサイクルをサポートする事業と考えている。林業の全工程を自動化、機械化することを念頭に置く。スマートコンストラクションのように森林を見える化する、林業モニタリングソリューションも提供、プロダクトとソリューションの両方でビジネスを拡大する。林業機械ビジネスは売上高を1000億円から24年度には1400億円とする計画で順調に伸びている。年間で2ー3%伸びており、成長事業として、建設・鉱山機械に次ぐ第3の柱として強化する」
――水中施工ロボットの開発も進めています。
「POC(概念実証)として河川の浚渫工事で実証実験中だ。これを基に問題をフィードバックし、量産化につなぐ。プルドーザベースのロボットで生産性が向上できる。電動化機械で作業は最新ICT機能を持つ。従来は水陸両用機はエンジンだが、電動化のICT建機とし水深7㍍で使用可能だ。最終的には水深50㍍まで潜れるようにして、ブルーカーボン関連や自然災害で増える浚渫工事などグローバル展開する。水中は見えないため、遠隔操作で水中の地形をモニタリングし、作業の地形を見える化するなどスマートコンストラクションを活かせる。三次元測定後もICTで見える化し施工する。浚渫工事のイノベーションに結びつけたい」
――レジリエントな企業体質の構築は。
「車体・部品のクロスソース、調達マルチソース、災害耐性強化、サイバーセキュリティ強化に取り組んでいる。ERM(エンタープライズ・リスク・マネジメント=統合型リスク管理)を導入した。全社の有事のリスクだけでなく、平時のリスクも洗い出して評価、リスク抑制を図る。このほか多様性に富む人材基盤を強化、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)として個性や能力を認め合い、生かし合う環境を実現、ここからイノベーションを生み出す。グローバル人材の育成、ジェンダーダイバーシティ、デジタル人材とオープンイノベーション人材の育成にも取り組む」
――次期中計の取り組みは。
「一般建機など付加価値を付けていくことだ。次世代機のほか、遠隔操作、電動化などを進め、付加価値を高める。ソリューションとプロダクトの両面で展開、無人化、自動化などにも取り組む。アフターマーケットも拡大する。アフターマーケットに関してはビジネスに貢献するのは、5年、10年先で付加価値を高め、量を稼ぐ必要がある。付加価値を高めれば、建機1台当たりの単価も上げられる。ハイブリッドも同様だ」
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