ジェコスは採算性の低い流通販売取引を控えた営業展開を来年度以降も継続、より利益を重視した経営の色彩を強める。みずほリースと資本業務提携契約を締結、事業領域を拡大する。仮設橋梁事業では24年度下期に岡山総社に西日本ヤードを開設。海外ではシンガポール、ベトナムの展開を強める。2025年度からの新中期経営計画も見据え、野房喜幸社長に取り組みを聞いた。
――第2四半期決算では営業利益が増益になっています。業績の評価は。
「2024年度業績は連結売上高537億8100万円(前年同期比13・2%減)、営業利益27億5200万円(同4・5%増)、経常利益27億2900万円(同4・1%減)だった。事業環境は堅調な中で売り上げ減は、意識して採算性の低い流通販売取引を控えたため。営業益のプラスは価格改善と、工事で全案件の中から受注の優先順位をつける仕組みを構築したことが要因だ。リソースが限られ、一杯になると収益の良い案件に対応できないこともあった。全案件の中から適正な人員配置や利益率を見極めたうえで受注するように営業、工事が一体で取り組んでいる。加工も事業拡大へ向け、長沼工場(千葉県千葉市稲毛)以外の外部の協力会社を発掘、事業拡大しているほか、鉄道関連の耐震補強に注力した成果が出た。建設業界は本年度上期は大型案件で着工に遅れも出たが、大きな影響は出ておらず、総じて堅調と言える。工事、加工と賃貸価格がアップし順調に推移、営業利益増に結び付けられた」
――本年度下期の見通しは。
「大きなリスク要因は労働需給のひっ迫とそれに伴うコストアップで、これは見通せないリスクではなく、価格適正化でカバーできると見ている。需要も粗利ベースでは8割程度、計画の中で見えている。海外は経営参画したシンガポールの重仮設業者『FUCHI(フチ社)』が苦戦しているものの、下期の事業環境は改善傾向にあり、上積みが図れると期待している」
――配当性向を現中期経営計画の「30%程度」から「40%程度」に見直すことを発表しました。
「現中計では配当性向30%としていたが、基本方針として40%に引上げた。自社株買いに対する投資家の皆さんの期待も高まっているが、当社としては成長投資を実施し利益を上げ、配当で還元することで市場の要請に応える。また、業績が一時的に変化しても、安定した配当を維持し、株主の皆さんの期待に応えていくため、新たに株主資本配当率(DOE)を導入する」
――物流・建設の24年問題の影響は。
「建設の24年問題は大きな影響は出ていない。懸念していたのは物流の24年問題だったが、輸送会社を増やし、ストレートにマイナス影響が出ないように取り組んだ。安定配送のため、顧客にも、原則として3日前までのオーダーとするよう求め、リードタイムを確保した。荷待ち時間も2時間までとし、高速道の費用もご負担いただくなど、安定輸送が継続できるよう、お願いする活動を続けている。また、物流の全体感が見えていなかったことがわかり、見える化を実践。トラックの輸送時間、荷待ちや積み込み時間などをデータ化し、輸送に関わる時間を可視化、これを基に輸送会社と話し合い、効率化に取り組む。現在はデータ集約中で、1年程度かけ有効なデータをまとめる」
――みずほリースとの取り組みは。
「みずほリースとは特に建機でみずほリースの知見を活かすほか、海外展開でもノウハウが活用できないかを検討。DXの展開や、人材交流でも期待している。人材交流ではみずほリース側の若手人材を当社経営企画部に配属、つなぎ役も果たしてもらっている。具体化したものでは、当社子会社のレンタルシステムで建機をオペレーティングリースに切り替えているものもある。メリットを享受できるようなら、重仮設でも同様の展開が考えられる。工場のDXでも提案を受け、新しい成長の種が見つかってきた」
――今年度の投資計画は。
「投資額としては、レンタルシステムでの建設機械購入、仮設橋梁のヤード関連、東京工場(千葉県白井市)の労働環境整備のための老朽建屋改修などが大きい。EGスパンの仮設橋梁事業では24年度下期に岡山総社に西日本ヤードを開設する。既に、東日本は東京工場、富里機械センター内にヤードを開設しており、西日本の新設で東西2拠点とし、保有量増加によるシェア拡大、需要地への輸送距離短縮で収益力を高める。基礎工事などを手掛けるオトワコーエイでも実力が発揮できるよう小型杭打機などの投資を検討している」
「加工も事業拡大へ向け、自社工場以外で対応してくれる、外部の協力会社を発掘し、実績がでている。また、鉄道関連の耐震補強工事に注力し、売上、利益に貢献している」
――シンガポールフチ社など海外展開は。
「コロナで事業が遅延している。コロナ前の値上がり前の価格で受注した案件が残っており、その後のコスト上昇もあってダブルパンチで採算的に厳しい。ただ先々、シンガポールは案件が控え、心配していない。出向者2人を配属、日系ゼネコンの仕事も受注できている。一時的に出向者を増員するなどして、経営改善も図る。来年度を乗り切れば、将来は明るい。ベトナムは前年度に初めて黒字化し、今年度も黒字を維持できそうだ。ただ重仮設ではなく、設計部門で利益を稼いでおり、重仮設、設計の2本柱を基本としていきたい。まずはシンガポールを盤石な体制として軌道に乗せる。そのうえで、フチ社への出資比率30%も引上げを検討したい」
――現行中計の前提となる17年度策定の10年ビジョンも社会変化で、当初の想定が変わっていると思いますが。
「25年度からの新中計とともに、10年ビジョンも見直す。従来は売り上げ倍増を掲げ、売り上げ増を照準としていたが、より利益重視に舵を切り、ビジョンも刷新することになる。JFEスチールと同様に、バックキャストで新中計を立案、10年、20年先の事業環境を想定、どういう会社にするかを定め、3カ年の取り組みを具体化する。人手不足も加味し、生産性向上も進める」