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2024.12.24
2024年11月22日
JFEスチール セクター長に聞く/厚板/常務執行役員/新井和彦氏/洋上風力基礎の需要捕捉
――厚板市場の動向について。
「2023年度を振り返ると、コロナ禍が明け部品調達などの制約がなくなって正常化を期待していたが、人手不足の顕在化や諸物価の上昇により思うように右肩上がりとはいかなかった。足元でも23年度に顕在化した課題が続いている。厚板の需要分野は造船、建機、建材、産機など多岐に渡る。造船分野の需要は造船メーカー各社が3年先までの受注を確保しており、比較的堅調に推移している。国内鋼材需要量で言えば、24年度も前年度並みの270万トン程度になると見ており、堅調である。また建機分野は、北米における金利高止まりの中で在庫調整局面となっており、一時的に低調な活動水準にある。建材分野は、大型物件はあるものの、人手不足や資機材高騰を受けた計画見直しの動きが続いており、苦しい状況にある。総じて、24年度の需要量は前年度並みの推移になると見ている」
――厚板の生産状況は。
「数量面で大きな変化はない。本年度下期も上期並みの数量感と見ており、年度を通じても23年度比横ばいを見込んでいる」
――海外市場と輸出動向は。
「中国の需要減退等により、需要は低調で市況低迷が続いている。ここにきて中国が景気刺激策を打ち出したことなどを受け、中国はじめ海外ミルに値上げの動きがあり、今後の動向を注視していく」
――厚板セクターの取り組みについて。
「現行中期計画(21~24年度)では、倉敷地区の新連鋳設備を活用して品質及び競争力の向上を図り、高付加価値製品を製造する体制を構築した。また、京浜地区の構造改革を受け、倉敷地区からスラブを供給することで、全社で効率的かつ安定的な生産・販売基盤が築けたと思っている」
「セクターの今後の課題としては、この基盤を活かし、既存の分野を維持しながら、新たに出てくる新規の需要分野、具体的にはカーボンニュートラルや新エネルギー関連の需要を捕捉することがテーマとなる。洋上風力発電のように、新たに出てくる分野もあれば、造船分野やラインパイプなど既存分野においても新エネルギー対応の需要が出てくる。そうしたニーズに対応して新商品を開発・製造し、高付加価値製品の構成比率を高めていく」
――新エネ対応は―。
「具体的にはアンモニア、液化CO2、水素などの、船や陸上のタンク材、加えて輸送用のパイプラインなど。足元、具体化している案件も多数あるが、総じて言えば2020年代の実証プロジェクトを経て、本格的に需要が出てくるのは2030年代になると見ている」
――高付加価値製品拡大の取り組みは。
「洋上風力発電分野として国内向け需要は、一部に遅れもあるが、順次始動する。26年前後には本格的な需要が出てくる見込みだ。JFEエンジが運営するモノパイルの製造工場向けに、競争力のある厚板を供給、連携して国内需要を捕捉していく。海外でも、世界各地で洋上風力は伸びており、倉敷の新連鋳設備を活かして、大単重厚板『JーTerraPlate(ジェイテラプレート)』で洋上風力需要を取り込む。台湾のプロジェクトで初受注したのに続き、欧州のプロジェクトでも採用されており、大単重厚板への期待値は高く、ニーズの高い分野を開拓する」
――設備投資、研究開発にはどの様に取り組みますか。
「現7次中計では高付加価値化製品対応として、大型投資は完了できたと思っている。今後は構築した新体制の中で、DXを使って、いかに生産効率、コスト対応力、競争力を上げていくかに注力する。研究開発として、新エネルギー関連では先ほど述べた、アンモニア、液化CO2、水素のほか、インフラ関連では建築分野で建築構造用低降伏比780N/平方㍉級厚鋼板『HBL630』、橋梁関係では塗装寿命延長鋼『EXPAL』、高耐候性厚鋼板『LALAC』、耐疲労鋼『AFD鋼』などをラインナップ。パイプライン向けでも表層硬さ厳格仕様サワーラインパイプ用UOE鋼管などを商品化しており、これまでの研究開発の成果が商品化につながっている。今後はジェイテラプレートのニーズを確認しながら、製造可能範囲の拡大も検討していく」
――DXの取り組みは。
「DX、DSを活用した製造プロセスのCPS化(Bigデータ活用、センサー拡充)や、自走式超音波探傷ロボット等のロボティクス技術の開発・応用を推進し、労働生産性向上、品質向上と安定操業等に取り組んでいる」
――グリーン鋼材については。
「『JGreeX(ジェイグリークス)』の販売も強化していく。国内海運5社とCO2削減価値の社会分配モデルを構築し、ドライバルク船への一斉採用が決まった。これは新規建造する船舶に使用する鋼材について、造船、船主、海運、荷主、ユーザーとコスト増を負担する仕組み。PR段階から拡販の段階に移行しており、どう販売していくかが課題だ」
――流通対応は。
「流通各社は人手不足、働き方改革、トラック輸送と悩みを持ち、いずれも一社では解決できない社会課題だ。グループ会社との連携だけでなく、厚板シャー事業者も同様に皆さんと連携して対応していくものであり、何ができるか対話を密にし、連携を図ることで、サプライチェーンの強化につながる。」
――価格政策は。
「製品価値に合った価格への改善活動は進めていく。主原料価格の変動に加えて、人件費など諸物価の上昇についても、この数年間で社会的な認知が進み、我々が取引先と丁寧に話を行う中で理解も広がってきた。生産性や商品付加価値に見合うエキストラについても段階的に改定を進めており、当初の目的に沿って改定は継続している」
――3ミル体制の強化は。
「3ミルはそれぞれ特徴あるミルで、京浜は建材や建機、倉敷は造船、福山はUOE向け原板を得意としており、それぞれの強みを活かして製造する力を強化していく。7次中計で構築した基盤を元に、8次中計では社会変化に伴う需要を捕捉、対応した製品を開発、ラインアップを拡充する。厚板は鋼構造物など社会インフラを支えることが使命で、社会変化に合わせ、世の中の要請にしっかり対応していきたい」
「2023年度を振り返ると、コロナ禍が明け部品調達などの制約がなくなって正常化を期待していたが、人手不足の顕在化や諸物価の上昇により思うように右肩上がりとはいかなかった。足元でも23年度に顕在化した課題が続いている。厚板の需要分野は造船、建機、建材、産機など多岐に渡る。造船分野の需要は造船メーカー各社が3年先までの受注を確保しており、比較的堅調に推移している。国内鋼材需要量で言えば、24年度も前年度並みの270万トン程度になると見ており、堅調である。また建機分野は、北米における金利高止まりの中で在庫調整局面となっており、一時的に低調な活動水準にある。建材分野は、大型物件はあるものの、人手不足や資機材高騰を受けた計画見直しの動きが続いており、苦しい状況にある。総じて、24年度の需要量は前年度並みの推移になると見ている」
――厚板の生産状況は。
「数量面で大きな変化はない。本年度下期も上期並みの数量感と見ており、年度を通じても23年度比横ばいを見込んでいる」
――海外市場と輸出動向は。
「中国の需要減退等により、需要は低調で市況低迷が続いている。ここにきて中国が景気刺激策を打ち出したことなどを受け、中国はじめ海外ミルに値上げの動きがあり、今後の動向を注視していく」
――厚板セクターの取り組みについて。
「現行中期計画(21~24年度)では、倉敷地区の新連鋳設備を活用して品質及び競争力の向上を図り、高付加価値製品を製造する体制を構築した。また、京浜地区の構造改革を受け、倉敷地区からスラブを供給することで、全社で効率的かつ安定的な生産・販売基盤が築けたと思っている」
「セクターの今後の課題としては、この基盤を活かし、既存の分野を維持しながら、新たに出てくる新規の需要分野、具体的にはカーボンニュートラルや新エネルギー関連の需要を捕捉することがテーマとなる。洋上風力発電のように、新たに出てくる分野もあれば、造船分野やラインパイプなど既存分野においても新エネルギー対応の需要が出てくる。そうしたニーズに対応して新商品を開発・製造し、高付加価値製品の構成比率を高めていく」
――新エネ対応は―。
「具体的にはアンモニア、液化CO2、水素などの、船や陸上のタンク材、加えて輸送用のパイプラインなど。足元、具体化している案件も多数あるが、総じて言えば2020年代の実証プロジェクトを経て、本格的に需要が出てくるのは2030年代になると見ている」
――高付加価値製品拡大の取り組みは。
「洋上風力発電分野として国内向け需要は、一部に遅れもあるが、順次始動する。26年前後には本格的な需要が出てくる見込みだ。JFEエンジが運営するモノパイルの製造工場向けに、競争力のある厚板を供給、連携して国内需要を捕捉していく。海外でも、世界各地で洋上風力は伸びており、倉敷の新連鋳設備を活かして、大単重厚板『JーTerraPlate(ジェイテラプレート)』で洋上風力需要を取り込む。台湾のプロジェクトで初受注したのに続き、欧州のプロジェクトでも採用されており、大単重厚板への期待値は高く、ニーズの高い分野を開拓する」
――設備投資、研究開発にはどの様に取り組みますか。
「現7次中計では高付加価値化製品対応として、大型投資は完了できたと思っている。今後は構築した新体制の中で、DXを使って、いかに生産効率、コスト対応力、競争力を上げていくかに注力する。研究開発として、新エネルギー関連では先ほど述べた、アンモニア、液化CO2、水素のほか、インフラ関連では建築分野で建築構造用低降伏比780N/平方㍉級厚鋼板『HBL630』、橋梁関係では塗装寿命延長鋼『EXPAL』、高耐候性厚鋼板『LALAC』、耐疲労鋼『AFD鋼』などをラインナップ。パイプライン向けでも表層硬さ厳格仕様サワーラインパイプ用UOE鋼管などを商品化しており、これまでの研究開発の成果が商品化につながっている。今後はジェイテラプレートのニーズを確認しながら、製造可能範囲の拡大も検討していく」
――DXの取り組みは。
「DX、DSを活用した製造プロセスのCPS化(Bigデータ活用、センサー拡充)や、自走式超音波探傷ロボット等のロボティクス技術の開発・応用を推進し、労働生産性向上、品質向上と安定操業等に取り組んでいる」
――グリーン鋼材については。
「『JGreeX(ジェイグリークス)』の販売も強化していく。国内海運5社とCO2削減価値の社会分配モデルを構築し、ドライバルク船への一斉採用が決まった。これは新規建造する船舶に使用する鋼材について、造船、船主、海運、荷主、ユーザーとコスト増を負担する仕組み。PR段階から拡販の段階に移行しており、どう販売していくかが課題だ」
――流通対応は。
「流通各社は人手不足、働き方改革、トラック輸送と悩みを持ち、いずれも一社では解決できない社会課題だ。グループ会社との連携だけでなく、厚板シャー事業者も同様に皆さんと連携して対応していくものであり、何ができるか対話を密にし、連携を図ることで、サプライチェーンの強化につながる。」
――価格政策は。
「製品価値に合った価格への改善活動は進めていく。主原料価格の変動に加えて、人件費など諸物価の上昇についても、この数年間で社会的な認知が進み、我々が取引先と丁寧に話を行う中で理解も広がってきた。生産性や商品付加価値に見合うエキストラについても段階的に改定を進めており、当初の目的に沿って改定は継続している」
――3ミル体制の強化は。
「3ミルはそれぞれ特徴あるミルで、京浜は建材や建機、倉敷は造船、福山はUOE向け原板を得意としており、それぞれの強みを活かして製造する力を強化していく。7次中計で構築した基盤を元に、8次中計では社会変化に伴う需要を捕捉、対応した製品を開発、ラインアップを拡充する。厚板は鋼構造物など社会インフラを支えることが使命で、社会変化に合わせ、世の中の要請にしっかり対応していきたい」
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