2024年9月25日

鉄鋼業界で働く/女性営業職編/インタビュー/社員の数だけ働き方ある

結婚、出産、子育て――。さまざまなライフステージを経験しながら仕事に取り組む女性の姿が今では当たり前の風景となった。日鉄物産の外岡未絵さんは、棒線営業部を経て現在2回目の育児休暇中だ。休暇前に、これまでの仕事や今後の働き方の希望などについて聞いた。

――学生時代は。

「静岡県伊豆半島出身で、のんびりした温泉地で育ちました。大学では経済学部の国際社会コースへ。英国で留学とインターンシップも経験し、漠然と仕事で海外に関わりたいと思いました」

――鉄鋼業界へ。

「『日本と海外をつなぐ』をテーマに就職活動をしました。総合職と一般職の両方を視野に、商社やメーカー、自動車関連など海外色が強い企業に応募。フィーリングが合い、居心地が良いなと思った日鉄物産に入社しました。仕事の規模の大きさも魅力でしたね」

――2006年入社。

「一般職で鋼材貿易部鋼材貿易第二チーム(当時)に配属。ステンレス鋼板・線材の貿易に必要な海外現地法人とのやりとり、輸出入の実務を担当しました。当時は女性総合職がおらず、今とは比較にならない男社会。女性総合職の働き方は正直想像できなかったです」

――職掌転換した。

「入社して4年経った頃、業務を一通りこなせるようになり将来に悩み始めました。私も自分で動きたい、広い世界が見たいと。当時の上司に後押しされ、11年に総合職へ職掌転換。棒線・特殊鋼・チタン部ステンレス・チタン・アルミチーム(当時)に配属され、全世界を対象に線材のひも付き営業を担当し、商談で海外を毎月複数回飛び回りました」

――大変なことは。

「最初の3年間は必死すぎて記憶がないくらい大変でした(笑)。商談のやり方が全く分からない上に、総合職が受ける研修を受けておらず、与信や営業管理、品種知識といったベースがない中でのスタート。全力疾走して転んで、体当たりで業務を覚える感覚でした。一般職の時は一部しか見えてなかったなとも思いましたね」

――経験が役立った。

「一般職の業務内容を知った上で総合職に就いたので、一般職の動きを考え効率的に連携できました。海外現地法人との関係が構築できていて、仕入れ先や需要家の名前になじみがあったのも良かったです。13年に棒線営業部に配属、14年に主事へ昇格し新人を卒業。15年からカーボン線材輸出を担当しました」

――良かったことを。

「世界各国の方に仕事を通じてお会いしたことです。アジア、北中米など多くの国と取引を経験し、欧州の展示会で数十社に飛び込み営業を行い成約した時は飛び上がるほどうれしかったですね。内モンゴルなどの工場で自分の入れた材料が使われているのを見た時も感慨深かったです」

――管理職へ。

「20年7月、棒線営業部で参事となりました。業務内容は変わらずでしたが、コロナ禍で新しい働き方へ大きくシフトした転換期。ほどなくして産休・育休に入りました」

――育休を経験。

「同年10月から産休に入り長男を出産。育休を経て21年12月に棒線営業部で復帰し、本格的に管理職と向き合うようになりましたね。フルタイムで戻りましたが、フレックス制度も利用し乗り切りました。テレワーク中心の働き方が定着していて、海外のお客さまへの対応はパソコンとスマホがあればどこでも可能なので、スムーズに復職できたかなと」

――家庭と仕事の両立について。

「出産後、より一層仕事の効率化を考えるようになりました。限られた時間でいかに高い成果を出すか常に試行錯誤し、繁忙期は子供が寝ている早朝や夜に仕事をすることも。主人は仕事に理解があり、出張も快く行かせてくれます。とはいえ主人もフルタイム勤務。外部との会議も多いし、家事もそんなに得意ではなくて(笑)。主人が数日間ワンオペで家事育児をするのは難しく、出張で数日不在にする際は静岡から母に来てもらい、主人と母の二人三脚体制で家事育児を任せて出張に行かせてもらっています。家事サポートも活用していますよ」

――働く女性が増加。

「女性を活用していこうと考えるなら性別や年齢、子供の有無に関係なく柔軟な働き方を認めていく必要があると思います。欧州の需要家を訪問した際、先方の男性管理職が保育園のお迎えのため午後3時半に退社していました。その分早く勤務していたそうですが、自然に周囲が受け入れていました。ごく一例ですが日本もこれくらいになればいいなと」

――管理職について。

「母数だけ増やすことは可能だと思います。管理職として中身も伴った上で持続可能な働き方ができるかはまた別ですよね。家庭と仕事を両立し、主体的に子育てや家事を行う管理職が増えたら個人的に安心感があります」

――業界への思いを。

「多様性と変化を受け入れてほしいです。この10―15年が過渡期だと実感していて。女性総合職がずいぶん増え、育休を取得する男性社員も少しずつ増えました。休日は家族と過ごしたい、業務時間外はプライベートの時間も大切にしたいという考えを周囲で男女問わず聞きます。どの企業にも社員の数だけ働き方がある。さまざまな価値観を認め合う環境になればいいなと」

――今後の目標は。

「第2子を出産し現在育休中です。以前より怒濤の日々になりそうですが万全の体制で職場復帰したいです。働く姿をいつか子供に見せたいし、主人と息子2人が空港に迎えにきてくれるのがひそかな夢です! 息子たちが大人になる頃には、生き生き働くお母さんが当たり前の世界になってほしい。その実績を作る一助となりたいです」

(芦田 彩)





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