2024年9月19日

神鋼商事の成長戦略/中期経営計画2026/(8)機械・溶接本部溶接ユニット長/竹林建範執行役員/省人化貢献商品を提案/エンジニアリング機能・保守強化

――2024年度も溶接材料・機器について厳しい市場環境が国内外で続いている。

「溶接材料の最大需要分野である建築鉄骨の23年度の需要量は前年から10%程度減少したが、24年度は前年度と同程度になるとみている。人手不足による工程遅延や主要案件の端境期が影響し、資材価格の高騰で施主が発注を控えていることもあり、春先以降、停滞感が続いている。われわれが期待するほどの伸びにはならないだろう。造船向けは造船メーカーが3年分の手持ち工事量を確保している。カーボンニュートラルの潮流からLNG燃料船や水素運搬船の内製化が進んでいることもあり、堅調に推移しているが、鋼材・資材価格の高騰や人手不足から建造ピッチが短期に上がることはなく、安定して推移するだろう。自動車向けは認証不正問題が影響し、下期の回復を期待するが、状況を注視していく。海外については中国で日系自動車がEVの販売競争で苦戦を強いられ、溶材の販売は前年比10%以上減る見込み。東南アジアはタイの自動車向けが大きなシェアを占めているが、ローン審査の厳格化で自動車販売が前年より減っており、耐える状況が続いている」

――24年度スタートの新中期経営計画での溶接ユニットの成長に向けた取り組みとは。

「中期計画の重点課題は先端技術、コストダウン、次世代のものづくりニーズに対応した商品の開発だ。労働人口の減少や働き方改革が続く中、限られた労働力で生産性を高めるための省人化が事業戦略のキーワードとなる。自社で開発する商品や新たに扱う新規商品を考えている。溶接機材のビジネスにおけるエンジニアリング機能も強化していく」

――省人化がポイントになるが、具体的にどのような取り組みを進めるのか。

「溶接ロボットは引き続き重要商品だが、人手不足を解消できる商品を新たに取り扱っていきたい。例えば、大規模な工場の設備機器類を遠隔監視するシステムは好評だ。人の目で行っていた現場での監視をセンサーとモニターで遠隔地で監視することで多くを効率化できる。薄板板金用のハンディーレーザーは技術が向上し、高出力で使いやすい商品が開発され、販売台数が増えている。ロボットについても安全柵のいらない協働ロボットを扱っていく。タイでは中古ロボットのニーズが高いが、必要となるロボットのメンテナンス事業を伸ばそうと考えている。溶接機やロボット単体の販売から、もう少し幅を広げて、既存商品以外のサービスで省人化に貢献していく。顧客の要望に応じて新規の商品を開発し、専門メーカーと連携して製品の開発にも力を入れていく。顧客のニーズを受けて商品を探すだけでなく、他の業界で使われている商品で顧客の困り事を解決できるものがあれば、積極的に取り入れて提案していきたい」

――強化するエンジニアリング機能とは。メンテナンス事業の強化にも力を入れる。

「まずは産業ロボットに関する電気制御など社員の教育を計画的に進める。顧客と『共通の言語』で話せるように技術や業界の専門知識を身につける必要がある。知識を持った社員を増やし、提案力を強化していく。商品を仕入れて販売するだけでなく、自動化の設備や各種ロボットを周辺設備と組み合わせて提案することが今まで以上に重要になってくる」

「海外では日系企業が多いタイで長年ロボットや溶接電源のメンテナンスを行っている。タイで培ったノウハウを東南アジアの周辺国に展開していきたい」

――国内市場は少子高齢化などで需要が中長期的に減少するとみざるを得ない。事業の成長に向けて売り上げの海外比率を高めていくことになるのでは。

「溶接ユニットの売上高の比率は現在国内7割、海外3割。国内の溶接材料の消費量は2000年代の年30万トン台から足元22万トン程度に減少し、将来はさらに減少する可能性が高い。市場の動向から将来的には成長が続く海外市場で事業を伸ばす必要があり、培ってきたノウハウで海外を攻めていきたい」

――全社の中期計画で連結経常利益、ROIC(投下資本利益率)の向上を目指している。溶接ユニットとして収益力を上げていく方策は。

「既存ビジネスの拡大、海外市場の開拓はもちろんだが、エンジニアリングサービスなど当社ならではの機能を磨いていく。メンテナンス事業や計器類の監視システム、アナログメーターのデジタルへの変換システム、熱センサーによるモニタリングで検査員を機器に置き換えるビジネスなどストック的な事業を伸ばし、収益を安定して確保できる体制を築いていく。中期計画での投資プロジェクトは国内外で複数の案件を検討している。海外企業のM&Aなど良い話があれば積極的に対応していきたい」

――子会社で溶接技術商社のエスシーウエルについて。22年に日本エア・リキードから溶接関連資機材の事業を譲受したが、その後の相乗効果発揮と今後の展望は。

「エスシーウエルのメイン商材は神戸製鋼所とパナソニックの溶接機器で、日本エア・リキードも同様の溶接機器を扱い、事業の親和性は高かった。販売する商品のブランドは昨年に全てエスシーウエルに統一しており、これから今まで以上に代理店が販売しやすい商品の提供を考えていきたい。エスシーウエルは広い販売ネットワークを持つが、速く効率的に届けるためにさまざまに工夫し、溶接材料のマーケットで主導的な役割をしていきたい」

(大島 まい)





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