愛知県内の鉄スクラップ事業者有志で構成する名古屋鉄源会、西三会、鉄友会、北部鉄源会が合同となり今月、中部鉄源協議会を発足した。国内製鋼メーカーも向け先対象となる新断バラの共同在庫入札という、既存の共同輸出入札と明確な差別化を図った新たな取り組みのため組織したもので、国際マーケットで指標のない、鉄スクラップの上級品種である「新断」のグローバルなベンチマーク化などを目指す。来月11日の第1回入札を控え、初代会長に就いた小澤広多会長(不二商事専務)に、設立に至る背景と展望を聞いた。
――中部鉄源協議会の組織化に至った背景は。
「元々私が名古屋鉄源会の会員として活動に参画してきた中で、なぜ中部地区だけ共同入札が行われていないのか疑問を持つようになっていた。約25年前には中部地区でもヘビースクラップによる共同輸出が一時的に行われた過去があり、往時の問題点を洗い出すに及び、ヘビースクラップの品質の不安定さや、保守的な風潮を打破できなかったことが要因だったと感じた。その一方、世代もスクラップのニーズも変わった今、新断バラであればかつての問題点の多くを解消しながら新たな指標として発信できるのでは、という着想を温めていた折、昨年度に私が名古屋鉄源会の会長に就くにあたり、会員の皆さまにヒアリングした。結果は良好なもので、名古屋鉄源会のバックアップを受け、愛知県内の各鉄源会に再三の説明の機会を設けてもらい、おおむねの合意を得たことで、協議会の発足による共同在庫入札の実施に至っている」
――共同在庫入札の特長は。
「他地区の共同入札との最大の違いは、国内製鋼メーカーも流通を通じ購入可能である点。新断という品種は決して輸出マーケットで販売先が幅広くないこと、数量において販路が限られやすい特性ゆえで、国内メーカーには原料確保のリスクヘッジとして活用を期待している。新断バラは基本的にコンテナグレードのサイズ、表面処理で均一性が高い品質を集荷する。電炉メーカーはもちろん、高炉メーカーにも手を上げてもらい、名古屋の新断のブランディングにつなげていきたい。これに伴い、入札形式は国内メーカーと会員企業に最大限配慮している点も特長だ。会員企業は全ての企業が参加するわけではない。長年メーカーと培った関係性など、それぞれの事情をおもんぱかっており自由意思を尊重した。岐阜、三重、浜松エリアでも趣旨に賛同してもらえる企業にはぜひ参画してほしい」
――国内メーカーも対象とすることで、落札後のハンドリングの幅が大きい。
「入札商社は二港積みも含め販売先を手当てできる。また一部を輸出、一部を国内メーカーという2本立ても問題ない。陸上、海上も自由で、商社にとっては非常に戦略性の高い商品になり得ると認識している。使用する名古屋港ではゴーダウンができないデメリットはあるが、メーカーヤードがあり、地場を中心にした国内メーカーへの直送や、一時的にストックヤードで保管し、メーカーの疑似的な外部ヤードとして機能を発揮するなど、さまざまなさばき方が考えられるのが魅力だ。また数量が大きくなるほど輸送コストの壁を越え、より遠方に販売できるため、スタートの3000トンから、将来的には5000トン、1万トンと拡大していきたい」
――来月には第1回の入札が行われる。
「ここまで来ることができたのも、各地区鉄源会、会員企業の協力あればこそ。また視察で『理解と結束』の理念に触れさせていただいた関東鉄源協同組合にも深く感謝している。1年を試用期間としており、当面は問題点の抽出などを行いつつ、先々には共同組合化も進めたい。当地区にはメーカー、業者との強い関係性があることは重々承知しており、メーカーへの供給量を減らす意図は全くない。あくまで現在、輸出されているスクラップの一部を持ち寄る格好だ。近年、新断はハイテン化などを受けた成分のバラつきがあるのは事実だが、製鋼メーカーにおける新断の歩留まりは最高で、自動車メーカーなど大手製造業が集積し、日本最大の新断発生地域である名古屋の新断は成分など、高いレベルで安定していると自負している。これまでアジアで新断の指標たるものはなかった。今回の共同在庫入札がその第一歩となるべく、会員間で結束して臨みたい」 (阿部 拓也)