2024年6月19日

鉄鋼業界で働く/女性管理職編/インタビュー/「誰かのために」が私の根幹

三菱製鋼の居内京子さんは2021年4月に人材開発グループ長に就き、従業員教育制度の拡充や採用業務に携わっている。人材開発の施策、働きやすい職場環境創出に向けた取り組みなどを聞いた。

――三菱製鋼に入社する前、面白い経歴を持っているとか。

「学生時代にバンドを組んでいたこともあり、音楽好きが高じてエンターテインメント企業に入社したものの、希望した部署に配属されず、芸能プロダクションに転職。芸能プロダクション退社後は韓国企業に籍を置いたり、留学をしたりして、自分の気持ちに正直に生きてきました。2006年に安定しているブランドイメージ"三菱"グループの三菱製鋼に入社し、ヒンジなどを手掛ける精密部品営業部に配属。2009年に結婚し、育休の取得後は総務人事部に復帰して、16年に広報・IR部、18年に女性として4人目のマネージャーになり、21年4月に新設された人材開発グループのグループ長に就きました。社内の雰囲気は良く、社内制度も整備されており、年齢、性別を問わず仕事を任せてもらえる働きやすい職場環境でした。振り返れば徐々に業務の幅が広がったことで、新しいことを学ぶ必要はあるものの、新しいことにチャレンジできる環境によって、モチベーションが高まり、仕事にやりがいを見出すことができたと思っています」

――人材開発グループの機能は。

「私を含めて、専任4人で構成しています。人材開発施策などの教育体系を整備しながら、従業員教育を行ってきました。23年以降は採用業務も加わり、採用から教育までの一貫体制を整えています。人材開発業務については階層別研修を導入し、新入社員だけでなく、管理職対象のプログラムも組み入れました。さまざまなキャリアステージに対応できるよう研修を充実させています。またグループ会社の三菱長崎機工を含めた業務改善発表会を定期的に実施するなど、研修の定着化を図っています。採用業務は人事機能拡充を担っており、採用活動から面接まで関わっています」

――3年間、グループをまとめてきた。

「グループ長就任後、他社の人事担当者とお会いし、お話しする機会を得て、参考にさせていただいたことが大きい。当社に足りなかった教育施策として、階層別研修の定着を目指してきました。当初は研修実施に対して『忙しい』などの反発を想定していましたが、積極的に受け入れてくれる従業員がほとんど。社内アンケートで『これまでの教育は長続きしなかった。継続的に実施してほしい』という声が多く、これまで教育を受けたいという欲求が満たされておらず、会社への不満につながっていたと実感しています。人材開発グループは会社と従業員の間に入る役割として、会社の思いを従業員に伝え、従業員の本音も聞くことができます。この機能は重要で強化する必要があります。また、自律型人材を輩出するような仕組みづくりに取り組んでいきたい。そのためには自己啓発を推奨し、学ぶ意欲を促し、学びやすい環境を整えていきます。人材開発グループ新設時、佐藤基行社長(現会長)からは『人材開発グループがきっかけになり、企業風土も変えてほしい』と指示がありました。これまで新入社員の教育には力を注いできましたが、それ以降の層に対してはあまり実施できていませんでした。社内の雰囲気を変える重要な要素になる『部下との関係構築強化』などの研修を繰り返し、風土を変える契機になればと考えています」

――居内さんにとって仕事のやりがいとは。

「他社の人事担当者とお話ししていた際、『私は人の役に立ちたいと強く思っている』との気付きを得ました。趣味の音楽でも自分が前に出るよりも裏方に回りたいと思っていました。目の前の従業員に何かをしてあげたいという思いが強く、やりがいという意味では『~のために』が私の根本であり、今の業務はやりがいにつながっています」

――ライフイベントについての考え方を。

「私が出産した時代も育休制度は整備されていましたが、育休から仕事に復帰し、時短勤務とする女性はまだいませんでした。周囲に迷惑をかけず、また通常の業務をこなせないというレッテルを貼られないよう努力していました。まずは定刻通りに出退勤し、与えられた業務をしっかりこなすことを意識して復帰したのを覚えています。その結果、徐々に信頼され、仕事を任せてもらうようになりました。今は時代が異なります。育休取得や時短勤務で最善のパフォーマンスを上げて結果を出すことも必要ですが、周囲のフォローが不可欠になるので、常に謙虚に感謝の気持ちを忘れないことが大事であると思っています。世の中の考え方も変わり、昔を思えばうらやましい限りですが、働きやすいやり方で活躍してもらえればと考えています」

――全社で女性活躍推進、ダイバーシティー経営に取り組んでいる。

「25年までに女性従業員を15%以上、女性管理職を10%以上に引き上げる目標を掲げています。これからは女性管理職・主任クラスを対象とする研修を始め、意識向上を図っていきたい。当社は男性比率が高く、女性社員の割合は13%超にとどまっています。男性が差別されていると感じないよう、男女問わず働きやすい職場環境、企業風土を目指していきたいです」(濱坂 浩司)



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