――勝川副社長を後任に選んだ理由から。
山口社長「勝川副社長は2015年に執行役員に就いて以降、本社部門の役員として財務経理や総務人事など本社部門のことを全て担当し、副社長として事業ポートフォリオ管理委員会の委員長を務めるなど会社経営に深く携わってきた。18年に社長に就任して以降、いろいろな経営幹部の一人として常に相談しながら多くのことを進めてきた。全社のことを知り尽くしている、(24年度から)新しい中期経営計画をスタートする。変革意識を十分持ち合わせており、さらなる収益力の向上や財務体質の改善、事業のポートフォリオの見直しを図る上で今までのようにいろいろなアイデアを出してくれると期待している」
――次期社長の話を受けた際の思いを。
勝川次期社長「驚きだったが、少し時間が経つにつれて、魅力ある企業グループとして、より高みを目指していくことをイメージしながら、やってやるぞという思いを強くしている」
――現中期経営計画でROIC(投下資本利益率)の指標を導入するなど勝川副社長のアイデアとはどのようなものだったのか。
山口「ROICは勝川副社長が部下とのアイデアで盛り込んだ。アイデアを出しながら財務部や経営企画部などチームビルディングして検討させ、実行させていくことに長けている。当社グループの事業の選択と集中においてもさまざまなアイデアを出し、実行面でもチームを率いて仕事を若い人に任せながら進めることに秀でている」
――成長戦略の一つである海外展開についての考えを。
勝川「カーボンニュートラル(CN)の潮流からいろいろなところでマーケットが新しくできており、大きなビジネスチャンスでもある。規制概念にとらわれず、カバーしていきたい。マーケットと当社の実力を見極めながら実績の上がる形で海外展開を進めていきたい」
――鉄鋼事業の規模についての考えを。
山口「当社の粗鋼規模は年600万トンと決して大きくはない。17年に加古川製鉄所に上工程を集約したことも含め規模は追わず、特徴ある製品に特化していく方向性を定めた。今後内需が減っていく中でこれからも決して規模は追わず、強みである特殊鋼やハイテン鋼で収益性を上げることを追求していくが生きる道と考えている。CNの上で直接還元鉄などの事業は優位性を持つ。鉄鋼事業の先行きについては足元でも大きな変化が起こっており、慎重に見極めていくが規模を追う考えはない」
勝川「特長ある製品をお客さまに提供することを事業のベースにしており、この路線は変わらない。お客さまのニーズに対応し、いかに特長ある製品をそろえていくかが勝負と思っている」
――山口社長就任後、グループはどのような力を身につけたのか。
山口「社長に就任し、信頼回復から信頼向上への道のりをどう築き上げるかが最大の使命と考えていた。品質ガバナンス体制の構築や品質マネジメントの徹底、品質管理プロセスの強化などを進め、横ぐしを通す全社的な横断的機能を作り、仕組みや組織などハード面を整え、相当程度機能するようになった。一方でコンプライアンスやガバナンスに対する意識の改革も進めなければならない。企業理念の新たな制定やマテリアリティなどソフト面を共有しようと考え、『仕事はコミュニケーションの積み重ね』と言い続け、コミュニケーションの活性化を図るために各事業所を訪問し、従業員の声を聞いてきた。コベルコグループの一体感、求心力は以前より増してきたと実感している」
――グループの一体運営をどう発展させていくか。
勝川「コベルコグループは有機的に結びついた企業体だ。要素技術や流通、商品化技術、事業所の運営など短い横ぐしや長い横ぐしを通して有機的に結び合っている。その中にコベルコらしさがあり、お客さまに製品やサービスを安心して使っていただけるグループでありたいと考えている」