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日本製鉄、米USスチール買収合意
日本製鉄が12月18日に米鉄鋼大手のUSスチールの買収決定を発表。買収額約2兆円で実現すればグループ粗鋼生産能力8600万トンと世界3位に浮上する。成長する北米の高級鋼市場を捉える足掛かりを築き、カーボンニュートラルの対策に向けたシナジー効果も狙う。JFEスチールがインド鉄鋼大手のJSWスチールと方向性電磁鋼板の製造販売会社設立に合意するなど高炉各社の海外戦略が大きく前進した。
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日鉄・呉地区とJFE・京浜地区上工程が休止
日本製鉄が瀬戸内製鉄所呉地区を9月末に閉鎖。JFEスチールは東日本製鉄所京浜地区の上工程を9月中旬に休止し、変動する需要に合わせて効率的で強靭な生産体制を構築した。一方で両社は需要が拡大する電磁鋼板の能力増強や海外投資を推進。神戸製鋼所含め日本高炉は構造改革によって国際競争力を高め、高収益を持続した。
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建設不振や中国減速で需要減、粗鋼生産は低水準
自動車生産は国際サプライチェーン混乱の解消で回復が進んだが、資材高や人手不足によって建設工事の見直しや時期ずれが生じるなど内需は振るわず。中国経済減速が産業機械や鋼材の輸出に影響。高炉・電炉・特殊鋼メーカーは減産の継続を余儀なくされ、2023年の全国粗鋼生産量は前年に続く9000万トン割れの見通し。
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高炉低・脱炭素対策進展、グリーン鋼材発売
高炉大手は水素還元製鉄技術開発、電炉投資など技術開発、プロセス転換を具体化している。各社グリーン鋼材を発売、標準化も提案し、官民で市場創出に取り組む。政府は製鉄の脱炭素技術開発前倒しへGI基金の予算を4500億円規模に増額。GX経済移行債を活用、設備投資支援、生産段階のコストなどの支援も具体化する。
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原料炭再び高騰、日本製鉄は原料炭権益に投資
原料炭のスポット価格は年初トン300ドルだった豪州炭が10月に360ドルを付けた。インドの堅調な需要と供給停滞などが主因。スポット取引の流動性が変動を増幅していると見てJFEスチールは資源大手と組んでスポット取引を拡大している。日本製鉄は加テック・リソーシズの権益に2000億円の投資を決めた。
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日鉄ステンレス大型投資、特殊鋼は高級鋼増強
特殊鋼・ステンレスメーカーは脱炭素社会実現などで高度化するニーズを捕捉するため、戦略投資を決めた。日鉄ステンレスは2026年度上期末の稼働で、光製鋼工場スラブ用連続鋳造設備をリフレッシュ。大同特殊鋼は高級鋼の増産を目的として、知多第2工場に真空アーク再溶解炉を2基新設し、24年度末までの稼働開始を目指す。
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資源高背景に電力価格高騰、電炉経営揺さぶる
世界的な資源価格高騰を背景に、電力各社が電気料金を値上げした。電力多消費産業の電炉メーカーはエネルギーコストが大幅に上昇し、収益悪化要因に。また、記録的酷暑が続いた本年は夏場に電力需給がひっ迫。一部の電力会社が節電要請を頻発し、電炉メーカーは操業休止を余儀なくされるなど、電力に電炉経営が揺さぶられた。
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薄板輸入急増、国内在庫減少も市況軟化続く
海外市況の下落による内外価格差の拡大を背景に東アジアからの薄板輸入が増加。10月の輸入実績は過去30年で最高水準となった。中国からの輸入が急増し、価格の安さに惹かれた需要家が購入する傾向が強まった。薄板3品在庫が漸減する中、輸入鋼材の市場シェアは上昇。入着価格の下落に伴う形で、国内市況も軟化局面が続いた。
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スクラップ不適正ヤード、行政・業界が対策
法令に反した事業運営を行うスクラップヤード「不適正ヤード」への対策を講じる動きが活発化し、関東を中心に複数の自治体が具体的な規制強化に動いた。日本鉄リサイクル工業会は「適正ヤード」化を推進するとともに、高炉メーカーや電炉メーカーは「不適正ヤード」から出荷される鉄スクラップを受け入れない方針を表明した。
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地方に大型流通拠点、日鉄が日鉄物産子会社化/阪和ダイサンが開設した太田スチールセンター
国内では大型の倉庫と加工機能を持つ流通業者の地方進出が相次いだ。小野建は同社最大級の鋼材加工・在庫拠点となる静岡センター(仮称)を設立する。アイ・テックは岩手県北上市内に北上工場を新設する。商社でも日本製鉄による日鉄物産子会社化など機能強化の動きが進んだ。阪和ダイサンは群馬県太田市に在庫・加工・物流を一体化した在庫能力3万トンの太田スチールセンターを4月に開業した。