――今年、TASSの理事長に就任した。
「7月に重責を担うことになった。皆さまの期待に沿えるように努めていきたい。現在はTASSの他に国立高雄科技大学で工学院副院長や教授を務めている。日本の東北大学で研究に従事したこともある。研究では、微生物から生み出すグリーン水素の研究などを手掛けてきた。カーボンニュートラルへの関心の高まりと共に環境関連の研究が注目を再び集めていると感じている」
――TASSの2代目理事長として今後の活動方針は。
「当会を設立された前理事長の賴樹鑫創会理事長は産業界の声をしっかりと聞き、多様な意見をまとめながら活動を進めてきた。私のバックグラウンドは大学にあるため、学識の立場から産業界に適切な知識を広げていきたい。そのためにも多くの会員企業を訪れ、CEに関する課題を相互に理解し、正しい情報が企業の皆さまに伝わるようにしていきたい。今後、CEがより社会にとって重要な位置を占めれば、一企業や業界だけでは継続できなくなってくる。TASSのような展示会の場を通じて互いに知り合い、技術協力など交流を深めていく必要がある。TASSとしても企業同士をつなげ、適切なCEの実現につなげていきたい」
――サーキューエコノミー(CE)の意義は。
「大学においても教育面で非常に重要な考え方になってきた。私自身も7―8年前から政府や企業と共に環境教育に力を入れ、CEやSDGsの知識をどのようにまとめて、広げるかを意識して向き合ってきた。高雄科技大学にもカーボン研究センターがあり、教師や学生がCEなどについて学べる場を設けている。それらを通じ、産業界にも環境知識の普及を図っている。今後は技術面などでの改善にも努めていきたい。感覚的な技術やノウハウをしっかりと知識に落とし込み、適切な技術活用につなげていくことが大切だ」
――今回の展示会の手応えは。
「今回で4年目になるが、過去3回の開催では、世界的な感染症拡大の影響を大きく受けていた。昨年は大きな成功を収めたが、本年は国際戦争など変化が激しい時代になったことを受け、これまで参加してくれた企業が不参加になるケースも見られた。だが、新たに参加してくれる顔ぶれもあり今後に期待が持てる。来年もCEに関連する企業を新たに招いていきたい」
――今回は水素エネルギーをテーマに取り入れた。
「水素エネルギーは活用と生産の2つの動きがあり、近年では活用に注目が集まってきている。台湾は日本や韓国と比較して生産の部分は問題ないが、活用では若干遅れている部分がある。それを受け今回、TASSでは水素エネルギーに関する企業の出展だけでなく、水素エネルギーに関連したフォーラムを開催した。産業界に水素エネルギーの生産や活用に関する適切な情報提供を行い、水素エネルギー普及の活性化につなげていきたい」
――台湾の水素エネルギーの今後については。
「水素エネルギーの生産には多量のパワーを必要とするが、今後は再生可能エネルギーの活用を進めていくことが求められる。太陽光や風力をベースに生み出した電力は保存がしにくいが、電力エネルギーを水素に転換することで保存や輸送がしやすくなるメリットがある。水素エネルギー化は非常に重要だと感じている」
――今後のTASSの展示会については。
「まずは今回の展示会の課題を把握し、整理する。それを元に来年以降の展示会の開催につなげていきたいと思う。特に会員メンバーへのサービスにはさらに力を入れていきたい」
――日本との連携については。
「日本と台湾の連携は非常に重要だ。だが、まだまだ相互連携は十分ではないと感じている。私自身の経験を通じて相互ネットワークの構築に貢献していきたい」
――高雄で展示会を行う意義は何か。
「高雄は日本の植民地時代、南方進出の中心拠点として発展を遂げてきた軍需産業の街だった。戦後は重工業の街として発展し、国際的な存在感を示してきたが、最近では半導体を始めとするIT産業も盛んになってきている。TASS2023が開催された高雄展覧館の周辺も過去は重工業地帯だったが、現在は美しい建物が立ち並ぶ爽やかな場所へと変化を遂げてきた。CEのイベントを開催する上でも、シンボリックな場所になっていると感じている」
(服部 友裕)