フジクラで光ファイバーのコーティング樹脂開発を手掛ける佐島由恵さん。入社当初から光ケーブル開発部に在籍し、過去には同社独自技術のSWRの開発や製造、課題解決にも取り組むなど、同社の成長・発展に寄与してきた人材の一人となる。「誰もやったことのないことに挑戦する」精神を大切に業務に励む佐島さんに、これまでの経歴や今後の目標を聞いた。
――大学時代の過ごし方を。
「物質生命化学を専攻してナノ微粒子の分散に関する研究をしていました。当時の研究室の先生がアカデミックな部分だけでなく社会にもつながる応用的な部分の話もしてくれ、自分の中で『これは面白い』と思ったのを覚えています。研究の成果が新たな価値づくりにつながる、こんなことにも応用できるなど、人々の生活の進歩につながる取り組みはやりがいを感じるとともに非常に魅力的でもありました」
――理系(化学系)を目指そうと考えた理由。
「化学の世界に興味を持ったきっかけは小学生の時の理科の実験でした。酸・アルカリ性で色が変わる紫キャベツの実験など、身の回りにある科学で説明できる事象を知るのが非常に楽しかった思い出があります。実現不可能と言われていた青いバラの話を聞いた時には憧れを抱いたり、ロマンを感じたりもしました。未知への期待や誰も達成したことのないことを追求したいといった思いが高まる中、中学生から大学生までは化学者になるのが夢でした」
――フジクラへの入社の決め手。
「化学系の会社を中心に就職活動を進める中、当時興味があった材料で引っかかった一つがフジクラでした。説明会で流れた動画で『技術のフジクラ』を大々的にアピールしていたことが今も印象に残っています。電線御三家と言われ唯一財閥系でない中で成果を残していたこと、技術力で勝負していくといった姿勢が『誰にもできないようなことができる』『未来や社会に貢献できる』といった自らの考えと重なったこと、動画に登場する社員が自信満々に輝いて見えたことなどを勘案して受けたところ、最終的に内定をいただいたといういきさつになります」
――これまでの業務内容について。
「光ケーブルシステム開発センター(現・光ケーブル開発部)に配属されて以来、主力のSWRの開発や製造、光ファイバーコーティングの樹脂の開発に携わってきました。入社当初、SWRは新製品として立ち上がったばかりだったこともあり、作業性や特性、製造性における課題も多く、命題を与えられては課題の解決に注力する日々を送っていました。説明できる理屈や原因が必ずあるとの思いで取り組む過程は、何となく化学で事象が説明できることと同じであるように感じましたね。樹脂の分野に携わるようになってからは徐々にファイバーコーティングの樹脂開発にシフトし、現在に至っています」
――印象に残っていること。
「SWR、WTCにおいて、開発の部分から新たな事業に成長していくまでの過程に関われたことです。これらの製品は今では世界的に認められ、競合他社も追従して同様の路線で製品開発を進めている状況にあります。入社して1―2年の自分が新たな価値を創出した中枢で開発業務に携われたことや成功事例を間近に見られたこと、当時開発部の部長だった岡田直樹社長に指導いただいたことは、材料開発や今後新たな事業を創出する際の参考になるなどの点で大きな経験になったと考えています」
――岡田社長が事業部長だった当時口にしていた言葉が印象深い。
「『どうせなら楽しんで』『わくわく感を持って』『イノベーション、モチベーション、コミュニケーション』ということを常におっしゃっていました。当時は『大事だな』くらいにしか思っていませんでしたが、入社前に自らも抱いていた『誰もやったことのないことをやりたい』といった思いと重なる部分があったり、自ら開発に携わるようになり年を経るに従ってその意味を実感するようになったり、改めて自分にとって必要なことだと思いました」
――今後の目標を。
「一製品にフォーカスした従来の開発スタイルから、次の製品の開発につながるような新たな事業の創出といった視点を持ちながらのものづくりができればと考えています。若手を巻き込みながらわくわく感や達成感とともにワイワイ楽しく、夢を持ってやっていけるような環境が理想ですね。10年後、20年後、フジクラという会社で誇りを持って働けるようにするには何をすべきかなど常に考えながら行動していきたいです」
――おうち時間を大切にしている。
「休日は取り寄せたおいしいものを食べながら配信動画を見たり、ストレッチやヨガをしたりするのが癒しになっています。新型コロナ禍が収束してからは大学や地元の友人との飲み会や、社員とお酒を飲みながらの野球観戦といった飲みにケーションも楽しんでいます」
(松田 元樹)
非鉄業界で活躍する女性をはじめとした多様な人材、未来を担う人材を、随時紹介していきます。