ステンレスコイルセンターで働く女性がいる。三井物産スチールグループのステンレスコイルセンター、MSSステンレスセンター(本社=群馬県太田市、小林正弘社長)は近年、営業や現場で働く女性が増えている。同社はかつて次世代を担う社員が不足していたが、人材採用強化や育児休暇制度充実などの働きやすい職場環境整備が実り、若手社員層は男女ともに厚くなってきた。同社初の総合職として営業に携わる本社営業部の田村愛莉瑳さんと2人目となった森咲子さんに話を聞いた。
――入社の経緯から。
田村さん「私は太田市の隣にある群馬県桐生市出身で、地元で就職活動をしていた時に当社を知りました。就活では当初、最終製品などの製造業への就職を希望していましたが、当社を訪問した際に、ステンレスはさまざまなところで使用され、特性に合わせた幅広い鋼種を持ち、無限の可能性のある素材であるところに面白みを感じ、縁あって2022年4月に新卒で入社しました」
森さん「私は長野県出身の中途入社です。前職は地元の中学校で国語の教師をしていたのですが、夫の転職で太田市に引っ越すことになりました。群馬に移ったことを機に、育児と仕事が両立できる職場、そして人やモノに関わる職がしたいと考え、転職活動をしていました。当社を訪問した際にステンレスを通して、いろんな業界をのぞくことができ、身近な金属であるステンレスに親しみが湧きました」
――業務内容について。田村さんと森さんは鋼板の販売のほか、機能商品開発課とともに加工品の販売を行っている。
田村さん「流通を担当する店売りとひも付きも担当します。当社が注力している加工品では、自らターゲット顧客を挙げ、一件ずつ訪問し資料の送付を取っています。加工品の受注獲得に向け頑張っていきたいです」
――入社して気づいたことやMSSステンレスセンターの印象は。
森さん「これまで意識はしていませんでしたが、ステンレスはスプーンやキッチン、自動車など目に見えるところだけでなくさまざまな所で使われています。営業としてお客さまへ訪問するようになってからますます興味が湧くようになりました。当社は時短勤務など安心して働ける環境を整備しており、小さなお子さんを持つ社員も多く、同じ境遇の方がいるのは心強いです」
――女性が鉄鋼業界で働くことについて。
田村さん「お客さまは私に対して一人の営業として接してくださいますが、『女性の営業は珍しい』との声を頂くことは多いですね。一方で『最近増えてきましたね』と受け止めてくださるお客さまもいます」
森さん「男性や女性、年齢に関係なく教壇に立つ教師と比べると、女性が少ないことに驚きました。この会社に入り、いろいろな方とお話をしていると、鉄鋼業界は男女で職種がある程度線引きされていた時代が長かったのでは、と感じました。ただ、周りの皆さんは、私たちが営業として働くことに理解を示しており、非常に安心しています」
――今後の目標は。
田村さん「お客さまに頼られるような存在になりたいです。ステンレスは用途によって鋼種が異なりますし、その鋼種は多岐にわたります。用途や鋼種、得意先との関係性にトラブル対応など、適切な判断ができるようにしていきたいです」
森さん「早く一人前になることです。これまでの人生で全く関わりのなかった場所で、営業としてその会社の顔になっています。日々勉強することは多いですが、知識を身に付け、営業として会社を支えていきたいです」(北村 康平)
鉄鋼業界で活躍する女性をはじめとした多様な人材、未来を担う人材を、随時紹介していきます。