2023年9月15日

鉄鋼業界で働く/女性マネージャー編/インタビュー(上)/私がやりたかった仕事!

日鉄物産タイで、鉄鋼の販売に奮闘する女性がいる。セールスマネージャーの横田薫さんだ。2013年に日鉄商事(現日鉄物産)へ入社し、海外営業を中心に担当。国内営業にも携わった。鉄鋼業界に興味を持ったきっかけや新人時代の苦労、やりがいなどを聞いた。

――入社までは。

「高校まではずっと陸上に打ち込んでいました。大学では好きだった英語や異文化を学びたいと、法政大学国際文化学部へ。2年生の時にカリフォルニア大学へ約半年間留学。さまざまな国の方と英語で交流することで価値観が広がり、『将来は海外と関わる仕事がしたい』と思うようになりました。就職活動は、海外と関わるチャンスが多そうな商社を見ていましたね」

――鉄に興味が。

「商社の中でも、途上国の発展に携われるような仕事ができたらと思っていまして。日鉄商事の会社説明会に参加した際、『鉄は産業の米、国の産業・経済の発展において必要なものだ』という話を聞きました。私の母はタイ人で、その時ふと小さい頃に見たタイを思い出したんです。当時はまだまだ発展途上の中でも、ガタガタだった道路がきれいに整備されていったり、多くの日本車が走るようになったり――。『私がやりたいのはこれだ!』と具体的なイメージが湧きましたね」

――新卒で入社。

「棒線特殊鋼チタン部に配属されました。入社当時から女性総合職の採用を積極的に行っていたようですが、初配属から営業に入るケースは珍しかったと思います。私は営業を志していたのでうれしかったです」

――女性1人だった。

「部に女性総合職の先輩はいましたが、入社時から総合職という女性はいなかったです。配属された課で女性総合職は私だけでしたが、上司も先輩も対等に接してくれました。途中で育休から復帰した先輩が戻った時には、子育てをしながら仕事を続けられるイメージを持つことができましたね」

――業務内容を。

「主に海外営業を担当していました。向け先はアジア中心で、中国、韓国、東南アジア全域、中東などさまざま。中東、北米や欧州も一部担当していました。ほぼ全世界ですね(笑)。伸線や鍛造などの加工を経た二次・三次製品の販売がメイン。ボルトや溶接材料などを、ゼネコンやファブリケーター、重工業、造船などあらゆる業界に向けて輸出していました。仕事を学ぶために、国内営業も経験させていただきました」

――良かったことを。

「バングラデシュのODA案件で橋梁向けに高力ボルトを輸出したことです。日本の技術と品質が詰まった製品を途上国に届ける、とてもやりがいのある仕事でした。現場で実際の橋を見た時に、『これが私がやりたかった仕事だ!』と心にジーンと来るものがありました」

――国内営業は。

「国内では、棒鋼の店売りで浦安鉄鋼団地のお客さまを担当していました。特に特殊鋼は専門的な知識が必要です。初めは知識がなくて話が分かりませんでしたね。周囲の方々が話す内容を理解できるようになりたくて、外部の説明会などに参加したり、資格取得にチャレンジしてみたり。難しいけれど奥深くて面白い商材だな、と感じましたね」

――女性は。

「多くの方が集まる業界団体のセミナーや催し、取引先での大きな会議では、どこに行っても女性が全然いなかったですね。男性社会とは思っていましたが、想像以上でした。それでも女性の私は覚えてもらいやすいので、自分から積極的にあいさつするようにしていましたね。皆さん温かく受け入れてくださる方ばかりで、女性1人でも不安はありませんでした」

――交流を深めた。

「訪問で近況や販売・在庫状況を聞くのはもちろんですが、『最近楽しいことはありますか?』と話す中、担当していたお客さまが、鉄鋼団地のゆ~ゆ~カーニバルというイベントでたこ焼きの出店を開くことになり、私も手伝うことに。朝から晩までたこ焼きを焼き続けました(笑)。浦安マラソンにも参加させていただき、お客さまと一緒に何かに取り組むことで溶け込めたように思います」

――大変なことは。

「強いて言えば交渉ですかね。価格や納期調整など、商社は板挟みになるので大変ですが、折り合いが難しい時こそ商社の力が求められると思います。お客さまの先にもお客さまがいらっしゃいますし、仕入れ先メーカーも大切な存在。どちらにも満足していただける対応ができればと思って取り組んでいました」

――三井物産グループの鉄鋼事業の一部譲受が行われた。

「たくさんの方が私たちの会社に来てくれました。入社時に比べて棒線営業部の人数も大幅に増加。またこの頃から、営業部門に新卒で入社してくる後輩の女性総合職が増えてきました」

(芦田 彩)



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