東京製鉄の織田桜子さんは2018年4月の入社で鋼板営業に約5年間従事し、23年2月に新設した企画物流部企画物流課に配属され、生産・出荷の進捗や納期の管理体制を強化するため、鋼材物流網拡充に取り組んでいる。「私の力でできる限り世界のCO2排出量を削減するため、当社製鋼材のシェア拡大を推進していきます」という織田さんに鉄鋼業界、東鉄での働きがい、考え方などを聞いた。
――これまでの経歴を。
「実家が岡山県の県境に位置する広島県福山市にあり、最も近い国立大学・岡山大学に進学しました。高校時代から地球環境保全や持続可能な社会の実現に貢献したいという思いがあったため、気象や水象など物理学的な観点から持続可能な未来を築くための知識を深めるため、環境理工学部で学びました。温暖化がダム貯水量に与える影響についての研究が卒業論文のテーマ。学生時代には語学を習得するとともに視野を広げるため、カナダに1年間留学し、多様な価値観を学びました」
――学んでいた気象や水象と鉄鋼業界との繋がりはそれほど強くないと思うが、東京製鉄とはどのように出合ったか。
「福山出身なので、JFEスチール西日本製鉄所福山地区は身近な存在でなじみがあったものの、大学では自然科学的な視点で環境問題を定量的に分析することに没頭していたため、鉄鋼業への関心はありませんでした。ただ、就職活動を始めるにあたっては対象分野を絞ることなく、地球環境問題を解決する観点で広く調べていった結果、電炉メーカーや東京製鉄の存在を知ることになりました。研究を続けるよりも産業界で活躍し、CO2排出量を削減することで社会にインパクトを与えたいと感じ、産業界の中でもCO2排出量が多い鉄鋼業界への就職を希望。鋼材1トン当たりの生産におけるCO2排出量の少ない電炉メーカー、その中でも環境に配慮した製品の提供を通じて持続可能な社会への貢献を実現している東京製鉄への就職を熱望するようになりました。当社は社員数が少なく、1人当たりのCO2排出削減効果が大きいことにも引かれましたね」
――面接の際と、入社した後の印象は。
「一次面接は浅井孝文・建材部長(現取締役監査等委員)と、酒井久敬・総務部長代理兼購買課長(現執行役員鋼板開発部長兼グリーンEV鋼板事業準備室長)が面接官で、お2人から社風や企業理念などをしっかり教えてもらいました(笑)。入社前の印象通り、独立系の国内電炉トップメーカーとして、迅速な意思決定と挑戦する姿勢を持っていると思います。社員数が少ないため、コンパクトな組織の中で核に近い位置で業務に従事することができますし、役職の付いていない私でも意見やアイデアを忌憚なく言える雰囲気があるのが魅力的。鋼板営業時代は前社長の西本利一・特別顧問と一緒にお客さまを訪問する機会もあり、移動時間で直接話を聞くことができ、貴重な経験をさせてもらっています」
――入社直後は本社の鋼板部鋼板課に配属された。
「鋼板課の営業はお客さまごとで担当が分かれており、厚板から、薄板類はめっきコイルまで、多様な鋼板品種を扱うことが求められました。他の電炉メーカーと比べて、製品ラインアップの幅広さは強みではありますが、各品種の特性や用途について知識を深める必要がありました。また、営業活動中に突然の納期遅れが発生し、お客さまにご迷惑をおかけする状況が生じることもありました。商社から熱心なサポートをいただきながら問屋やコイルセンター、溶断会社やユーザーと緊密に連携しながら調整し、大変でした。夜遅くまで作業するなど多忙な毎日となりましたが、社内外を含めて多くの方々とコミュニケーションを取り、協力体制を築く重要性を学んだことは大きかったです」
――この納期遅れを解消するとともに、鋼板品種を中心に直需対応を拡大する方針の下で納期対応をより一層厳格化するため、2月に企画物流部を新設し、配属された。やりがいを感じているか。
「新年が明けて、1月上旬に異動を告げられました。驚くとともに、ありがたい、うれしいという気持ちが強かったです。まだまだ勉強中の身ですが、製品の供給チェーンを最適化するための戦略策定や効率化を推進しています。製品受注後の生産やデリバリーをいかに効率化し、適正に管理するかなどがテーマ。鋼板課での営業活動を通して、鋼板品種の納期最適化には人一倍の思いがあると自負していますので、それを実際の業務に反映される達成感を得ています」
(濱坂 浩司)
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