新型コロナウイルス禍に入社し、感染対策などでさまざまな障壁があった中、営業職として成長を続けている女性がいる。大同興業大阪支店(所在地=大阪市中央区、早川浩史支店長)鉄鋼営業本部鉄鋼第4部ステンレス第2チームの山上由真さんだ。就職活動や業務内容、ライフイベント、今後の目標などについて聞いた。
――入社までを。
「近畿大学国際学部で外国語や国際経済などを幅広く学んでいました。在学中には、米国オレゴン州の大学に8カ月間留学。英語教員に興味があったのですが、まずは会社で働きたいなと。社会に出て世の中を知りたいと思い就職を決めました」
――就職活動は。
「総合職で人と関わる仕事がしたいと思い、業種を問わず受けていました。鉄鋼業界について当時は知識も興味もなく、『鉄というものがあって、鉄を扱う会社があるから世の中が成り立っている。生活に欠かせないもの』とざっくり認識していましたね。大同興業は、説明会やインターンシップでお会いした方々が話しやすくて。勤務地も都会が多く安心だなと感じましたね。内定後は女性の少なさに不安があり、大阪支店の女性営業職の先輩とお会いする機会をいただきました。どんな働き方をしたいかなどを話すうち、こんな風に相談できる存在がいれば安心だと思い入社を決めました」
――コロナ禍に入社。
「2020年に入社しました。同期の総合職は計11人で、女性は私を含めて2人です。感染拡大が深刻な時期で、例年4月から3カ月間行われるグループ研修や入社式がなくなり、就職早々2カ月間、在宅勤務に。オンラインで社則や社会人マナーなどの基本知識について学んでいました。6月から同期と対面で集まっての研修が開始。うれしかったのを覚えています」
――大阪支店へ。
「鉄鋼営業本部鉄鋼第4部ステンレス第2チームに配属され、現在も同じ部署で働いています。ステンレス丸棒をメインで担当し、大阪のお客さまに販売していますね。オーナー企業が多く、社長や取締役に直接会うことがほとんど。『女性珍しいね』『女性営業職ってどれくらいいるの?』と聞かれることが多く、関西独特のノリがあります。私も関西出身なので、特に気になりませんでしたね。男性社会で女性がいない印象ももともと抱いていましたし。こんなに年下の新入社員が相手でもお話しし、気遣ってくださる方ばかり。ふと『最近元気?』と電話で一言聞いてくださる方もいて、人間味を感じます」
――貴重な経験に。
「若者が目上の方とこんなにお話する機会はないと思います。皆さん、普段は関わることのできない偉大な経営者の方々。苦しいこともあると思うのですが『命だけは取られない』など、どう乗り越え対応してきたかお聞きする機会があり、自分の悩みがちっぽけに感じました」
――ギャップは。
「飲み会が多いと思いましたね。コロナ禍での入社なので、先輩など他の営業職に比べると少ない方かもしれませんが……。あと、電話派の方が非常に多いです。『確認して』とかちょっとしたことなども。昔ながらの業界と聞くのはそういった部分なのかなと」
――うれしいことを。
「納期が詰まっていて大変だった時に、お客さまから『頑張ってくれていると思うよ』とお声がけいただく機会がありました。この方は業界の大ベテラン。長年働いている方からそのような言葉をいただけてうれしかったですね。また定期的にお客さまとゴルフへ行く機会があるのですが、ある日、ゴルフ場のコースで『ここで初めてドライバー飛ばしたんやで?』と言われて。私のゴルフデビューの瞬間を覚えていてくださっていたんです。振り返ると確かにここだったなと。こんなに私を見てくれているお客さまがいらっしゃる。いつもお世話になっている方々にもっと恩返しできるようになりたい! と感じました」
――大変なことを。
「規格違いのオーダーミスをしてしまい、入荷のタイミングで気付くというトラブルがありました。量が多く額もそれなりで、消えてしまいたくなりましたね……。仕入れ先と社内、ユーザーの3社で協議し、別の用途で使っていただけることに。以降ミスをなくすため、細心の注意を払うようになりました。慣れは怖いです。今もケアレスミスがあると反省する日々です」
――社内環境は。
「同じチームにいた女性の先輩が異動し、今春からチーム唯一の女性になりました。現在、大阪、名古屋、東京で1人ずつ、女性営業職が働いています。先輩のように、頼れて安心感のある営業職になりたいです」
――ライフプランについて。
「いつか結婚したら、可能な範囲で仕事と家庭を両立したいです。総合職は転勤があるので結婚のタイミングなどを考えると、早めにいろんな業務を覚えたいです。現在4年目なのですが、20代の間に経験を積んで、仕事に全力を注ぎたいです」
――女性に増えてほしいか。
「増えてほしいです。今後入ってくる女性のため、また業界が変わっていくためにも女性を採用していくことが必要だと思いますね。働き手が少ないと、入社試験を受ける女性も不安でしょうし。ただ会社側の視点だと、女性社員にどう接したらいいか難しいと感じる部分があるかもしれません。お互い慣れていくしかないのかなと」
――今後の目標を。
「今のチームで仕事をもっと覚え、大学時代に学んだ英語を生かした海外業務などを経験したいです。一緒に働いていた先輩が東京支店の貿易チームにいまして、多忙そうですが、輸出入に興味があるのでいつか背中を追いかけたいなという気持ちもあります」
(芦田 彩)
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