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2024.12.24
2023年6月5日
鉄鋼業界で働く/女性マネージャー編/インタビュー(上)/人間力で勝負する
ハンワ・ヨーロッパ・アムステルダム事務所(オランダ)でジェネラルマネージャーなどを務めるベルジョン久美子さん。商社で働く社員の人柄に惹かれ、阪和興業に女性総合職として入社した。新人時代の苦労ややりがい、業務内容などを聞いた。
――入社の経緯を。
「高校のころから英語を使った仕事に興味があり、大学で英文学を専攻しました。たまたま兄がワーキングホリデーに行き、見違えるようにたくましくなって帰ってきた姿を目の当たりにして、外資系企業など海外への憧れが増しましたね。就職活動当初は服飾関連のバイヤー、MRなどさまざまな業界を見ていました。商社の説明会に行った際は個性的な方が多いなという印象で、中でも阪和興業はずばぬけて多かったです。面接を受けるうちに、個性に加え、皆さんいきいきしているなとも。製品の魅力はもちろんですが、商社はいろいろな意味の“人間力"で勝負するので、そういった方々がおられる阪和興業に入りたいと思いました」
――新卒で入社。
「2006年に入社し、薄板国際部に配属。日系大手電機メーカー向けのひも付きを担当しました。初めは、何となく女性だから化成品や食品など生活に身近な商材を扱う部署に配属されるんだろうなと想像していまして。辞令を聞いたらまさかの薄板! とてつもなく驚きましたね。『薄板』ってどう読むの? うすばん? 何の薄板? という状態からのスタートでした。あまりなじみがなくイメージが沸きませんでしたが、新入社員研修で高炉メーカーへ見学に行き、真っ赤に溶けた鉄が設備の中を通り抜けるのを見て、『こんなダイナミックな仕事ができるなんて!』と興奮したことを覚えています」
――部署は女性1人。
「新入社員約80人の中で、女性総合職は私1人。配属先の薄板国際部は全部で約40人ほどいるのですが、部署内でも女性総合職は1人でした。指導員は当時、鉄鋼業界に女性が全然いないこともあって、どこまで打たれ強いのか、すぐに泣くんじゃないか、周囲に受け入れてもらえるだろうか――と心配していたそうです。実際、入社から5年間は1度も営業先で女性営業担当の方にお会いしたことがなかったですね。エンドユーザーへ薄板を納入するまでの間に数多くの下請け企業があるのですが、女性営業職が見積もりを持って来ることに抵抗を感じるお客さまがおられたほか、お客さまの工場にヘルメットを被って訪れると、『何しに来たんや』『何で女性が?』と驚かれたことも。予想できないことではなかったので、これが今の鉄鋼業界だと理解していましたね。今後の行動で自分が変われると思い、工場の方々と対等に接するためにもとにかく足しげく通う、行くのが嫌になった時こそアポを取ると心に決めていました」
――家族から反対も。
「特に母が私のことを心配していたようで、『すごくしんどそう、仕事を辞めて』と言われることがありました。帰宅するまで毎晩起きて待ってくれているんですよ。入社後の私は残業が多く、帰宅中の電車で寝てしまい、起きたら知らない駅に着いていたことも。母の時代は、男性と女性が対等に働ける時代じゃなかったこともあって、『あなたの時代は違うから、キャリアを築きたいなら頑張りなさい』と就活を応援してくれていました。娘がストレスにまみれになったのは自分のせいと責めていたのかもしれません。でもここで辞めたら、『最後まで仕事ができなかった』と言うレッテルを自分で自分に貼る気がして、辞めたくなかった。心配をかけないよう、実家通勤から一人暮らしに変更しました」
――その後は。
「当時はリモート会議もなく、会わないと話し合えない時代です。プライドを捨て、工場の方々に『鉄鋼業界のこと分からないのでいろいろ教えてください』『こんな技術あるんですね』と教えてもらうスタンスで接し続けました。いつしか皆さん丁寧に教えて下さるようになり、実績も増加。3―4年目から自分に自信が持てるようになりました。ちょうどそのころ空気清浄機能付き複合機の部品を担当することに。薄板はもちろん、アルミのパイプなど扱ったことのない商材が必要となり、お客さまの下請け工場に通って加工工程を勉強したり、中国に2週間行って商材を探しに走り回ったりしました。実際に販売された最終製品を見た時はとても感慨深く、うれしかったですね」
――ギャップは。
「部署で女性総合職第1号ということもあり、それなりに覚悟して入ったのである意味ギャップはなかったです(笑)。希望を持って入社し、雰囲気は感じていた通りだったので、マイナスイメージもなく。化粧をドロドロにして泣きながら帰社しても、『何言われたん?』と先輩方が温かく接してくれて。励ますために飲みに連れて行ってくれることも多々ありました」
――一般職の先輩からも多くを学んだ。
「一般職の女性社員の先輩方は、男女問わず『書類まだ出てへんで!』などと愛のあるムチで指導してくださいました。営業だけできてもだめだということ、サプライチェーンの組み方や手順の踏み方、書類の確認などさまざまなことを教えていただき、強くなれたと感じています。おかげで書類チェックが得意になりました(笑)。時には悩みも聞いてもらい、私が不在の際にはお客さまの用件を代わりに聞いて、メモに分かりやすくまとめてくださることも。お互いをリスペクトできる関係で、家族のように感じながら働いていました」(芦田 彩)
鉄鋼業界で活躍する女性をはじめとした多様な人材、未来を担う人材を、随時紹介していきます。
――入社の経緯を。
「高校のころから英語を使った仕事に興味があり、大学で英文学を専攻しました。たまたま兄がワーキングホリデーに行き、見違えるようにたくましくなって帰ってきた姿を目の当たりにして、外資系企業など海外への憧れが増しましたね。就職活動当初は服飾関連のバイヤー、MRなどさまざまな業界を見ていました。商社の説明会に行った際は個性的な方が多いなという印象で、中でも阪和興業はずばぬけて多かったです。面接を受けるうちに、個性に加え、皆さんいきいきしているなとも。製品の魅力はもちろんですが、商社はいろいろな意味の“人間力"で勝負するので、そういった方々がおられる阪和興業に入りたいと思いました」
――新卒で入社。
「2006年に入社し、薄板国際部に配属。日系大手電機メーカー向けのひも付きを担当しました。初めは、何となく女性だから化成品や食品など生活に身近な商材を扱う部署に配属されるんだろうなと想像していまして。辞令を聞いたらまさかの薄板! とてつもなく驚きましたね。『薄板』ってどう読むの? うすばん? 何の薄板? という状態からのスタートでした。あまりなじみがなくイメージが沸きませんでしたが、新入社員研修で高炉メーカーへ見学に行き、真っ赤に溶けた鉄が設備の中を通り抜けるのを見て、『こんなダイナミックな仕事ができるなんて!』と興奮したことを覚えています」
――部署は女性1人。
「新入社員約80人の中で、女性総合職は私1人。配属先の薄板国際部は全部で約40人ほどいるのですが、部署内でも女性総合職は1人でした。指導員は当時、鉄鋼業界に女性が全然いないこともあって、どこまで打たれ強いのか、すぐに泣くんじゃないか、周囲に受け入れてもらえるだろうか――と心配していたそうです。実際、入社から5年間は1度も営業先で女性営業担当の方にお会いしたことがなかったですね。エンドユーザーへ薄板を納入するまでの間に数多くの下請け企業があるのですが、女性営業職が見積もりを持って来ることに抵抗を感じるお客さまがおられたほか、お客さまの工場にヘルメットを被って訪れると、『何しに来たんや』『何で女性が?』と驚かれたことも。予想できないことではなかったので、これが今の鉄鋼業界だと理解していましたね。今後の行動で自分が変われると思い、工場の方々と対等に接するためにもとにかく足しげく通う、行くのが嫌になった時こそアポを取ると心に決めていました」
――家族から反対も。
「特に母が私のことを心配していたようで、『すごくしんどそう、仕事を辞めて』と言われることがありました。帰宅するまで毎晩起きて待ってくれているんですよ。入社後の私は残業が多く、帰宅中の電車で寝てしまい、起きたら知らない駅に着いていたことも。母の時代は、男性と女性が対等に働ける時代じゃなかったこともあって、『あなたの時代は違うから、キャリアを築きたいなら頑張りなさい』と就活を応援してくれていました。娘がストレスにまみれになったのは自分のせいと責めていたのかもしれません。でもここで辞めたら、『最後まで仕事ができなかった』と言うレッテルを自分で自分に貼る気がして、辞めたくなかった。心配をかけないよう、実家通勤から一人暮らしに変更しました」
――その後は。
「当時はリモート会議もなく、会わないと話し合えない時代です。プライドを捨て、工場の方々に『鉄鋼業界のこと分からないのでいろいろ教えてください』『こんな技術あるんですね』と教えてもらうスタンスで接し続けました。いつしか皆さん丁寧に教えて下さるようになり、実績も増加。3―4年目から自分に自信が持てるようになりました。ちょうどそのころ空気清浄機能付き複合機の部品を担当することに。薄板はもちろん、アルミのパイプなど扱ったことのない商材が必要となり、お客さまの下請け工場に通って加工工程を勉強したり、中国に2週間行って商材を探しに走り回ったりしました。実際に販売された最終製品を見た時はとても感慨深く、うれしかったですね」
――ギャップは。
「部署で女性総合職第1号ということもあり、それなりに覚悟して入ったのである意味ギャップはなかったです(笑)。希望を持って入社し、雰囲気は感じていた通りだったので、マイナスイメージもなく。化粧をドロドロにして泣きながら帰社しても、『何言われたん?』と先輩方が温かく接してくれて。励ますために飲みに連れて行ってくれることも多々ありました」
――一般職の先輩からも多くを学んだ。
「一般職の女性社員の先輩方は、男女問わず『書類まだ出てへんで!』などと愛のあるムチで指導してくださいました。営業だけできてもだめだということ、サプライチェーンの組み方や手順の踏み方、書類の確認などさまざまなことを教えていただき、強くなれたと感じています。おかげで書類チェックが得意になりました(笑)。時には悩みも聞いてもらい、私が不在の際にはお客さまの用件を代わりに聞いて、メモに分かりやすくまとめてくださることも。お互いをリスペクトできる関係で、家族のように感じながら働いていました」(芦田 彩)
鉄鋼業界で活躍する女性をはじめとした多様な人材、未来を担う人材を、随時紹介していきます。
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