2023年3月9日
次期社長の横顔 伊藤忠丸紅鉄鋼 石谷誠氏 海外駐在20年超、繊細な熱血漢
国内薄板営業に始まり、米国のコイルセンター勤務を挟んで、01年の伊藤忠丸紅鉄鋼発足後は、本社経営企画部、米国現地法人、本社関連事業部、インドの合弁サービスセンター事業、本社事業総括部、米国現法、米国鋼管事業、本社管理部門と国内外を往復し、海外駐在は20年以上に及ぶ。
契約社会の米国、商魂逞しいインドでの経験を通じてグローバルスタンダードを体得。北米鋼管事業を管理・運営するマルベニ―イトウチュウ・チューブラーズ・アメリカ(MITI)社長時代は、大手鋼管問屋スーナーとCTAPの現地幹部を束ねて投資効果を引き出した。
スリムで高い身長、銀縁眼鏡などから「冷徹」「豪胆」な商社パーソンの印象が先行するが、実は「情熱的」「繊細」でコミュニケーションを重視する。19年にMITIを取材訪問した際は、記者をスーナーの広大な在庫ヤード、石油産業の歴史や技術も学べる「ヒューストン自然科学博物館」に案内し、シームレスパイプやシェールなどの情報を提供した上で、オフィスに招き、鋼管ビジネスについて熱く語ってくれた。
21年10月の「設立20周年特集」では、新組織の経営戦略・人総本部長として「国内は鋼材消費の伸びが期待しづらいなか、加工・物流・ファイナンスの基本機能にデジタル技術を上乗せした非価格競争力を強化していく。海外は鉄鋼需要、生産ともに伸びる。米国やインドで経験を積み重ねてきたが、成長市場において商社が果たす役割は大きい。新たに制定した企業理念『鉄を商う。未来を担う。』をしっかり共有し、実践していけば展望は拓ける」と語っていた。
21年度は連結純利益が過去最高の626億円だった。22年度は上期が502億円で最高益更新は確実だが、北米の建材、鋼管ビジネスへの依存度が高く、収益構造転換が課題。
企業理念のミッションに掲げる「鉄鋼流通のフロントランナーとして進化を続ける」ための緻密で大胆な経営手腕に期待がかかる。(谷)
▽石谷誠(いしたに・まこと)氏=84年東大法卒、丸紅入社。東大ボート部では「冬に戸田の艇庫から荒川を下り、江戸川の急流を上り、利根川を下って銚子まで4日間漕ぎぬいた」。座右の銘は「和顔愛語」で茶道も嗜む。ゴルフは個人レッスンで飛距離を追求し、アプローチを磨いている。家族は妻と一男一女。60年10月20日生まれ、香川県出身。
過去のインタビュー
スポンサーリンク