仮設機材レンタル大手の杉孝(SUGIKO)は2023年1月に創業70周年を迎えた。神奈川県川崎市で丸太販売会社・杉孝商店として産声を上げ、その後「販売」から「レンタルへ」と業態を変えながら、従業員も当初の4―5人から現在は800人を超える規模までに成長した。このほど、同社の杉山信夫社長と杉山亮副社長に70年の歩み、経営理念、今後の方向性などについて聞いた。
――これまでの歩みを振り返って。
社長「社長に就任して約35年が経つ。私の父が川崎で創業した会社だが、相当小さな規模でやっていた。私は大学生の時にアルバイトから入社し、もう50年以上が経過した。当初は家業として、地元のゼネコン向けに足場丸太の販売を主に行っていた。正社員と言われる方はほんの数人。社員は家族的な感じだった。70年間を総じていえば、順調にコツコツと前進してきたと言える。細かいデータで見れば1990年以降のバブル崩壊の時などは売上高が伸びなかったことはあったが、おかげさまで会社として存続の危機というものはなかった。常にお客さまの方を向き、クオリティー重視で何を求められているかを考えながら、真面目にやってきたからだと思う」
――時代の変遷とともに求められるものが変わってきた。
社長「それが何かを常に建築現場で感じることができた。先回りをして、サービス力なり、品質力を高めてきた。それは本社の調達部門にいても分からない。いち早く知るには現場に出向くこと。これが大事だと思ってやってきた」
――杉山副社長は当初、米国の企業に入社した。
副社長「SUGIKOに入社したのが07年。先輩方が大きくしてくれた会社を今後、どう成長させていくかをミッションとして、良いところを引き継ぎながら、時代に合わせて新しいものも取り入れていく。経営は掛け算と思っていて、デジタルにおけるハードとソフトを組み合わせて社会に貢献していきたい。具体的にはBIMなどを駆使して足場レンタルに関してのデジタル化を模索している」
――経営理念はユニークだ。
社長「『上質即利』を掲げている。SUGIKOの理念の根幹となるオリジナルの四字熟語で、この経営理念は社員に広く浸透している。上質なモノ・サービスを提供することで、お客さまに利益が生まれ、その一部を私たちに分けていただくことで、共存共栄できるという考え方だ。実践すべきこととして『顧客主義、革新指向、先取精神、向上心発揮、職場活性化』を挙げる。綱領としては『ケガ無く帰宅するのはみんなの最大の願い その為に我々は働く』ということだ」
――足元の業界景気はどうか。
社長「建設業界は全体として活況を呈している。都市部の大規模再開発は少なくとも3―4年は継続する。当社のレンタルサービスでは建設作業現場の効率化と安全性に重点をおいたサービスを提供し、現場のトータルコスト削減をサポートする。機材センターの在庫はもっと補充していかなければならない」
――SUGIKOの強みとは何か。
社長「お客さまから言われるのはハードの品質が良いということ。安全性が高く、仮設製品がきれいで、整備が行き届いていると言っていただく。きっかけは約40年前に遡る。足場材の整備不良は人身事故に繋がる。当時、当社が貸し出した木製の商品が大きな事故を起こした。以降、安全性、機材の品質に対しては妥協せず、管理面にはコストを掛けている。機材の安全評価は仮設工業会の基準よりも大幅に高く設定している」
――中長期に目指す売り上げ規模は。
社長「現状の売上高の規模は約300億円。将来的には400億円を目指している」
――新製品の開発も推し進めている。
副社長「21年7月に積木製作(本社=東京都墨田区、城戸太郎社長)と共同で、お客さまの安全管理業務の効率化を目的として屋内でも足場の安全点検訓練ができる『SUGIKO MR足場安全教育コンテンツ』を業界で初めて開発した。また17年からウェブで仮設機材のオーダーができる『COLA』(コーラ)を開発・運用している。注文だけでなく、車両の予約、見積依頼、現場残数の確認など、お客さまの要望に応える各種機能を備えたSUGIKO独自のウェブオーダーシステムとして、おかげさまで、昨年12月に登録者数1万8000人を超えた」
――今回、創業70周年を記念してホームページ上に特設サイトを立ち上げた。
副社長「等身大の当社を見ていただきたいという思いだ。結構、いろいろなことをやってきたが、お客さまに伝わり切れない部分があったようで、身の丈の当社を表現している」
社長「デジタル化は加速する。アナログも一部では残るかもしれないが、世の中のスピードは速い。当社としても乗り遅れないように、DXについては投資を増やし、安全面にも一層配慮し注力していきたい」(菅原 誠)