2022年12月29日

2022年鉄鋼十大ニュース

1、ロシア・ウクライナ紛争で資源・エネ価格高騰

 ロシアが2月にウクライナを侵攻、エネルギー価格高騰を招き、原料炭市況もトン600ドルを一時超えた。原料炭は高止まりしながらも200ドル台に落ち着く過程で、一般炭が原料炭を上回る高値を維持する異例の状態が続いた。ロシア依存度の高いニッケルやフェロクロム、フェロシリコンなどでも一時高騰が見られた。

2、中国・欧米減速、鉄鋼需要減で海外鋼材市況軟化

 ロシア・ウクライナ関連のエネルギー高で欧州景気が悪化、中国はゼロコロナ政策で経済が停滞した。世界鉄鋼協会の10月時点の見通しで22年の鋼材需要は前年比2.3%減と7年ぶりの減少に転じる。23年は1.0%増と21年水準には回復しない見通し。中国のゼロコロナ緩和など上振れ要因も出てきたが、長引くロシアの戦争など不透明だ。

3、長引く自動車減産、粗鋼減も鋼材在庫は高水準

 半導体・部品供給不足に伴う自動車の減産が続き、日本製鉄が改修した高炉の再稼働時期を遅らせるなど高炉各社が粗鋼生産を調整したが、市中の鋼材在庫は高水準で推移。中国経済の減速などでアジアの鋼材市況が軟化し鉄鋼輸出が減少したこともあり、前の年に急回復した全国粗鋼は9000万トン前後と2年ぶりに前年を下回る見通しだ。

4、脱炭素へGI基金、高炉の電炉・還元鉄活用進む

 グリーンイノベーション基金による水素還元製鉄などの技術開発計画が始動。共同開発を進める一方、高炉は独自の電炉活用策などを推進。日本製鉄は広畑で電炉による高級電磁鋼板生産を開始。JFEスチールは中東で還元鉄合弁生産の事業化調査、神戸製鋼所は化石燃料を使用しないスウェーデンの新興製鉄企業への出資を決めた。

5、高炉グリーン鋼材発売、鉄連もガイドライン整備

 高炉大手はCO2削減の裏付けのある形でカーボンニュートラル鋼材の販売に乗り出す。神戸製鋼所はコベナブル・スチールを発売、日産の量産車向けに供給。日本製鉄は来年度発売のNSカーボレックス・ニュートラルのブランドを公表。JFEスチールはグリーン鋼材の来年度発売を目指す。日本鉄鋼連盟はガイドラインを策定した。

6、高炉海外強化 日鉄が印、JFEが米で大型投資

 日本製鉄はインド合弁会社のAM/NSインディアの能力拡張と港湾・電力などインフラ資産含む約1兆円の投資を9月に発表。印東部で新製鉄所建設を計画し、タイの電炉買収を3月に実施した。JFEスチールは米出資先での建材向け鋼板の製造設備導入を12月に発表。11月には神戸製鋼所がタイの特殊鋼線材拠点を連結子会社化し、各社は成長市場の獲得に向かう。

7、電炉、主原料・副資材調達難と電力高に危機感

 ロシア・ウクライナ問題による資源価格の上昇や円安進行などに伴って、電気料金が大幅かつ急激に上昇し、普通鋼電炉メーカーの収益を圧迫している。

 内田裕之・普通鋼電炉工業会会長は10月の会見で「電力単価は下期に大幅に上昇し、電炉材のコストとしてトン1万円を超える。この対応が最大の課題」と危機感を示した。

8、鉄スクラップ価格、高騰一転し下期に軟化

 ロシアのウクライナ侵攻で資源価格が急騰し2月以降、世界的に鉄スクラップ価格は急速かつ大幅に上昇した。中国のゼロコロナ政策、アジアの鋼材需要低迷、ロシア産半製品の安価輸出などで5月以降は下落。日本は主要国向け輸出が停滞し、需給緩和で市況下落を招いた。ただ脱炭素の流れで、足元も5万円前後の高値で推移する。

9、商社の鉄鋼事業の収益が過去最高ペース

 鋼材価格の上昇や為替の円安基調を追い風に鉄鋼主力商社や商社の鉄鋼事業の多くが上半期に過去最高を記録した。とりわけ北米事業が好調だった伊藤忠丸紅鉄鋼やJFE商事、住友商事・金属事業部門は大幅な増益を実現。プライマリーメタル事業が伸びている阪和興業や鉄鋼・原料部門が堅調な神鋼商事など通期予想を上方修正し、最高益を予想する企業が相次いだ。

10、将来見据え、商社・流通再編が一段と加速

 日本製鉄が日鉄物産の連結子会社化の方針を12月に発表し、メーカー一貫での流通加工の強化策が大きく動き出した。阪和興業が田中鉄鋼販売のグループ化を決め、小野建は高知県中心に鉄鋼・土木建築資材を扱うヤマサを子会社化。特殊プレート製造販売最大手のF&Cホールディングスが同業や特殊鋼商社を傘下に収めるなど市場の変化に対応すべく、広い分野・地域で流通再編が進んだ。

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