英語と法律の知識を生かそうと、鉄鋼業界に足を踏み入れた女性がいる。塩ビライニング鋼管やバルブを製造販売する協成(本社=大阪市西区、冨川清社長)管理本部で法務・審査・環境部に所属する岡脇琴音さんだ。入社の経緯やこれまでの業務内容、女性が働くことについて感じること、今後の思いなどについて聞いた。
――入社までは。
「幼い頃から英会話を習っていて、外国語に関心がありました。漠然と英語に携わる仕事に就きたいと思い、外国語大学に進学。英語や英語圏の文化について学びました。ただ3年生の時に、英語に限らず幅広く勉強したいという気持ちが強くなりました。どの業界に行っても通用する知識を身に着けようと、法律を学び始め、外大ですがゼミも商法を選択。就職活動に役立つのではとも思っていましたね」
――就職活動は。
「英語も法律も生かせる、BtoBで貿易関連の仕事に絞って進めました。物の取引に関わりたくて。物流関連や貿易事務などさまざまな会社を受ける中で、協成に応募しました。人事・総務部の方が面接してくださったのですが、気を遣わずに話せるような感覚があり、第一印象が非常に良かったのを覚えています。海外営業部か法務・審査・環境部のどちらかに配属予定という形で、採用していただきました」
――入社後について。
「2019年の入社時から現在の部署に配属され、法務・審査業務を担当しています。契約書のチェックやコンプライアンス研修の企画など業務内容はさまざまですが、メインは中四国・九州地区の審査業務ですね。営業の方が取引先と契約する上で見積書を作成するのですが、取引先ごとに与信を審査する必要があります。私たちが取引先の決算内容や企業概要などを調べて総合的に取引可能か判断します」
――大変なことを。
「与信案件の審査所見は部長が最終確認をするので判断を見誤ることはないのですが、『どうしてこの内容で通すんだ?』と聞かれた際に、根拠として説明できる材料が足りないことがありました。自分ではしっかり調査したつもりでも、実際は浅かったんです。もっと情報収集に力を入れ、深掘りしなければと思っています。また着眼点も広げる必要があるので場数を踏みたいですね」
――体調面も苦労が。
「現部署では部長を除いた社員が5人で、女性は私だけです。入社前は特に意識していなかったのですが、入社すると部署内に総合職の女性がいなかったので驚きました。仕事のやりとりに関しては問題ないのですが、健康管理の面で、体調不良の際なかなか言い出しづらい雰囲気があります。営業の方から電話で与信管理の相談があるので、いつでも対応できるようにするため、急に休むことには少し遠慮してしまいますね。自分で体調管理しながら今は何とかなっていますが、女性社員が増えたら比較的伝えやすいのかなと思います」
――鉄に関わる実感は。
「営業の方々に比べると直接触れる機会はありませんが、与信などの事前相談でパイプの販売に注力しているのを見て、鉄鋼業界にいるのだなと実感しています。また工場見学に行った際は、長くて大きなパイプがかなり高く積まれていてびっくりしました。クレーンで運ばれる姿は、安全管理がしっかりなされているものの、危険と隣り合わせの業務だと感じましたね」
――業界に女性が増えてほしいか。
「増えてほしいです。従来よりは増えていると思いますが、さらに女性が増えることで新しい風が入り、柔軟な業界になるのではと考えています。男女が同じくらいの比率になれば、新しい発想なども生まれるのではと思います」
――業界にどう変わってほしいか。
「男性が多く、華やかというよりは泥くさいイメージを社会から持たれているように感じます。普通に生活しているとなかなか接することのない業界ですが、協成では遊園地などにも納入実績があります。多くの方が訪れる場所に鉄が使われることで、身近に感じていただけたりイメージが良くなったりしたらいいなと思います。ダイバーシティーが叫ばれる世の中、さまざまな視野を持つ人材を入れ、働き続けやすい制度づくりを続ければ、女性も働きやすくなると思いますね」
――今後の目標を。
「いろいろな相談に乗れる先輩になりたいです。先日、社内でティーチング研修がありました。自分に後輩ができた時のために、ペアワークで後輩に教える練習をする内容なのですが、的確に説明する難しさを実感しました。与信管理はつかみどころのない仕事で、疑問を形にするのも難しい部分があります。そんな環境だからこそ、困ったときなどに寄り添える先輩になりたいです。個人的には、いつか中国や台湾など海外も担当してみたいですね。得意じゃない分野や知らない知識をどんどん吸収したい性格なので、インターネット関連の業務も興味があります。多くの人に頼りにされる存在になりたいです」
(芦田 彩)
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