金属リサイクルの丸本鋼材(本社=広島市南区、丸本陽章社長)では、経営企画室の西尾輝理さんが、採用や社内研修など人材関連の業務に携わっている。入社前、ものづくりに関わる業務を多数経験し、同社に入社後、さらにその後の流れについて学んだという西尾さん。入社の経緯や業務内容、業界について思うこと、今後の目標などについて聞いた。
――入社の経緯を。
「入社前は自動車部品メーカーの生産管理、砥石メーカーの保全部門の事務、ガラスへのレーザー加工による彫刻作業など、何らかの形でものづくりに関わる仕事をしてきました。正直それまでは仕事に熱心になれない部分がありました。ある時、派遣会社の方から紹介されたのが丸本鋼材。製造業での勤務経験があったことから勧められたようです」
――鉄鋼業界へ飛び込んだきっかけは。
「正直、鉄スクラップに興味があったわけではないです。でも重機やダムなど大きなものを見るのが好きなので、後から考えると合っていたのかもしれませんね」
――入社後は。
「2012年に、最初は派遣社員として入社しました。当時はオフィスなどさまざまな設備が古く、『大丈夫かな⁉』と心配になったのを覚えています。また、鉄スクラップにこんなに価値があるとは知らず…。目で見て価値の分かりにくいものだなと思いました。事務からスタートし、17年に正社員へ。現在は何でも屋さんとして、社内のさまざまな業務を担当しています」
――驚いたことを。
「金属リサイクルと言うと、空き缶を集めるイメージがありました。自動車部品メーカー時代に、プレスで型抜きしたあとの鋼板はどうなっているんだろうと気になっていたんですが、丸本鋼材に来てその先のリサイクルの流れを知り、点と点がつながったような感覚になりましたね。世の中っていろいろな物事がつながっていますが、自分から気にしない限り、それに気付かないことって多いと思うんです。金属リサイクルの流れを知って自分の中で快感でした!」
――最近の業務は。
「直近ですと、6月1日から大学生のインターンシップが解禁したのに合わせて、春に24年卒の新卒採用イベントに参加しました。複数の企業が出展している中で、ブースに来てくれた学生に何か印象を残さないといけません。フレンドリーな会社であることをアピールしたい、つまらないスライドを見せるわけにはいかない……。そう思い、鉄スクラップの写真を見せて『これを100トン分売るといくらになるでしょう』とクイズを出したり、スライドにアニメーションを入れてボケを演出したりしました。ただ学生にはクイズが難しかったようです」
――今春からは社内研修を担当している。
「社長から『グループワークでスキルアップしてほしい』との発案を受け、私が形にしています。トラックの運転手と現場職、営業職など、普段なかなか会話が生まれるきっかけのない社員をグループにして研修を行っています。1グループにつき全4回で、講師を招きゲームのような研修から始めています。狙いは、彼らの交流を深めること。現場の方、営業の方、それぞれが相手に対して不満に思っているところ、直してほしいところなどあると思うんですよ。でも、業務上あまり話すきっかけがない。重機を操作している時は集中しているため他の作業を頼まれてもすぐに対応できないこと、無線の使い方、ちょっとした伝え方の工夫など、お互いを理解し尊重できる関係性になるよう試行錯誤しています」
――業界に女性が増えてほしいか。
「増えてほしいですね。丸本鋼材は、正社員だけで見ると営業と現場は男性しかいないです。男社会で男性ばかりだと、個人的に気遣いが足りないように感じます。女性がいると、少し丁寧な風潮が生まれるのではと。他の男性社員も同じようなコミュニケーションを心がけてもらえるようになるといいなと思いますね。金属の買い取り時の計量なんかは会社の窓口の1つでもあるので、電話も含め、元気で感じの良い対応ができるようになれば…。うちによく積み込みに来てくれる他社のトラック運転手に女性の方がいます。重量物は持てないなどできないこともありますが、いつも元気をくれる存在です」
――初の後輩社員が入ってきました。
「21年に、新卒で総合職の女性社員が2人入社しました。現在はさまざまな部署を経験してもらいながら、新卒採用イベントに同行してもらっています。3年前にブースに座っていた子がなぜ丸本鋼材に来たのか、彼女らの話を聞くことで学生が興味を持ってくれるといいですね。私は10年間ずっと後輩がおらず永遠の若手だったので(笑)、ちゃんと業務を教えられているか不安です。でも2人とも優秀なので、安心している部分もあります」
――業界にどう変わってほしいか。
「一定の年齢より上の方には、金属リサイクルに関して汚いというイメージが根強いです。実際、入社しようとして親御さんに反対されたという話も聞いたことがあります。金属リサイクルは二酸化炭素削減に貢献していますし、社会に必要な産業だという認識を広めていきたいです」
――今後の目標を。
「営業や現場で女性が活躍できる環境にしていきたいです。また、検品を行う障がい者の採用も今後積極的に関わりたいですね。新しいことに何でも挑戦できる会社だと知ってもらえるよう頑張りたいです」(芦田 彩)
鉄鋼業界で活躍する女性をはじめとした多様な人材、未来を担う人材を、随時紹介していきます。