2022年2月1日

鉄鋼業界で働く/グローバル人材編/インタビュー(下)/さらなる成長に意欲

輸入鋼材を主に扱う鉄鋼商社、大成興業(本社=大阪市中央区、北野登社長)で、中国出身の谷金(コク・キン)さんと台湾出身の廖柏森(リョウ・ハクシン)さんの2人が、本社営業部で日々業務を行っている。ともに2019年に入社。会社へ業務提案を行ったり、海外鉄鋼メーカーとの打ち合わせに参加したりするなど、意欲的に仕事に取り組んでいるようだ。入社前後のギャップや大変なこと、やりがいを感じる瞬間、今後の目標などを聞いた。

――入社して驚いたことは。

谷「鉄鋼の年間販売量が、想像していたよりも多かったです。入社前はコンテナで運ばれてくるのかなと思っていましたが、実際は大きな1つの船に3000―4000トン積まれてやってきます。大阪港で見学し、規模が大きいなと驚いたのを覚えていますね」

廖「鉄鋼業界に限ったことではありませんが、営業の外回りの方がゴルフに行く文化に驚きました。ゴルフは昔のものというイメージが強かったので、『今でもやってるの?!』と。台湾では、社長など経営陣が行く富裕層のスポーツという印象も強いですね」

――鉄の売り方にも驚いたとか。

廖「当初は大手企業ばかりとの取引を想像していたので、大手から町の鉄工所まで、さまざまな規模の顧客と取引をすることにもびっくりしました。大手との取引は想定していたものと変わりませんでしたが、町の鉄工所からは『すぐに持ってきて』『もう少し安くして』などといった依頼を受けます。鉄というよりも、まるで野菜を売る八百屋さんみたいだなと感じましたね。初めは戸惑いましたが、鉄工所の皆さま一人一人の性格なども分かるまでに打ち解け、それぞれに合わせた対応ができるようになってきたと思います」

――大変なことを。

谷「台風が来た時、船に海水が入ってしまい、鋼材の表面にさびができてしまいました。その間の保険の手続きやフォローがとても大変だったのを覚えています」

廖「天気に左右されますよね。台風が来ると、船も避難したり、瀬戸内海をう回したりしないといけないので入着が遅れます。夏だけでなく、冬も高波に影響されることがあります。船に関しては全て船長の判断なので、こちらではどうにもならないのが実情です…」

――新型コロナウイルス感染拡大以降も苦労があった。

廖「コロナ禍以降、短納期や『この日に入れないと生産ラインが止まってしまう』といった急ぎの注文が増えました。特に今年に入ってから納期対応に苦労しています。中国鋼鉄(CSC)で鉄を作って日本に入着するまで約1カ月かかるのですが、当時は市中に在庫がなく、CSCも輸出枠を減らしていて、わずかな枠の中で作ってもらっていました。海上運送が乱れることも多い中、お客さまの納期調整とあわせるのがとても大変でしたね」

――やりがいは。

谷「自分の提案が通った時ですね。入社1年目の時に、電子請求書にしてみてはと上司に声を掛けました。作業時間が短縮される上、費用削減にもつながります。ペーパーレス化が実現し、やりがいを感じましたね。また、海外との貿易決済は信用状取引で行っており、会社全体の納期が遅延しないようによく確認しながら作業しています。月末に予定通りに納期を終えられると、達成感でいっぱいになりますね」

廖「入社して半年ほど経ったころ、思っていた以上の業務量を任されるようになりました。最近になって、自分のペースでうまく全部処理できるようになってきましたね。CSC駐日本大阪代表処でエンジニアとの打ち合わせに参加する機会もあるのですが、エンジニア全員が日本語に堪能とは限りません。彼ら一人一人が話す中国語の中で、難しいニュアンスをうまく上司に通訳して説明できたとき、やりがいを感じますね」

――今後の目標を。

谷「もっと貿易に関する勉強をしたいです。20年に貿易実務検定C級に合格したので、次はA級を受けて、これからの仕事に生かしたいですね」

廖「今は上司に同行してお客さまのもとへ向かうことが多いのですが、営業職で入社したので、検品や立ち合いなど、今後は1人でできるようになりたいです。いずれは、国内のお客さまと日本語で商談も行いたいです」(芦田 彩)

スポンサーリンク


九州現地印刷を開始

九州地区につきましては、東京都内で「日刊産業新聞」を印刷して航空便で配送してまいりましたが、台風・豪雨などの自然災害や航空会社・空港などの事情による欠航が多発し、当日朝に配達できないケースが増えておりました。
 こうした中、「鉄鋼・非鉄業界の健全な発展に寄与する専門紙としての使命を果たす」(企業理念)ことを目的とし、株式会社西日本新聞プロダクツの協力を得て、12月2日付から現地印刷を開始いたしました。これまで九州地区の皆さまには大変ご迷惑をおかけしましたが、当日朝の配達が可能となりました。
 今後も「日刊産業新聞」「日刊産業新聞DIGITAL」「WEB産業新聞」によるタイムリーで有用な情報の発信、専門紙としての機能向上に努めてまいりますので、引き続きご愛顧いただけますよう、お願い申し上げます。
2024年12月 株式会社産業新聞社