1、LME 銅・錫が過去最高値
ロンドン金属取引所(LME)の銅現物相場が5月にトン1万724・5ドル(セツルメント)に達し10年3カ月ぶりに過去最高値を塗り替えた。新型コロナ感染拡大による供給懸念、コロナ禍からの需要回復、カーボンニュートラルを見据えた需要増加期待などが材料視された。LME商品は錫が11月に史上初めて4万ドルに達したほか、中国や欧州の電力問題などを背景にアルミや亜鉛などの高騰もあり、1年を通じて高値圏で推移した。
2、銅建値 連日改定で市中混乱
国内銅建値は10月19日、海外銅相場の暴騰を受け、トン14万円上げの134万円と最高値を大幅更新。しかし翌20日に9万円引き下げられ、極めて異例の連日改定となった。銅建値を指標とする伸銅品や電線では市中取引が凍結し、値決めができなくなるなどの混乱に陥った。銅建値に対する長年の信頼が大きく揺らぐ中ゼロ日改定だった。
3、アルミ圧延業界再編
低い成長性と収益性を背景に、1月に昭和電工、11月には三菱アルミニウムがアルミ圧延品事業とアルミ缶事業をそれぞれ米大手投資ファンドのアポロ・グローバル・マネジメントに売却すると発表した。アポロの売上規模はUACJ、日本軽金属に次ぐ国内第3位の圧延企業となる。昭和電工は6月にアルミ缶事業を昭和アルミニウム缶に承継。8月には圧延品事業を堺アルミに引き継いだ。三菱アルミニウムも来年3月末をめどに圧延品事業とアルミ缶事業を手掛けるユニバーサル製缶の株式を譲渡する。
4、非鉄製品値上げ相次ぐ
伸銅、電線、軽圧の値上げが相次いだ。原材料から燃料・輸送費も含めたさまざまなコストが上昇したためだ。伸銅、電線は銅建値が3月以降トン100万円台の過去最高値圏を維持したまま月間平均が上昇基調。塩化ビニル可塑剤など電線副資材も値上がりし製品価格への転嫁を迫られた。軽圧はアルミ地金の高騰に加え添加元素の中国産マグネや金属シリコンの急騰などもあり、メーカーから流通まで製品値上げを打ち出した。
5、JX金属 日立に新工場建設
JX金属が12月、創業の地である茨城県日立市に半導体用スパッタリングターゲットと圧延銅箔の新工場を総額300億円かけて建設すると発表した。次世代情報通信機器などでの需要拡大を見込み、既存工場のボトルネック工程を新工場で担う。スパッタリングターゲットは磯原工場や海外拠点でも180億円かけて生産能力を引き上げる。
6、銅・アルミスクラップ輸出最高
銅・アルミスクラップの輸出が急増した。最大の輸出先である中国が2020年11月にこれらの輸入に関するライセンス制度と数量制限を撤廃。銅スクラップは12月から急増し、3月には前年同月比倍増の5万8395トンと12年ぶりに単月過去最高を更新した。アルミスクラップは1―10月の累計でアルミ缶が前年同期並み、その他は44%上回っており、年間総輸出量が過去最高だった昨年を上回りそうな見通しだ。
7、アルミプレミアム6年ぶり200ドル超
アルミ新地金の対日プレミアム(割増金)は、6年ぶりにトン200ドルを超えた。北米や欧州でアルミ需要が急回復したことや、コンテナ不足により船積みが遅延するなど、需給ひっ迫を映した。
第1四半期は130ドルと、対前四半期から48%高だった。第2四半期が148―149ドル、第3四半期は185ドルに上昇し、第4四半期には220ドルを付けるなど節目を超えた。2022年のアルミは供給不足見通し。プレミアムは高値を維持しやすいとみられる。
8、アルミスクラップ乱高下
アルミスクラップは年始、二次合金メーカーの買値は新切れがキロ190円、機械鋳物が145円でスタートした。その後、ロンドン金属取引所(LME)アルミ相場の続伸を受け、3月から10月まで8カ月連続して上昇。10月後半には一度に30円切り上がる局面もあり、新切れは累計57%高の300円、機械鋳物は金属シリコン相場の高騰も加わり66%高の240円と、リーマン・ショック直前2008年以来の高値を付けた。
ただ、月をまたいで11月はシリコン需給の改善やアルミ相場の急落を受けて急反落し、30円の上昇を一気に打ち消し、直近は新切れがピークから12%安の265円、機械鋳物も10%安の215円に下落した。
9、循環経済や電池の業界団体設立
サステナブル社会に関連する業界団体が相次いで発足した。2月に循環経済型ビジネスの情報提供や政府への提言、各種標準化活動などを行う「循環経済協会」が、4月には電池における国際競争力強化やリサイクル体制構築、国際標準化などを審議する「電池サプライチェーン協議会」が立ち上がった。新金属協会も希土類などのリサイクル研究会の設立を発表。資源循環に向けて業界横断的な取り組みが進んでいる。
10、中国電力問題でマグネ・シリコン急騰
主要生産国の中国で電力制限を背景とした生産停止が生じると、シリコンやマグネシウムが暴騰した。6月下旬に標準品の553品がトン2040―2080ドルあたりだったシリコンは、9月に1万ドルを突破した。5月末にトン2850―2900ドルどころだったマグネも、9月に一時1万ドルを超えた。電力使用制限の緩和により生産が回復すると、シリコンとマグネの高騰は一服した。ただ、脱炭素が中国で続けば、再び価格が上昇するとみる関係者は少なくない。
番外編 ダイキン工業、銅使用量半減方針
ダイキン工業は8月、世界のエアコン生産での銅使用量を2024年度までに現在の9万トンから半減すると発表した。銅価高騰による原材料費の上昇を受けたもので、代替素材にはアルミを使う。まずは国内の生産ラインでの使用量を23年度までに減らす予定で、業務用エアコンの室外機に使われる熱交換器からアルミ化を進める方針。徐々に家庭用へと対象範囲を広げる考えだ。過去にもアルミなどへの素材代替を検討したものの、効果がないとして断念した経緯がある。しかし今回については「銅が例年にない価格を付ける今しかない」(同社幹部)と不退転の決意を示す。