――小神野さんは鹿島製造所初の現業系女性社員ですが、プレッシャーはありましたか。
小神野「製造現場で働く一人目の女性社員として、プレッシャーを感じていました。新入社員で仕事もうまくこなすことができず、『やはり女性社員は仕事ができない。採用しなければよかった』と思われてしまえば、菅谷さんをはじめ働きたいと願う女性が続くことができなくなります。ただ、徐々に仕事に慣れていくにつれて、そのプレッシャーが良い意味での責任感になってきました。頑張らなければいけないというネガティブな方向ではなく、責任感を持って仕事をするというポジティブな方向に感情が向かうようになり、仕事に対するモチベーションに変わっていきました」
――苦労した点は。
小神野「古い機械設備でやむを得ないのですが、男性の身長に合わせて設計されているので、機械メーカーはもう少し女性目線になってくれればうれしい。女性の意見も取り入れたらもっと働きやすい職場になると思います。安全靴のサイズも大きく、私は21・5センチですが、市販の安全靴はSでも22・5センチ。私が履く安全靴は特注になり、価格が高くなってしまうので、もっとバリエーションを増やしてほしいです」
菅谷「女性社員に限ったことではありませんが、専門用語が多く、覚えるのに苦労しました。また各工程の流れをつかむのに時間がかかりました。要望としては、インフラの整備を計画的に進めてもらいたいです。例えば今、小神野さんと一緒の更衣室を利用していますが、私の職場からは自転車で行き来しなければならず、もう少し近ければ便利だなと思うことはあります」
――働いてみて、自分自身変わったと思うところはありますか。
小神野「わがままと思われたくないため、意見を言うことを控えていました。しばらく経って、上司が『女性の意見を積極的に取り込みたい』と言っていただき、私の発言で女性が働きやすい環境になるようならと思い、積極的に発言するように変わることができました。また虫に強くなりました(笑)。製造所は緑が多く、虫が室内に入る時があります。最初は恐る恐る外に逃がしていましたが、今は以前よりも平気になりました(笑)」
菅谷「例えば協力会社のスタッフに指示して作業をお願いしますが、指示に誤りがあると操業トラブルにつながるため、責任の重さを感じます。入社2年目ですが、入社前よりも責任感は強くなりました。虫は苦手で、いまだに避けています(笑)」
――最後にこれからの目標を教えてください。
小神野「会社見学で衝撃を受けた製鋼工程で働きたい気持ちはあり、交替勤務も覚悟していましたが、品質保証部に配属されて良かったと思っています。人にもよりますが、女性は男性よりも力や体格が劣り、逆に繊細で細かい作業に向いています。男性と同じレベルまで力仕事を頑張るという感覚ではなく、分析作業を極め、上司を超えるスキルを身に付けるのが目標です」
菅谷「生産管理で臨機応変に対応し、ゆくゆくは一人で交替勤務に入れるよう、現場の即戦力を目指しています。先輩に比べて、持っている資格が少なく、資格を得ればできる作業が増えるので一所懸命に勉強したい。今の職場に直接関係がなかったとしても有機溶剤作業主任者や溶接関連資格を取得し、必要があれば活用できるようにしていきたいです」
(濱坂 浩司)
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