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2024.12.20
2021年10月14日
鉄鋼業界で働く/女性工場職編/インタビュー(上)/真摯な姿に周囲も変化/環境ビジネスに関わる
鉄スクラップ業界にも、現場で活躍する女性がいる。鉄スクラップ加工・販売の伊藤商店(本社=京都市南区、伊藤博永社長)で働くパート従業員、松田由紀子さんと中国出身の林子琪(リン・シキ)さんだ。向日工場(京都府向日市)へひっきりなしに訪れるリサイクル製品の買い取りや金属の選別作業などに日々対応している。作業中、常に息が合っていた2人に、入社のきっかけや仕事の魅力などを聞いた。
――入社の経緯を。
松田「作業員の求人募集を見たのがきっかけで2018年4月に入社しました。若い頃に解体業で働いていたこともあり、伊藤商店の本社にも客側の立場で出入りしたことがあったんです。身体を動かすのが大好きで、荷下ろしなどの経験もあり、水道設備など他にも男社会の職場で働いた経験がありました。最初に電話を掛けた時には『女性はいないし、男性でもしんどい職場だよ』と言われましたが、それでもやりたいと思い入りました」
林「私は留学生で、学業と両立しながらここで働いています。大学で環境経済を専攻し、以前からリサイクルに関係のある仕事をしたいと思っていました。大学3年生だった昨年10月、留学生向けの就活サイトで求人を探している時に伊藤商店を見つけ、メールを送りました。2カ月後にお返事をいただき、面接を経て内定が決まりました。来春から正社員として貿易部で働くことが決まっていますが、興味・関心を強く抱いていることや、真ちゅう(黄銅)や砲金など金属を見分ける技術を早く身に着けたくて、午後の授業の前にここで働いています。5カ月間は週3日でしたが、現在は貿易部でも少し仕事をしている関係で、工場勤務は週1日です」
――仕事内容は。
松田「買い取り希望でお越しになられたお客さまを誘導して、買い取れるものかどうかを手ばかりで量りながら見定めます。可能な場合は伝票を作成して買い取ったのち、仕分け作業を行います。砲金、真ちゅう、銅、アルミ、ステンレスなど使われている金属を識別し、高速カッターやケーブルカッターで切断。あらかじめ用意していたドラム缶などに入れて選別します」
――絶え間なく買い取り希望のお客さまが来られますね。
松田「各種工事で発生する非鉄金属スクラップはもちろん、仏具として使われていた燭台、仏花を飾る花立、給湯器など、さまざまなものが運ばれてきます。個人のお客さまが一般家庭の鍋や釜を集めて持って来られることもあります。鍋もステンレスやアルミが使われているので、リサイクルできるんですよ。産業用・自動車用バッテリー、タイヤのホイールも持ち込まれます」
林「留学で初めて来日し、今年から働き始めたので、金属に詳しくないのはもちろん、見たことのないものがたくさんあって何がなんだか分からないまま仕分け作業をしています(笑)。ある日、自宅のトイレを見ていた時にふと、工場で仕分けしたことのある部品があることに気付きました。解体・仕分けしているものは自分に無関係なものばかりだと思っていましたが、それ以降、身近に感じるようになりました」
――大変なことは。
松田「働き始めた当初、ヤード作業をしていて、お客さまから『何で女がいるんや』『女には無理やろ』『女やのになんでこんな仕事を』とさまざまな言葉を投げかけられました。男社会だし、男性に比べると力も弱いですが、負けたくない、認められたい…。そんな気持ちを胸に、真っすぐ仕事に取り組み続けました。いつしか、お客さまからの言葉が『まだ続いているやん』『よう頑張ってるなぁ』と言った温かいものに変わっていき、休み明けには『風邪引いたんか?』『旅行行ってたん?』と気にかけていただけるようにもなりました」
林「銅、ステンレス、真ちゅう、砲金などの識別がまだ身についておらず、間違えてしまいそうになることが多いです。特に真ちゅうと砲金は色が似ていて分かりにくいです。松田さんがいつも、自身の作業を行うと同時に私の作業も見てくださっていて、間違えて仕分けしそうになる度に『りんちゃん、これちゃうで!』と教えてくださいます」
――力仕事で大変そうに見えます。
林「私は1日4時間働いているのですが、3時間で限界が来ている気がします(笑)。仕事の後は大学の授業を受けるのですが、エナジードリンクを飲んでから行っていますね。帰宅してシャワーを浴びたら、疲れてすぐ寝てしまいます」
松田「最初は物を1つ下ろすだけでもきつかったです。トラックの荷台から磁石のついたクレーンで解体物を下ろしたあと、残りを手作業で下ろすこともあるのですが、自分でやろうと思っても持てないものもあります。みんなに助けてもらっているから今働けている部分がありますね。また工場内は目に見えるほどほこりが舞い、金属を高速カッターで解体し仕分けする際には粉じんが自分の身体に付着します。触ると肌が荒れてしまうので、マスクを二重で着用し、作業着とマスクの間の首の部分はタオルを巻くなどして気を付けています」(芦田 彩)
鉄鋼業界で活躍する女性をはじめとした多様な人材、未来を担う人材を、随時紹介していきます。
――入社の経緯を。
松田「作業員の求人募集を見たのがきっかけで2018年4月に入社しました。若い頃に解体業で働いていたこともあり、伊藤商店の本社にも客側の立場で出入りしたことがあったんです。身体を動かすのが大好きで、荷下ろしなどの経験もあり、水道設備など他にも男社会の職場で働いた経験がありました。最初に電話を掛けた時には『女性はいないし、男性でもしんどい職場だよ』と言われましたが、それでもやりたいと思い入りました」
林「私は留学生で、学業と両立しながらここで働いています。大学で環境経済を専攻し、以前からリサイクルに関係のある仕事をしたいと思っていました。大学3年生だった昨年10月、留学生向けの就活サイトで求人を探している時に伊藤商店を見つけ、メールを送りました。2カ月後にお返事をいただき、面接を経て内定が決まりました。来春から正社員として貿易部で働くことが決まっていますが、興味・関心を強く抱いていることや、真ちゅう(黄銅)や砲金など金属を見分ける技術を早く身に着けたくて、午後の授業の前にここで働いています。5カ月間は週3日でしたが、現在は貿易部でも少し仕事をしている関係で、工場勤務は週1日です」
――仕事内容は。
松田「買い取り希望でお越しになられたお客さまを誘導して、買い取れるものかどうかを手ばかりで量りながら見定めます。可能な場合は伝票を作成して買い取ったのち、仕分け作業を行います。砲金、真ちゅう、銅、アルミ、ステンレスなど使われている金属を識別し、高速カッターやケーブルカッターで切断。あらかじめ用意していたドラム缶などに入れて選別します」
――絶え間なく買い取り希望のお客さまが来られますね。
松田「各種工事で発生する非鉄金属スクラップはもちろん、仏具として使われていた燭台、仏花を飾る花立、給湯器など、さまざまなものが運ばれてきます。個人のお客さまが一般家庭の鍋や釜を集めて持って来られることもあります。鍋もステンレスやアルミが使われているので、リサイクルできるんですよ。産業用・自動車用バッテリー、タイヤのホイールも持ち込まれます」
林「留学で初めて来日し、今年から働き始めたので、金属に詳しくないのはもちろん、見たことのないものがたくさんあって何がなんだか分からないまま仕分け作業をしています(笑)。ある日、自宅のトイレを見ていた時にふと、工場で仕分けしたことのある部品があることに気付きました。解体・仕分けしているものは自分に無関係なものばかりだと思っていましたが、それ以降、身近に感じるようになりました」
――大変なことは。
松田「働き始めた当初、ヤード作業をしていて、お客さまから『何で女がいるんや』『女には無理やろ』『女やのになんでこんな仕事を』とさまざまな言葉を投げかけられました。男社会だし、男性に比べると力も弱いですが、負けたくない、認められたい…。そんな気持ちを胸に、真っすぐ仕事に取り組み続けました。いつしか、お客さまからの言葉が『まだ続いているやん』『よう頑張ってるなぁ』と言った温かいものに変わっていき、休み明けには『風邪引いたんか?』『旅行行ってたん?』と気にかけていただけるようにもなりました」
林「銅、ステンレス、真ちゅう、砲金などの識別がまだ身についておらず、間違えてしまいそうになることが多いです。特に真ちゅうと砲金は色が似ていて分かりにくいです。松田さんがいつも、自身の作業を行うと同時に私の作業も見てくださっていて、間違えて仕分けしそうになる度に『りんちゃん、これちゃうで!』と教えてくださいます」
――力仕事で大変そうに見えます。
林「私は1日4時間働いているのですが、3時間で限界が来ている気がします(笑)。仕事の後は大学の授業を受けるのですが、エナジードリンクを飲んでから行っていますね。帰宅してシャワーを浴びたら、疲れてすぐ寝てしまいます」
松田「最初は物を1つ下ろすだけでもきつかったです。トラックの荷台から磁石のついたクレーンで解体物を下ろしたあと、残りを手作業で下ろすこともあるのですが、自分でやろうと思っても持てないものもあります。みんなに助けてもらっているから今働けている部分がありますね。また工場内は目に見えるほどほこりが舞い、金属を高速カッターで解体し仕分けする際には粉じんが自分の身体に付着します。触ると肌が荒れてしまうので、マスクを二重で着用し、作業着とマスクの間の首の部分はタオルを巻くなどして気を付けています」(芦田 彩)
鉄鋼業界で活躍する女性をはじめとした多様な人材、未来を担う人材を、随時紹介していきます。
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